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キス マイ アス

『ふっ。そういうわけで失敗した』

『バカですの!?』

『バカだよね。知ってたけど』

『ふっ。バカじゃない! 天才だ!!!!1111 それより頑張ったんだから報酬を要求する。天吹君のエッチな画像か音声、匂いのしみ込んだ物がいい』

『寝言は寝て言えですわ』

『だよね。上手くいったらって話だし』

『ふっ。ちょっとくらいいいだろ! ミスノーブルは金に物を言わせてコレクションを買い集めてるじゃないか! セイレーンだって男子を使ってオフショットを集めさせているのは知っているんだぞ!』

『天吹君グッズには髪の毛一本にも同じ重さのダイヤと同じ価値がありますわ。タダで譲るなんてとんでもない』

『同じく。ていうかあたしは別に集めさせてるわけじゃないし。男子が勝手にあたしのご機嫌を取ろうとして貢いでくるだけ』

『ふっ。同じ事だろ! 欲しい欲しい欲しい欲しい! 天吹君グッズが欲しい~!』


 ――管理者権限によりプロフェッサーの発言に5分間の制限がかかりました。


『で、次は法子ちゃん?』

『えぇ。わたくしの財力で身の程知らずの転校生に目に物見せてやりますわ! おーっほっほっほっほ!』

『結局やるんだ』

『うっせぇですわ!?』


 †


 翌日の昼休み。

 琥珀はモナカ達とお昼を食べながら何気ない会話を楽しんでいた。


「琥珀君は部活とか入らないんですか?」

「誘われた事はあるんだけどね。全部断っちゃった。女子の部のマネージャーにって話ばっかりだし。僕が入ったらサークルクラッシャーみたいになっちゃいそうでしょ? 男子には嫌われてるしさ」


 そんな話題になっていたのは、部活オリエンテーションがあったからである。


「モナカちゃんはどうなの? なにか気になる部あった?」

「まさか。こんなイケメンの彼氏がいるのに部活なんかにうつつを抜かしている暇はありません。琥珀君が部活に入るなら一緒に入ろうかと思いましたが、そうでないなら興味なしです」

「そ、そっか」


 大真面目に言われて琥珀はキュンとした。

 僕って大事にされてるな~っと背中がぞわぞわする。


「なら、ファイトクラブ同好会とかどうっすか? 姐御マジ強いし、一緒にテッペン取りましょうよ」

「お断りです。なんで私がそんな事を」

「天吹君も勿論一緒に! そんなにイケメンだと色々危ない目に遭うっすよね? オレが手取り足取り、すぐに身に着く護身術を教えるっすよ――いだだだだ!? 姐御!? 捥げる!? 乳首捥げる!?」

「下僕の分際で私を無視するからです」


 真姫の巨乳の先をギュッと抓るモナカを見て、琥珀ははわわとエッチな気持ちになった。

 ならない男子がいるだろうか? いやいない! 反語である。

 琥珀は百合もいける口だ。


 一方で、真姫の誘いにはちょっと惹かれるものもあった。イケメンの呪いのせいで部活なんか考えた事もなかったが、その問題がクリア出来るなら、一度くらいは入ってみたい。


 それに、真姫が言う通り危ない目にあう事もある。かねてから琥珀は自分の事を頼りない男だと思っていたし、元学園最強が教える護身術には興味があった。ファイトクラブ同好会ならモナカと一緒に入れるし、部長が真姫なら気持ちも楽だ。部員も女子ばかりだったから、条件としてはこれ以上ない。


 そう思いつつ、結局口には出せなかった。


 琥珀がファイトクラブ同好会に入りたいと言えば、モナカは二つ返事で付き合ってくれるだろう。けれど彼女は、本当は二人の時間を大事にしたいのだ。モナカには色々尽くして貰っているし、顔以外に取り柄のない琥珀としては、せめてモナカの気持ちを尊重したい。それに、自分が部活に入ったら色々と迷惑がかかるだろう。


「なら真科学部はどうかね? 名前だけでその実態はボクの個人的な研究室だ。部員もボクしかいない。放課後はそこに集まってお菓子でも食べながらみんなで天吹君を愛でようじゃないか」

「おほ! いーじゃんそれ。アリーもたまには良い事言うな!」

「当然だ。ボクは天才だよ真姫君」


 真姫がパチンと指を鳴らし、アリエッティが前髪をかき上げた。


「全然良くありませんし。なんであなたがいるんですか」


 ジト目になったのはモナカである。


「真姫君から聞いた。君に負けたら下僕になるシステムなんだろ? 本意ではないが、天吹君と一緒の時間を過ごせるのなら君の尻の穴だって喜んで舐める。ただし消毒はさせて貰うよ――ギャン!? だから、なぜ殴る!?」

「食事中に下品な事を言うからです。あと、下僕は一人で十分なので早急にお引き取り下さい」


 ボキボキとモナカが拳を鳴らす。

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