第10話「決意の共闘、そして新たな旅へ」
テルーナとレオンハルトの手が重なり、二つの紋様が放つ光は、研究室全体を包み込んだ。
「馬鹿な……!」
マリアは、自身の計画がテルーナとレオンハルトによって崩されようとしているのを目の当たりにし、激昂した。彼女は古代魔法の力を操り、二人に向け、無数の光の矢を放つ。しかし、光の矢は、紋様が放つ光の壁に阻まれ、テルーナとレオンハルトに届くことはなかった。
「マリア。あなたの語る歴史は、真実ではありません。世界を分裂させたのは、異種族ではなく、禁忌の力を利用しようとした、あなたたちアリシア王国の先祖だった」
レオンハルトは、光の壁の中で、マリアに真実を突きつけた。
「静まれ!世界は不安定だ!このままでは、闇に飲み込まれてしまう!私は、それを救おうとしているだけだ!」
マリアの叫びは、もはや狂気に満ちていた。彼女は、自らの正義を信じ込み、そのために多くの犠牲を払うことを厭わなかった。
しかし、テルーナはもう迷わなかった。彼女はレオンハルトと視線を交わし、強く頷いた。
「この力は、世界を救うためのものです。あなたの野望のために使わせません」
テルーナは、レオンハルトと共に、紋様から放たれる光の力を一つの塊にし、マリアに放った。その力は、マリアの身体を吹き飛ばすことはなかったが、彼女が身につけていた魔法の触媒を破壊した。
触媒を失ったマリアの力は、急速に弱まっていった。彼女は、虚ろな目でテルーナたちを見つめ、膝から崩れ落ちた。
「なぜ……。なぜ、あなたは私を信じなかったのですか……」
マリアの言葉に、テルーナは答えることができなかった。ただ、彼女が信じていたものが、歪んだ正義であったことを悟っていた。
夜が明け、王城に静寂が戻ってきた。 テルーナとレオンハルトは、手を取り合い、研究室を後にした。
「私たちは、これからどうすればいいのでしょうか?」
テルーナの問いに、レオンハルトは答えた。 「この王都で、真実を語っても誰も信じないだろう。私たちは、この紋様の力を完全に解放し、世界を元の姿に戻すための旅に出なければならない」
レオンハルトは、テルーナに背を向け、王都の夜明けを見つめた。 「真実の扉を開く旅は、これからが本番だ」
テルーナは、自分の背中に刻まれた光の紋様をそっと撫でた。それは、もう恐怖の対象ではなかった。 それは、彼女の運命、そして世界を救うための、希望の光だった。
こうして、テルーナとレオンハルトは、アリシア王国を離れ、失われた古代の地へと旅立つことになった。