アクア編
rimuです。
この前章で分けれる機能をしって、分けていたのですが。
もし新しく更新されたと思わせてしまったのなら、申し訳ないです。
第7章の存在してはならぬ者ども
まで読んでくださった方は、ここからが続きになりますので、安心して読み進めてください。
さて、今回のお話は、龍をどうこうする話です。
サミーの目的については今回の話が長くなったので、次週投稿します。
「やめろー!!離せ―!!」
ギリギリギリギリ
骨がきしむ音。
天使は剣を突き刺そうとするも、硬い鱗に刃はかけてゆく。
やがて剣は折れ、拳で殴り続けるも抵抗は無意味。
ほどなくして天使は断末魔を上げる。
「っっっっっっ!!がああああ!!あああああああ!!!」
天使は、龍にゆっくり噛み殺される。
ラーファたちを取り囲んでいた天使の軍勢もまた、次々と殺されてゆく。
噛み砕かれるもの。押しつぶされるもの。切り裂かれるもの。
貫かれるもの。丸のみにされるもの。溶かされるもの。
軍勢は抵抗するもあっけなく殺られてゆく。
翼からちぎれた血混じりの羽が舞う。
ラーファとサミーはにらみ合う。
「撤退します。」
しばらくの沈黙の後、サミーは魂のみとなった軍勢を引き連れ天界へ撤退する。
天使の死体をむさぼりつくした龍やドラゴンは、ラーファ達を見ては唸る。
最後の獲物。
我先にと迫りくる巨体。
互いにぶつかっては、はね退け合い、殺し合うものまで現れるしまつ。
”ヘレンを一人残すことになってでも...”
ヘレンを生かすために、ラーファはルールを破り、目の前の龍達を殺めようとしていた。
二人の目の前に一匹の白い龍が降り立つ。
白龍は金色の眼で迫りくる龍達を睨みつける。
すると、皆が徐々に迫る足を止め初め、あたり一帯が龍の荒い鼻息だけが聞こえるようになった。
白い龍はゆっくりと振り返り、二人を睨みつける。
「我が名はパイロン...話をしよう。」
二人の頭に低い声が響く。
ラーファは困惑する。
獣と同じく対話などできるとは思えない怪物たち。
そんな怪獣が対話を自分から求めたのである。
ラーファは他の怪物たちを警戒しつつ、パイロンと会話を始める。
「私の名前はラーファ・クロプス。ラーファと呼んでください。
パイロンさん...あなたたちはどういった存在なの?」
パイロンはラーファの問いに首をかしげる。
「我らは人の創造物である。中には我のように現世に受肉したものもおるが、
ほとんどが魂のみ、または魂すらない創造物でしかなかったものだ。
種族で言うなら龍種と人々からは言われていた。」
荒い鼻息を上げていた龍達は徐々に落ち着き初め、風に揺られる草の音だけがするようになる。
「次はこちらの質問だ。そなたの背にあるその翼、天使と見受ける。
先の魂だけの天使もそうだが、3対の翼ということは、かなり高位の天使というところだろう。
しかし、われがしる天使とは違うようだが、ここは地球ではないのかな?」
ラーファはコクリとうなずく。
「ここはコンセプトという地球とは別の平行世界。
あなたたち龍種は、空間の歪みによって生み出されたか、
あるいはこちらの世界にやってきてしまった。
地球に戻る手段は残念ながら死して輪廻転生するしかありません。」
パイロンは辺りを見まわす。
「なるほど、われは知識を得ることを好む。
ゆえに地球のことはほとんど知りえておるが、通りでわれの知る天使とは異なるわけだ。」
ラーファの後ろでおびえていたヘレンが口を開く。
「ドラゴンに龍...竜もいる。」
ヘレンは立ち上がり、歩み出す。
ラーファの張ったバリアから抜け、ラーファの前へ。
パイロンの目の前で立ち止まっては、パイロンにゆっくりと触れる。
「ガザ様の書館で地球についての本をよく読んでた。けど、話せる龍がいるなんて知らなかった。」
ヘレンの曇った瞳が少し輝やく。
パイロンはヘレンに思念を送る。
「人のように声を発することはできないが、思念を送ることはできる。
異文化の龍やドラゴンに思念が通じたのは不幸中の幸いだったのぉ。
もし思念が通じなければ、今頃ここは血祭になっておったわい。」
幼子が聞く中、血祭などと言うパイロンをラーファは睨みつける。
ラーファの視線に気づいたパイロンは、少し後ろに引っ込む。
「おぉう...幼子がいる中物騒なことを言ってしまい申し訳ない。」
パイロンはそう謝罪すると、少し頭を下げる。
「さて、もう一つ質問じゃ。
そなたの放った霧の術のようなものは、我ら龍を閉じ込めるための物だろう。
わざわざ我らを閉じ込めずとも、山々を覆うほどの力があるのなら、
我らを抹消してしまえばよいものを。
パイロンは下げた頭を上げるなり、ラーファを睨みつける。
「そなた...これから我らをどうするつもりだ。」
二人は痺れるような緊迫感を肌に感じる。
