第11話「旅の始まり」
アリシア王国の王都を後にしたテルーナとレオンハルトは、人里離れた森の道を進んでいた。王城での激しい出来事が嘘のように、周囲は静けさに包まれている。
「本当に、この道でいいのでしょうか?」
テルーナは不安そうにレオンハルトに尋ねた。彼女の背中の紋様は、マリアの追跡を避けるため、魔法で隠している。レオンハルトは地図を広げ、テルーナに示しながら答えた。
「マリアは、私たちが紋様の力を使って、失われた古代の地へと向かうと知っているはずだ。この道は、王国の主要街道から外れ、追っ手の目を欺くためのものだ」
レオンハルトは、道なき道を躊躇なく進んでいく。彼は剣士としての能力だけでなく、深い森の知識も持っているようだった。テルーナは、そんな彼の背中を見つめ、少しずつ信頼を深めていく。
「あなたは、なぜ私を信じてくれたのですか?」
テルーナの問いに、レオンハルトは少し立ち止まり、振り返った。彼の赤色の瞳が、テルーナをまっすぐに見つめる。
「君の瞳に、俺と同じ光を見たからだ。故郷の真実を求める、純粋な光を。そして、君の背中の紋様が、俺の紋様と共鳴した。それが、嘘偽りない真実の証だ」
レオンハルトの言葉に、テルーナは胸の奥が温かくなるのを感じた。王都で誰からも受け入れられず、孤独に苛まれていたテルーナにとって、レオンハルトの言葉は大きな支えとなった。
二人が森を抜けると、目の前に広がるのは、雄大な山脈だった。その頂上は雲に覆われ、神秘的な雰囲気を醸し出している。
「あの山脈の向こうに、古代の地が隠されている。そこには、私たちの一族が残した、禁忌の力を封印するための手がかりが眠っているはずだ」
レオンハルトはそう言って、山脈のほうを指差した。 テルーナは、希望に満ちた目でその山脈を見つめた。
しかし、そのとき、二人の背後から矢が放たれた。
「待て!逃げるな、銀髪の異種族ども!」
王国の騎士団が、彼らを追ってきていた。その中には、テルーナが王都で見たことのある騎士も含まれていた。
テルーナとレオンハルトは、追っ手から逃れるため、再び森の奥へと走り出した。 二人の、真実を求める旅は、始まったばかりだった。