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499・あれはなに

「リズさんリコさんお疲れ様」

森の周りに作られた柵のところでアグが迎えてくれる。


「うんアグ、アグの援護のおかげよ」

「そうなのです。アグのおかげで楽になったのです」


「ははは、そう言われると照れるな。でもリズさん、カカロ村では今みたいなことが頻繁にあるの」

「いいえ、溢れてくると言っても、間引きもきちんとしていますから、出てきても数頭なはずです」


「そうなのです。魔猪三十頭、魔鹿五頭、魔熊二頭は多いのです。先に森に張ったお父様はなにをしているのです」

「そうね、ちょっとおかしいわね」


それに朝から森に入ったジム達村の冒険者が森から出てこない。

まさかまだ森に沢山の魔獣がいるのか。


「ねえリコ、ジム達を迎えに行かない」

「ハイなのです、行くのです」

しょうがない応援に行こうかとしたとき。


ワオーン


森から獣の遠吠えが聞こえる。


「リズさん、あの遠吠えって、魔狼だよ」

アグが教えてくれる。

隣でシャンが声のした森を強い眼差しで見ている。


「えっと、魔狼ですか。確かガンズの森には居ないはずでは」

「そうなのです。ガンズの森だけではないのです。見かけるのでさえ難しいのです」


「でも、あの遠吠えはシャンと同じだよ。だから魔狼で間違いない」

アグは魔狼だと断定している。


その時。


ワオ ワオーン ワオーン


シャンが森に向かって吠えた。


「どうしたのシャン」

アグが問いかけてもシャンは森を見つめて動かない。


「ねえリコ、あそこ見える」

「見えないのです。アッしまったのです。目の身体強化をしていないのです。望遠にしてみるのです」


「見えたリコ、ほらあそこに大きな魔狼がいるでしょ」

「居たのです、ぎりぎり森から出ていないのです」


森の少し奥、暗くて目の身体強化をしないと見えないところに魔狼がいる、そしてでかい。


魔獣でない狼は大きくても大型の犬くらいだ。

シャンはもう少し大きく、体長は二メートル近くある。


しかし森にいる魔狼はそれどころではない、間違いなく五メートルはあるだろう。


「リズ、あれは魔狼で間違いないな」

さすがに遠吠えが聞こえたのかギルド長が出てきていた。


「ええ、間違いなく。でも森からは出ないようですね」

「それなら助かる。あの大きさの魔狼を倒すのは大変だからな」


ワオーン


私とギルド長が話しているとシャンは再び吠える。


ワオワオーン


それに応対するかのように森にいる魔狼も吠えている。


「ねえアグ、なんて言っているかわかる」

「うん、多分。 『大丈夫か』『大丈夫』『一緒に来るか』『行かない』ってそんな感じ」


なるほど、シャンはアグの実家の裏の森でミニドラゴンに襲われているところを助けた。

近くに母親らしき魔力持ちの狼が倒れていた。

そうシャンは魔狼と魔力持ちのハーフなのだ。


魔狼は群れで行動するが、母親とシャンは群れからはじき出されていたのだろう。


ワオーーーン


シャンがこれまでより長く吠える


「リズ姉、魔狼が森の奥に引き帰るのです」

「そうね、あきれめて帰ったって感じね」


「うん、シャンが来ないのがわかったみたい。あの魔狼はシャンのお父さんの居た群れのリーダーで、シャンを探し出して群れに戻そうとしたんだって」

「それって、今のワオーンで話していたってこと」


「そう、でもシャンの知っているリーダーじゃないって、代替わりしたじゃないのかな」

「わかったのです、新しいリーダーがシャンを認めたのです。帰って欲しかったはずなのです」


「シャンはこっちが良いって。ありがとうねシャン」


クゥン クゥン

アグにシャンはすり寄っていた。


魔狼が森の奥に消えると、代わりにジムたち冒険者が森から出てくる、そしてそのまま村に帰ってきた。


「おー、みんな無事だったか」

「お父さん、ちょっと森から魔獣が出すぎでしたよ」


「いやー悪い悪い、確かに増えすぎてはいたが、それ以上に魔獣たちが興奮しだしてな、多分魔狼のせいだと思うのだが、それで片づけるのに手こずったんだ。それにリズとリコがいればあれくらい倒せるだろ」


「まあ倒しましたけど、それでお父さん、魔狼がいると魔獣ってそんなに興奮するの」

「ああ、何といっても別格だからな。冒険者で魔狼を倒した話は聞かないだろ。だから俺たちは離れていたんだ」


「そうなのです。魔狼は強くて賢いのです。それでなくても魔獣は体毛で剣をいなされて切りづらいのです。魔狼を切るのは無理なのです。倒すには作戦と工夫がいるのです」

そうだよね、だから私は魔熊を倒すときは心臓を突く。


魔熊の首を一振りで落とせるのジムの他には何人しかいない。

普通は数人がかりで何回も叩くように切りつけて倒すのだ。


魔熊より強い魔狼を倒せる冒険者はいない、と思ったが。


「ねえリコ、ファイヤーヒートで燃やしたらどうなるの」

「リコが勝つのです」


はい、ドラゴンを骨まで灰にするリコが一番強いです。

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