74・都市ソーラではパレードを見学します
シリルの話が終わり、領主のボーデン家の屋敷で夕食を取り、私たちは就寝に入った。
私とリコは、都市ソーラに着いた翌日に予定は入っていない。
王様とヘレン王女。ヘレン王女についているナルとアニスとナタリーは領主の屋敷で貴族たちや都市の有力者と会っている。
予定は入っていないが、都市ソーラに着く前に襲われたばかりだ。
「リズ姉、明日のパレードのコースを下見に行くのです」
リコの提案で、何故か一緒にいるエマも連れて、都市ソーラの中を見て回った。
「リズ、これは下見か、単なる観光旅行のようだぞ」
エマに言われるが、
「そんなことありません。隠れていそうな場所や襲撃しやすいところをしっかりチェックしています」
一応チェックはしているが、美味しい匂いに誘われて、三人で楽しい時間を過ごしてしまった。
こうして一日目を過ごし二日目のパレードの日はパレッサ製薬商会ソーラ支店で向かった。
「リズ様、リコ様、そしてお友達のエマ様ですね」
バレッサでは支店長が迎えてくれる。
此処でも大通りに面した支店長の部屋でパレードを見学する。
「支店長、おはようございます。今日一日よろしくお願いしますね」
「おはようなのです。よろしくなのです」
私とリコは支店長に挨拶をする。
「おお、よろしく」
エマ、もう少し丁寧に挨拶して欲しい。
「エマ様ですね。港町リンマの冒険者でマグナント家の次期当主。お噂は聞いております」
都市ソーラではエマは有名らしい。
窓の近くにテーブルと椅子が用意されている。
「此処でお茶を飲みながら、パレードを見るのです。
お菓子はバレッサのスイーツが出るのです。タクロア ナーマム ベアリル キグナス それぞれ違った美味しいスイーツが出たのです。此処で出るスイーツも楽しみなのです」
リコの言葉に支店長がちょっと緊張している。
お菓子で他の支店に負けられないのだろう。
領主の屋敷からパレード出発のファンファーレが聞こえる。
パレードが始まったようだ。
パレードは他の都市と変わらない。
此処でも先頭は王都の騎士団が務めている。
その後をソーラの騎士団が続く。
オープン馬車に王様と領主、領主の妻、そしてシリルが乗っている。
シリルの膝には魔山猫のコーネが座っている。
シリルは護衛で乗っているので動きやすい恰好をしているのだが、見ようによっては王様の愛人見えてしまう。
あとでどんな噂が立つか楽しみだ。
王様の馬車の御者も当然戦闘能力の有るものが付いてる。
王様の馬車とヘレン王女の馬車の間にも騎士団が並んでいた。
ヘレン王女のオープン馬車は、御者としてアグ、ヘレン王女の隣にナル、そして馬車の後部にアニスとナタリーが立っていた。
ヘレン王女の馬車の後ろにも騎士団の隊列が入る。
その後ろからは、此処でも貴族の馬車が何台か続いてきた。
ここまでが王様の隊列である。
少し離れてカーニバルパレードの隊列が来るはずだ。
王様の隊列が行きすぎ、カーニバルパレードを来るのを支店長室で待っていると。
「リズ姉、窓から魔力を含んだ風が入ってきたのです。そして部屋の隅に人型の影が出来ているのです」
リコが窓とは反対の部屋の隅に人型の影が浮かびあがっている。
「此処にいるのはリズとリコかな」
影なのに話しかけてくる。
「誰ですか」
影に聞く。
「リズ、リコ、お前たちの力見せてもらった」
名のらないが、これで影の声が襲撃者だとわかる。
「もう一度聞きます。あなたは何者ですか」
私が言うが、あくまで名乗らないようだ。
「メシール王国、新しい王に言いたい事が有ったが邪魔をされた。
代わりにリズ、お前に伝える。
ローズ学園を潰せ。
潰さないようなら、しばらくして潰しに行く」
影はそう言い終わると姿を消した。
「リズ姉、あれは言葉だけを送ってきたのです。こちらの話は聞こえていないのです」
なるほど返事をしないわけだ。
影が消えると、カーニバルパレードの楽団の音楽が聞こえてくる。
「リズ、リコ。今のことは後でみんなで相談しよう。
今はテーブルに並べられているスイーツを美味しくいただく方が大切だ」
エマであった。
ローズ学園をつぶせと言われても、此処には私とリコとエマだけだ、決めることは出来ない」
相談は夕方領主の屋敷に帰ってからすることにして、リコとエマと美味しいスイーツを食べながら、パレードを見学をすることにした。
「リズ姉、スイーツの一番はナーマムなのです」
スイーツを食べ終わったリコが突然言い出した。
リコ、それは支店長のいないところで言って。
パレードも無事終わり、私たちは領主の屋敷に帰えることにした。




