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第1話 全員ぶん殴ってやる!

「またやん!また有能メンバーをパーティー追い出す勇者やん!まずなんでこいつが勇者やねん!誰がこんなヤツ勇者に選ぶねん!」


大阪の日本橋を歩きながら『小説家になっちゃえば』というサイトを見てブツブツ文句を言っている坊主頭の30歳。彼の名は『とどろき 鉄平てっぺい』。


乱立し続ける異世界ジャンルにうんざりしている最中なのである。


「こんなん俺が異世界行ったら異世界ジャンルにピリオド打ったんのにな!!」


そう鉄平が天に向かって叫ぶと同時に周りの景色がグニャリと歪みそして目の前が強く光る。

その眩しさに目を閉じ、何が起きてるか分からない怖さで地面にしゃがみ込んでしまう。


「なんや…なんなんや…。爆弾かなんか降ってきたんか…。」


しばらくした後、恐る恐る目を開けてみると周りは先程まで居た日本橋の街並みではなく、何もない真っ白な世界だった。


「勘弁してくれや…これまさかまさかの異世界転生する前の部屋ちゃうんか…。」


「そうじゃよ。」


「うわっ!!!」


突然背後から返事が返ってきたことに驚く鉄平。

後ろを振り返ると神々しいオーラに包まれた老人が立っていた。


「誰やねんお前!!」


「神様じゃよ。」


「嘘やろ…普通は女神様とか可愛い女子が出迎えてくれるんちゃうんか。ただのおじいちゃんやん…ハゲてもうてるし…。神様なら髪の毛ぐらいなんとかなるやろ。」


「わし、お前の事凄く嫌いじゃわい。」


「というか異世界転生云々ってなんやねん!やめろや!全く異世界になんて行きたくない!元の世界に帰してくれ!」


「おぬしが異世界にピリオドをー!とか言ってたんじゃろ。だからわしがここに連れてきてやったんじゃ。」


「ほー、じゃあまずちゃんと説明しろ。俺はそういうとこマジで細かいからな。なぁなぁでやっていこうとか考えるなよ。」


鉄平は腕を組んで顎を少し上げて上から目線でグイグイ攻める。


「おぬし本当に嫌な性格しとるのー…。説明しても良いが物理から数学から宇宙の法則からかなりややこしく話に絡んでくるがええのんか?」


「いや、やっぱいいわ。異世界系であーだこーだ細かい事気にしてたらあかんわな。でも俺は今すぐ帰るぞ!!大事な仕事もあんねん!!残念ながら定番の引きこもりニートとかじゃないねん!」


ドヤ顔の鉄平に神様は鋭いツッコミをいれる。


「おぬし、風俗の受付じゃろうが。」


「言うなや!クソが!」


「どうせおぬしが居ても居なくてもなんの影響も与えんのだからちょっとわしに付き合え。」


「付き合う?何にやねん。」


「ちょっとこれを見てみい。」


神様が空中に手をかざすと大きなテレビ画面のようなモノが現れた。

そこには見たことのない世界地図が映し出されている。


「これが今からおぬしを転移させる異世界の地図なんじゃが、おぬしが言っている通り異世界系主人公が飽和状態になっておる。このままではこの世を占める異世界の割合が増えすぎて宇宙が崩壊する恐れがある。これを防ぐためにおぬしにはあちらの世界に行き、異世界系主人公の心残りを無くして現実に強制送還させて欲しいのじゃ。」


