462・魔獣たち
「シリル、私たちと一緒で平気なの」
「ええ、ヘレン王女は今日もロベルトの王族や貴族と会っていますから」
「だったら護衛で着いていなきゃ駄目なんじゃない」
「このお城の中なら大丈夫よ。それにソニアさんとソニアさんがが鍛えた女性騎士が一緒にいるようですから」
「でも私たち、今日もニアのところだよ」
「ええアグ、どうもコーネがミミラに会いたいようなので」
「あっ、昨日シャンが会ったからでしょ」
「そう、それにちょっと興味のあることを確かめたいの」
「ビーナも気づいたの、アグの能力の事なの」
「・・・私はわからなかった」
「私の能力って、魔獣と意思疎通できることだよね」
「そう、まあ取りあえず行ってみましょ」
シリルは、アグ ビーナ ネモと一緒にニアのいるロベルトの学校に向かった。
後ろからシャンとコーネが付いてくる。
「こんにちは、ニア。今日も来ちゃったけど良いかな」
「いいよー、入って」
教室の奥からニアの声がする。
「わかったけど、今日はシリルさんとコーネも一緒なの。シャンもいるから部屋の中は無理みたい」
アグの返事にニアが出てくる。
「本当だ、これじゃあ部屋は無理かな。表の庭で待っててくれる」
表で待っていると、ニアがミミラを連れて出てきた。
「今日は子供たちには自習をさせたの、シリルさんがコーネを連れてきたってことはあれでしょ」
「やはりニアもわかりましたか」
「・・・私だけかな、わからないの」
「そっか、じゃあ説明するね。その前にコーネにミミラを紹介するから」
アグはコーネとミミラに意思疎通をしてお互いを紹介する。
「・・・初めて会ったのに仲良くなった」
「ええ、お互いの飼い主が友達だって伝えたからね」
「やはりそうか、アグが意思疎通した魔獣同士でも意思の疎通が出来るんだな」
「ねえ、シリルさん、前からシャンとコーネが仲良かったんだから気づいてたんでしょ」
「いいえ、私は魔力持ちじゃあないから確証がありませんでした。それでニアに聞きたいのですが、昨日アグがミミラと意思疎通した後ミミラの気持ちが伝わるようになりませんでしたか」
「あー、そっか。昨日アグさんが帰ってから、なんかミミラとの間が近くなった気がしたんだ」
「ねえシリル。でもニアは魔獣との意思疎通できる能力はないでしょ。何で気持ちが通じるの」
「それはアグの能力の一部だからだ、アグが意思疎通すると、多分道筋が出来るんだと思う。だからコーネとシャンの間に意思の道筋が繋がったんだな。同じようにミミラもつながり、魔力持ちのニアとも道筋が出来たんだ。」
「でも私はミミラの気持ちが少しわかる程度だけど」
「それはニアには魔石が無いからな。ミミラはニアが大好きだから気持ちが伝わるんだ」
「シリルさんは魔力無しでしょ。それなのにコーネと仲がいいですよね」
「これは運命ですね、初めてコーネと会った時から気が合いました」
シリルはさらわれたか拾われたかして、物心つく前からある組織で育てられた。コーネも捕獲され売りに出される前にローズ森に逃げ出していた。
シリルとコーネ、心の中に感じあうものが有るのだろう。
そしてシリルはミミラを見て。
「ニア、ミミラってドラゴンって言うより鳥に近くありませんか」
「あっ、シリルさんもそう思う、私も以前撃ち落とした空飛ぶドラゴンとちょっと違うと思った」
ちょっとではない、空飛ぶドラゴンは腕から長い指が伸び、そこから脇の下から横腹にかけて幕が張られて翼になっている。
ミミラは幕でなくそこが羽になっており、見るからに鳥であった。
「そうなんだよね、ソニアさんとも話していたんだ。でも見るからにドラゴンより鳥に見えた方が飼いやすいって、だから今は鳥だってことにしているんだ」
「微妙ですね、アグが意思疎通できたのですからドラゴンとは少し違いそうですが、鳥の魔獣は見つかっていません。何なんでしょうね。学園に帰ったらリズさんに聞いてみましょう」
そんなこと私にもわかるはずがない。そこまで夢見人の知識は万能ではないのだ。
ただアグが意思疎通した魔獣同士でも意思疎通が出来るのは新しい発見だった。