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積極性◎

 コンビニ帰りに歩いていたら偶然壁尻と出会ったので助けてあげただけです。


 そんな事を口にしたらふざけてんのか? と怒られそうで心配だ。幸い、モナカもちゃんと証言してくれたので、先生は一応納得してくれたようだが。


 ちなみに、なんで壁尻になっていたかというと、そこにいい感じの穴があったかららしい。


 てっきり琥珀は猫を追いかけていたら、みたいな理由を想像していた。

 この転校生、本格的にヤバい感じだ。


 ともかく不本意な嫌疑も晴れて、二人で廊下を歩いている。


 先生の誤解はともかく、クラスのみんなの誤解を解くのは難しそうだ。


 否定しようにも友達がいないので伝える相手がいない。琥珀はなにかと目立っているので、この手の噂は面白半分ですぐ広まってしまう。


 別にそれは今更だから気にしないが、今回は自分一人の事ではない。

 それが琥珀は心苦しかった。


 そうとも。今の内にこの子に、自分がどういう人間か説明してあげないと。


「……あの」

「琥珀君って彼女いるんですか?」


 ずいっとモナカがパーソナルスペースを侵略してくる。

 大きな胸が腕に触れて、琥珀はビクッとして距離を取った。

 モナカはその分距離を詰め、あっという間に壁際に追い詰められる。


「……あの、近いんだけど」

「琥珀君って彼女いるんですか?」


 まったく同じ調子で繰り返されて、琥珀は怖くなった。

 モナカには、謎の迫力がある。


「い、いないけど」

「うえぇ!? こんなにイケメンなのに? 信じられない……。あ! もしかして、彼女はいないけどセフレはいる的な?」

「違います! そんなのいないから! 僕はどう……」


 余計な事を言いそうになり、琥珀は慌てて口を閉じた。


「なんと。こんな所に手付かずの秘宝が眠っていたとは」


 モナカがハッとする。


「もしかして、そっちのお方?」

「違います! 僕は普通に女の子が好きだから!」

「じゃあなんで……。琥珀君くらいイケメンなら絶対モテモテのはずなのに……。DV癖があるとか?」

「ないってば!」

「じゃあなんでですか! 勿体ぶらないで教えてくださいよ!」


 別に勿体ぶったわけではないのだが。


「……僕と関わるとみんな不幸になるからだよ」

「あぁ。中二病なんですね」

「ちょっと! 僕の悩みをそんな言葉で片付けないでくれる!」

「だってそうじゃないですか。鏡の前でもう一回言ってみてくださいよ。絶対中二病ですから」

「やらないよ!」


 言われてみるとそんな気がして、琥珀は猛烈に恥ずかしくなってきた。


 僕って中二病だったのかな?

 って、この子のペースにはまってどうする! 


 これは切実で重大な悩みなのだ!


 文ちゃんの事も含めて、ちゃんと理解して貰うには話が長くなる。

 教室に着くまでの時間ではとても足りない。


 女の子と関わるのは主義に反するのだが、モナカを不幸にしない為だ。

 ここはきっちり時間を作って説明しないと。


「……説明するから、放課後ちょっと時間いい?」

「わお。私、口説かれてる! もちろんオッケーです。私の家とかどうですか? 丁度今、親が留守なので」


 グッと親指を立てるモナカを見て、琥珀は眩暈がした。

 廊下には他にも生徒がいて、居合わせた女子があんぐりと大口をあけている。


「違うってば!? お願いだから余計な事を言わないでよ!」

「あ、俺様系はタイプじゃないので。イケメンでも生意気言ってると殴りますよ?」


 どこまでもにこやかにモナカが拳を掲げる。


 もしかしてこの子、助けてあげた事を忘れてるんじゃないだろうか。

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