「神の定めたルールのより、私は命を殺めることが出来ません。
殺めれば...私はこの子を一人残して魂ごと消滅してしまう。
あなた方を初めから殺さなかったのはそれが理由です。」
睨み続けるパイロンの視線から逃げることなく、ラーファは話し続ける。
「しかし、あなた達を野放しにすれば、人々に被害が及ぶ危険があった。
だからあなた達をこの山脈に閉じ込めた。
まさか、対話が出来るとは思いもしませんでしたけど。」
パイロンは瞳を閉じると、長い溜息を鼻から漏らすと、ピリついていた緊迫感が少し和らぐ。
「なるほど...そなたには不殺の縛りがあるわけか...。
それで、これから我らはこの霧の中で余生をすごすわけだが、
我らは人と違い巨体な故、暮らすには少々狭すぎる。このままでは縄張り争いが起きるが、
どう対処するつもりだ。今は皆止まっているが、そう長くはもたぬぞ。」
ラーファは考える。サミーによってマナが吸収できなくなったラーファは、
魂をマナに変換して力や魔法を使わなければならない。
総量にして200年分の魂の量をマナに変換できるが、有限であることに変わりはない。
「提案があります。」
そうして、パイロンに考えを伝えると、パイロンは大笑いする。
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いっぽうその頃、天界では魔界送りが行われようとていた。
ラーファの側近であるクロプス派のグラディオと天使の軍勢は、突然の襲撃を不服とし、
アニマ派と交戦し、ラーファ達が天界の門を通る時間稼ぎをていたのである。
そんな中、たとえ魔国に強制送還されると分かっていても、
ラーファ達を必ず逃がすと誓った天使たちは、アニマ派の天使の魂を破壊。
殺害したのである。
よってグラディオ含め、罪を犯したクロプス派の天使は烙印を押される。
烙印を押されたものは堕天使と呼ばれ、三大天使と違い、羽をもがれては魔国に強制送還される。
強制送還された堕天使は、魔国に近づく程に急速に魂が汚れ、じきに体が痛み始める。
痛みは徐々に強くなっては耐え切れなくなり、魔国につく頃には死に至る。
グラディオ達は、現世から撤退してきたサミー達に挟み撃ちにさ、あえなく捕縛される。
「私は認めない!!ラーファ様が神殺しを企てていたなど!!」
グラディオ達は魔国に送還するための台に乗せられる。
すると、台の魔法陣が起動し、半透明の手が次々と出てくる。
「でたらめだ!!...絶対に信じない!!...私は...必ずここへ戻ってくるぞ!!」
抵抗するグラディオ達を魔法陣から出た手が掴むと、翼を無慈悲にもいでは、腕を振り上げる。
「グゥァァァァァっ!!!!!!!!!」
魔法陣から出た腕が振り上げた先に大きな黄金の門が出現。
門が開かれると、その先は現世へとつながっていた。
翼をもがれ暴れるグラディオは、仰向けになりながらもサミーを睨みつける。
「あばいてやる!!...あばいて...そしてお前を私達と同じ魔国送りにしてやる!!!」
グラディオとその他の天使達は、門を通し、魔国へ向けて投げられる。
目を開けることが出来ないほどの勢いのまま魔国に急速に近づいて行く。
すると、魂が汚れてゆくと同時に、肌が黒く焼け初め、発火するものまで現れる。
じきに神経を直接、それも無数の針で刺されたかのような耐え難い痛みが全身のに響き、
あまりの痛さからショック死しするものが現れ始める。
やがて肉体が朽ちはて、魂すらマナに還元されゆく天使は、完全に消滅する。
しかし、グラディオは違った。
ラーファの側近であったグラディオの肉体は、ほかの天使よりも頑丈に作られていたため、
全身が発火しているものの、まだ肉体は消滅しない。
グラディオの魂は闇のマナに侵され、心は黒く濁りゆく。
グラディオにあるのはサミーへの復讐心と怒り。
そして、ラーファに対するあこがれのような執着心と独占欲。
グラディオは死に際にラーファに対する思いに気づく。
そんな思いがグラディオの自我を辛うじて保たせ、ショック死せずいられたのである。
どれほどの生き地獄を味わったか分からない。
体を動かすことはできず、それでも無理やり闇のマナを使って体を修復してゆく。
必ずサミーへの復讐を遂げると怒りに身を任せながら。
そんなグラディオの目の前に、いつの間にか一人の少女が立っていた。
耳したあたりのツインテールをした黒色混じりの紫色の髪をしている。
上下別の黒いレースがついたドレスを着ている。
少女はグラディオの前でしゃがむと、グラディオの頬にソッと手を当てる。
「あdzはf,p:のjerg:mbxか;ftあgsert」
グラディオは意識が途切れかけるなか、少女の言葉に小さくうなずくのだった。
