497・カカロ村を回ります そしてお約束通りです
「ビル、あれがこの村で一軒だけあるお店なのです」
「えっと、他にはないのか」
「ハイなのです。お店は一軒なのです。商人が来るので宿屋さんは二軒あるのです。でも商人は毎日来ないので暇なのです」
私とビル、そしてリコとバラトさんでカカロ村を案内している。
「あとは冒険者ギルドなのです。村役場も無いのです。ギルドが代わりにやっているのです」
「そっか、カカロ村って冒険者しかいないのだな」
「そうなのです。食堂も宿屋も務めている人もみんな冒険者なのです」
「それだけじゃないでしょ。学校もギルドがやっているでしょ」
「そうだったのです。此処には教会が無いのです。子供の読み書き計算はギルドの部屋で教えているのです」
村に一軒のお店は雑貨屋で、服から調味料まで何でも売っている。
食堂や宿屋は冒険者ギルドが運営であり、個人経営の店は雑貨屋だけだ。
カカロ村に魔獣の素材を買い付けに来る商人は荷馬車に色々積んでくるので、その時は広場で市が開かれ、村人は必要なものを購入していた。
「ビル、これで村の見学は終わりね」
「半日もかからず、村を一周回れるのだな。こんな小さな村だと暮らすのは大変だろ」
「そうでも無いですよ。村には井戸がいくつも有りますし、近くに川から畑に水を引いて広くやってます。
草原も広いので、馬や牛、羊まで飼うことが出来ます。
それに魔獣の素材は高く売れるので、村の収入はかなりのものですよ。
その上、ドラゴン退治で駆り出されたので、此処の冒険者なみんなお金持ちです」
「お金持ちになったら、危険な冒険者をやめないのか」
「カカロ村の冒険者にはそんな人はいません。みんな魔獣と戦うのが好きなんです」
父のジムも当然好きです。
ガンズの森で魔獣があふれそうだと言うので、張り切って村の冒険者と退治に出かけて行った。
溢れる前に、少しでも減らしたいそうだ。
「リズ姉、お昼なのです。昼食の為に家に帰るのです」
「そうね、それじゃあ、ビル バラトさん行きますか」
四人で昼食の為にお爺さんの家に向おうと思ったとき。
カン カン カン カン カン カン
カカロ村の鐘が鳴った。
「三回ずつ区切って鳴ったのです。これは魔獣が森から出てた合図なのです」
「そうなのかリコ、確か高ランクの冒険者は間引きの為に森に行っているのだろ。残ったもので大丈夫か」
「バラトは心配性なのです。村にはまだたくさんの冒険者がいるのです」
「そうねリコ、いざとなったら私たちも加勢しましょ」
「そうだったのです。まずは武器を取りに行くのです」
「じゃあビル。そう言うことで」
私とリコはビルとバラトさんをおいて、馬車に積んである武器を取りに行く。
私は新しい方の太刀と脇差を持ってきている。
リコは二本の片手剣とマギボードだ。
トムお爺さんの庭に停めてある馬車に行くと、アグ達も帰って来て武器を用意していた。
「リズさんも武器を取りに来たんだ」
「ええ、久しぶりの魔獣でしょ。ちょっと頑張ちゃおうかなと思って」
私達は武器を持って、草原と村の堺にむかう。
村の周りは魔獣除けの柵で囲まれおり、柵には村に残った冒険者が集まっていた。
柵からガンズの森を見ると。
「おー、かなりの数ね」
「そうなのです」
「ねえ、リズさん、あたしの弓の射程範囲なんだけど、やっちゃっていいかな」
「アグ、全部は駄目よ。私たちの分も残してね」
「わかった」
アグは得意の弓矢で魔獣を狙う。
その脇にはシャンがアグを守るために付いていた。
「ビーナは戦いたくないの。ネモはどうするの」
「・・・柵を乗り越えそうなのだけ倒す。リズさんとリコさんがいるから来ないと思うけど」
「わかったの。ビーナはネモといるの」
アグとビーナ、それとネモは柵から出ないようだ。
「それではリコ、行きますか」
「ハイなのです」
私とリコはガンズの森から草原に出てきた魔獣を倒すため、柵を乗り越え草原を走った。