ゴソゴソとズボンの上から股間を触りながら鉄平は話す。


「長々と説明してきたけどツッコミ所満載のあっさい設定やな。まずなんで心残りを無くしたら世界を救えんねん。」


「それはこれからおぬしに『異世界の主人公の心残りを無くせば相手を強制的に元の世界へと送還する』という能力を与えるからじゃ。」


「なんやねんその能力!死んで転生した奴はどないなんねん!?」


「成仏じゃな。」


「いや…かわいそー…。」


「仕方ないじゃろ。異世界なんてもんは元々存在せん。莫大な数の人間の想像で創造された世界なんじゃからな。夢から覚ますぐらいのノリでええんじゃ

。あと想像と創造で韻を踏んだわけじゃないからの!」


ゴソゴソとズボンの上から股間を触りながら鉄平は話す。


「ほな俺がそいつらの悩みとかを解決するってことやな。」


「おぬし、さっきから神の前でちんポジ気にしすぎじゃぞ。まぁそういう事じゃ。なんかおぬしと話しているとイライラするからもうあちらへ送るぞ。たぶん10人ぐらい強制送還すれば世界も安定するじゃろ!じゃあの!!」


「いや!!おい待て!!なんか俺にもチート能力くれや!!」


「いやじゃ、ではほいっと!!」


神様のかけ声と共に強く周りが輝く。鉄平の叫びは虚しく響き、神様の力で無理やり異世界へと飛ばされるのであった。



鉄平は周囲の激しい戦闘音や怒号で目を覚ました。

急いで身体を起こして周りを見ると、中世の騎士の格好をした兵士たちが数万規模の戦争しているど真ん中であった。


「あのハゲどこに送ってんねん!!普通はイージーな山の中とか野原からスタートするやろ!!死ぬて!!ほんまに死ぬて!!」


鉄平は騎馬に乗った騎士や歩兵たちの間をジタバタ逃げ回り、なんとか突破口を探そうとする。


「まずはどっちかの軍に参加するしかないやん!どっちや………どっちが正解なんや……どれが敵なんや………。」


鉄平が周りを観察していると少し先にヒョロヒョロのメガネをかけた兵士が立ち尽くしていた。


「お前が敵やろコラァァァァァ!!!」


と思いっきりそのメガネ兵士の顔面を殴る。

鉄平は弱そうな者にはとことん強いのだ。

しかし、鉄平の後ろから大声で叱責の声が飛んでくる。振り向くと馬に乗った豪華な鎧の騎士が鉄平にかなり怒っている。


「貴様ぁ!!!何故味方を殴る!!!」


「え?味方?」


鉄平は自分の着ている服が変わっていることに気付いた。よく見るとメガネの子も同じ服を着ている。

やばい…そう思った鉄平は、


「すいません!!このメガネが裏切ろうとしていたもので!!」


最低である。メガネ君が気絶しているのをいいことに全ての罪を被せようとしている。


「そうであったか!ではその者にトドメを刺せ!!」


「いや!あの!…メガネはもう死んでます!」


「それならさっさっと前線に来い!このままでは戦に負けてしまうぞ!」


そう言い残して騎馬兵は先へ颯爽と駆け抜けていった。

鉄平は額の汗を拭いながら、


「あぶねぇ…、ノリで殴っただけなのにメガネ君が処刑されるところだったぜ…。」


鉄平はメガネ君に近付き頬をペシペシと叩いて起こそうとする。


「おーーい、メガネ君起きろよー。」


「う〜ん、はっ!一体ぼくは!?何かハゲたゴブリンのようなやつに殴られた気が…。」


「もう1回どつくぞ。」


レンズに少しヒビが入ったメガネをしっかりとかけ直してメガネ君は鉄平に挨拶をする。


「助けていただきありがとうございます!私は第3騎士団所属の『クライン・ベルクリウス』です!」


「名前負けがすごいな。ほんで今聞いたのにもう忘れたもん。メガネ君でええやろ。」


「は…はぁ…、それで構わないです。失礼ですがあなたは?」


「轟 鉄平や。よろしくな。」


「鉄平さんですね!そういえばそういった変わった名前の勇者様が先日私たちの王国に訪れて、今この戦争でも力を貸してくださっているのです。確かニッポンという国からやってきたって…。もしかして勇者様のお付きの方ですか?」


その言葉を聞いて鉄平はメガネ君にグッと近づいて質問する。


「その話、もうちょい詳しく教えてーな。」


鉄平の大冒険が今始まる。

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