第4話「王都の華やかさと冷たい視線」
馬車に揺られること数日。テルーナはついに、アリシア王国の王都・アルビオンに到着した。
城壁に囲まれた街は、テルーナの故郷とは全く違う、圧倒的な賑わいに満ちていた。石畳の道には馬車が行き交い、色とりどりの屋台が軒を連ねる。人々は皆、活気に満ちて楽しそうに話している。テルーナは、その華やかさに目を奪われた。
「ようこそ、アルビオンへ。今日からここが、あなたの第二の故郷となります」
マリアはそう言ってテルーナを王城へと案内する。しかし、王城の門をくぐると、街の賑やかさとは打って変わって、冷たく、張り詰めた空気が漂っていた。
テルーナが城の廊下を歩くたびに、すれ違う騎士や貴族たちは、一様に彼女の銀髪と瞳に訝しげな視線を向けた。彼らの視線は、好奇心というよりも、警戒と侮蔑に満ちていた。テルーナは、村にいた頃と同じように、また孤独に苛まれる。
マリアはそんなテルーナの様子に気づくと、そっと声をかけた。 「ここでは、あなたのような才能を持つ者は珍しいのです。しかし、恐れる必要はありません。あなたの力は、やがて彼らにも認められるでしょう」
マリアの言葉に、テルーナは微かに希望を抱いた。 しかし、その日の夜、テルーナは自身の部屋で、ある書物を見つけた。 それは、アリシア王国の歴史が記された書物だった。テルーナは、自分の容姿がなぜ王都の人々に警戒されるのか、その理由を知るために、その書物を読み始めた。
書物には、アリシア王国が建国される以前、この地を支配していた異種族との戦争の歴史が綴られていた。異種族は、「銀の髪と赤い瞳」を持つ一族だったと記されている。
「異種族……。銀の髪と赤い瞳……」
テルーナは、書物から顔を上げた。 そこに記された「銀髪赤目の一族」の特徴は、テルーナ自身の容姿と完全に一致していた。
「まさか……私が、異種族の末裔?」
その事実に、テルーナは戦慄した。 自身の出生の秘密が、王国の歴史の闇と深く結びついている。 そして、自分が王都に招かれたのは、単に才能を評価されたからではなく、別の目的があるのではないかという疑念が、彼女の心に芽生え始めた。