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「ヌワァハァハァハァ!!我らを人の姿にするとな!?これまた奇妙なことを思いつくものだ。
しかし、中には龍とはくらべものにもならぬほど弱き人になんぞに、
なりとーない者もおるじゃろう。そやつらのことはどうするつもりじゃ。」
ラーファは、パイロンの問に間髪入れず答える。
「確かに、気に入らない者もいるでしょう。
そこでパイロン、あなたに協力してもらいたいのです。」
パイロンはほくそ笑む。
「ほう...それはどんなことかな?」
ラーファは続ける。
「あなたなら私と違い他の龍とも意思疎通ができる。
そこで人になりたくない者を選別し、人になっても構わない者のみを人にします。
もちろん、気が変わった時のために自由に人から龍へ戻れるようにはします。」
ヘレンはパイロンの頭に上ろうとしているが、ラーファとパイロンは気にせず話し続ける。
「なるほど、これでここで住むための問題は解決するわけだが、
次に、私たちはこの霧の檻に閉じ込められているわけだが、我々はいつ自由になれるのかな?」
ラーファはパイロンの2つ目の問いに少し考えながらも答える。
「たとえ人として生きることを多くの龍が選んでも、
一部の龍が人里で暴れてしまえば、それだけで人々はあなた達を危険視するでしょう。
そうなれば、あなた達龍種は今ある差別問題や、
奴隷制度問題の被害者になってしまうでしょう。」
ヘレンがパイロンの頭に登りきり、辺りを見渡している。
「ほう...しかし、龍の姿であれば、人なんぞ脅威にすらならぬと思うが。
それこそ、人との共存を望まない者や、人を従属させようとするものがいれば、
人類は悲惨な末路を辿ることになるとおもうのだが...そやつらの意思はどうする。」
「なので、私はあなたたち龍種に選択する権利と仕組みを作ろうと思います。」
ラーファの案は以下のようなものである。
一つ。結界を維持するために、半永久的に結界の維持が出来る場所を探す。
一つ。龍のも壊すことが難しい物を二つ用意し、魔法陣を刻み込んだアーティファクトを作る。
一つは外側から入れないようにする結界、
一つは内側から出れなくする結界を解除するための魔法陣である。
一つ。人龍和平派と人龍対立派の対立する代表を2名選出し、
人龍和平派には内側のアーティファクトを、
人龍対立派には外側のアーティファクトを持たせる。
パイロンははしゃぐヘレンに目を向ける。
「それでは対立する二つの派閥が争い合うのではないか?」
ラーファはまっすぐパイロンはをみる。
「たった今でさえ、人々は自由や平等のために戦争をしています。
互いが互いに思う正義のために争うのならそれは仕方がないことです。
もちろん、対話で終わることが出来るのならそれに越したことはありません。」
パイロンはラーファと同じくまっすぐ目を見つめ返す。
「もし、争いになって、人龍対立派が勝ったとき...そなたはどうするつもりだ。」
ラーファの中ではすでに答えが決まっている。
「この中にいる龍全てを派閥も関係なく、私と共に消滅してもらいます。
あくまで私は、今いる人々の為に動きますから。」
パイロンは少し不満げながらも納得する。
「なるほど...確かに、我らが消滅したとて、この世界の人間からすれば、
山に入れなくなった程度の被害で済むのなら、そなたからすれば安い話だな。」
パイロンはヘレンをのせたままゆっくりと上昇する。
「選択する時間はあるものの、共存を選ばねば最終的には全滅するわけだ。
強大な力を持つがゆえに頑固なものは多かろう。ならば争いは避けられぬというもの。
ならば、我は死なぬためにも人龍和平派につかなければな。」
パイロンはヘレンを乗せてゆっくり空を飛び回ると、ヘレンに降りるよう促す。
「さて、それでは早速、我を人の姿にしてもらおうかの。」
そうして、ラーファは力を使い、パイロンや人になってもよいと答えたものを次々と変えてゆく。
次に、結界の維持が出来る場所を中心に町を作り、こちらの言葉や文字を教える。
このとき、人龍対立派はラーファが脅しをかけたことによって争うことが出来ず、
ただただラーファの案が完遂する時を待つこととなる。
やがて時は立ち、魔法陣が刻まれた白剣と黒剣が出来上がる。
二つの剣はラーファの案通り、対立する双方の代表に渡され、ラーファの案は完遂する。
「これからは私は文字や算術などの教育のみを担当します。」
そう皆の前で宣言したラーファは、ヘレンと共に慎ましく暮らしたのである。
魔国軍がニール国の国境付近まで進行してくるまでは。
ここまで読み進んでいただき、ありがとうございございます。
アクア編というわりに全然アクア国に向かってないですね。
多分来週には回想が終わって話が進むので、来週まで待ってもらえるとありがたいです。