第21話「嵐の海戦」
マリアの船が追いついてきたことに、ジェイクは顔色を変えた。 「あの船は、王国の最新鋭の魔法船だ!速度が違う!」
テルーナとレオンハルトは、甲板に駆け出した。彼らの船とマリアの船との距離は、みるみるうちに縮まっていく。
「テルーナ!隠れていろ!」
レオンハルトはそう言って、テルーナを船倉へと押し込もうとしたが、テルーナは首を振った。 「ダメです!マリアの船は、私たちの紋様を感知する魔法を使っているかもしれません!」
テルーナはそう言うと、再び隠蔽の呪文を唱えた。彼女の周囲に淡い霧が発生し、二人の姿をぼかす。
「賢いな、テルーナ!」
ジェイクは船の舵を切り、マリアの船から距離を取ろうと試みる。しかし、マリアの船から、テルーナたちに向け、魔法の砲弾が放たれた。
「くそっ!」
レオンハルトは、飛んできた砲弾を剣で斬り裂こうとするが、砲弾は魔法の力で分裂し、テルーナたちの船に降り注いだ。
そのとき、テルーナの背中の紋様が強く光り、テルーナは無意識のうちに、防御の呪文を唱えていた。 彼女を中心に、透明な魔法の壁が展開され、降り注ぐ砲弾をすべて弾き返した。
「すごい…!」
レオンハルトはテルーナの力に驚き、ジェイクは目を見開いた。
「あの力は、古代魔法の『守護の壁』…!しかし、そんな強力な呪文、お前はまだ使いこなせるはずがない!」
マリアの声が、魔法船の甲板から響いてきた。マリアは、テルーナの力を利用しようと、さらに強い魔法を放つ。
テルーナは、必死に防御の呪文を唱え続けるが、その力は次第に弱まっていった。 「このままでは…!」
レオンハルトはテルーナを守るために剣を構えた。そのとき、ジェイクが叫んだ。 「テルーナ!紋様の力を、この船の帆に込めるんだ!」
テルーナはジェイクの言葉を信じ、紋様から放たれる光の力を、船の帆へと向かわせた。 テルーナの力が帆に伝わると、帆は銀色に輝き、風のない海を、信じられないほどの速度で進み始めた。
「馬鹿な…!古代魔法の『風の呪文』を、船に…!」
マリアは驚愕し、テルーナたちの船は、マリアの船を置き去りにし、嵐の海へと消えていった。




