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第8話 回想(リシュ目線)①

 今日の夜会も、俺の周りをたくさんの令嬢たちが取り囲んでいる。

モテない男たちが、羨ましそうに俺を見ている様子を観察するのも毎回の俺の楽しみでもある。


 しかし、今日は最悪な日だった……。


 フルール・ルグロ。

ルグロ伯爵家の伯爵令嬢という肩書きだけの女。

普通であれば、あんな女をダンスに誘ったりはしない。


 数日前、俺の屋敷にルグロ伯爵が訪れた。

伯爵はすごくご機嫌な様子で、父上としばらく歓談した後なぜか俺のところにやって来た。


「リシュくん。少しいいかね?」


「ルグロ様。私に何か御用でしょうか?」


「実は、娘のフルールに城から夜会の招待状が届いてね。それで……リシュくんにフルールのダンスの相手をして欲しいんだよ」


「私が……ですか?」


 (ルグロ伯爵の娘……? 微かにしか記憶はないが。俺が覚えていないということは俺のタイプの女ではないんだろうな)


「だめかな?」


「いえ。あの、失礼ですがなぜ私に?」


「娘が君のことをすごく気に入っているらしくてね。親バカかもしれんが娘の初めての夜会をいいものにしてあげたいんだ。まぁ、このことは娘には内緒なんだがね」


 (親バカすぎるだろ)


 俺は心の中で呆れもしたが、まぁこの俺と踊りたい女はたくさんいるし、その内の一人だろうという認識だった。


「リシュくんが引き受けてくれるというなら、今度アルベール公爵に君を紹介してもいい。先程君の父上から、君がアルベール公爵に会いたがっていると聞いてね」


「えっ……」


 (アルベール公爵に紹介してくれるだと?)


実際は、アルベール公爵の娘であるルイーズに会いたいとずっと思っていた。

身分も見た目も俺の好みの女なのだ。

なんとかして手に入れたかった。

これはすごいチャンスじゃないか。

気が乗らないにしても、ダンスを一回相手するだけだし、このチャンスを逃す手はない。

俺は、少し申し訳なさそうな態度を演じて答えた。


「わかりました。私ではフルール様の相手として役不足かもしれませんが……。そのお役目、引き受けさせていただきます」


***


 こうして、俺はあの女を今日ダンスに誘うために城の夜会に来たわけだが。

どこを探してもあの女はいなかった。

しばらく辺りを見回していると、料理が並べられているテーブルの辺りで何人かの人々が何かを見つめていた。

俺はそれが気になり、そこにいた貴族の男に事情を聞いた。

すると、その男は笑いながら俺に言った。


「ルグロ伯爵のところのフルール嬢の料理の食べっぷりがすごいんだ。夜会に何しに来たんだか」


 (は?)


 俺は、集まっている人々の隙間からその様子を覗いた。

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