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少女は、世界を救うか、滅ぼすか。  作者: 吉本アルファ
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第18話「賢者の追跡」

テルーナの胸のブローチが放つかすかな光は、次第にその輝きを強めていった。レオンハルトは警戒しながらも、冷静に周囲を見渡す。人々の喧騒に紛れて、誰がマリアの手の者なのか、簡単には見分けがつかなかった。


「テルーナ、落ち着いて。ブローチが強く光るまで、動くな」


レオンハルトの言葉に、テルーナは固唾を飲んでブローチを握りしめた。そのとき、酒場の扉が開き、一人の男が入ってきた。彼は王都の貴族のような華美な衣装を身につけ、鋭い眼光で酒場の中を見渡している。


「あの男だ」と、テルーナは直感した。彼の顔は見たことがないが、その威圧的な雰囲気に、マリアの手の者であることを感じたのだ。


男は、まっすぐにテルーナたちの席へと向かってくる。レオンハルトは素早くテルーナの手を握り、テーブルの下に身を潜めるように指示した。


「失礼、そこの君たち。このあたりで、銀髪の少女を見なかったか?」


男の声は、テルーナたちのすぐそばで響いた。テルーナは息をひそめ、ブローチを強く握りしめる。ブローチは、もはや強く、まばゆい光を放っていた。


レオンハルトは、男の問いに冷静に答えた。 「さあ?見ていませんが。最近、銀髪の異種族が王都から逃げ出したという噂は聞きましたがね」


「そうか。ならば、無駄足だったか」


男はそう言って、立ち去ろうとした。しかし、その瞬間、男の視線がテルーナの手からこぼれ落ちたブローチに留まった。


「そのブローチ…!それは、賢者マリアの魔道具ではないか?」


男はそう叫び、テルーナに手を伸ばした。レオンハルトは素早く立ち上がり、男の腕を掴んだ。


「貴様、何者だ!」


男はレオンハルトの腕を払い、懐から鋭い短剣を取り出した。 「賢者マリアの命により、裏切り者とその異種族を捕らえる。観念しろ!」


酒場にいた人々は、剣と魔法の応酬に悲鳴を上げ、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。テルーナは、レオンハルトと男が戦う中で、ブローチから放たれる強い光に、ある種の決意を固めていた。


「このままでは、レオンハルトさんが…!」


テルーナは、再び古代魔法の呪文を唱えた。それは、周囲の光を吸収し、相手の視界を奪う呪文だった。酒場の中が、一瞬にして闇に包まれた。


その隙に、テルーナとレオンハルトは、窓から飛び出し、港の方へと走り出した。

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