31・期末テストが終わりました
授業が終わり、夕食と風呂が終わると、いつもの通りヘレンの部屋にティンの部屋の4人が集まる。
「ヘレン、お邪魔しに来ました」
ティンと同室のカレンがドアをノックし声をかける。
すでに入園して四か月近くなるので、王女であるヘレンに対しても普通の友達と同じに接している。
「いらっしゃい、どうぞ入って」
ヘレンが答えると、ティン カレン スン ランの四人がヘレンの部屋に入る。
「やっと試験終わったね」
ヘレンと同室のニアが言う。
「ええ大変でした。薬学科は薬草の名前と効能や製法仕方とか、色々覚えることが多かったです」
スンが言うと。
「本当、この症状にはこの薬とかね、中間試験は一般常識の基礎とか薬草の名前くらいだったのに、期末になったら、やたら難しくなるんだもん」
ランがつづける。
「でも、スンもランも答えることが出来たんでしょ」
同じロベルト出身のニアが言うと。
「当たり前です。一生懸命覚えました」
スンである。
「あたしも頑張ったんだよ。でも授業は沢山あったのに、身体の仕組みの問題はなかったね」
ランだ。
私が書いた『身体の仕組み』は、どの症状にどの薬がいいのか判断するために徹底的に教え込む。
「それは、体の仕組みを試験にすると、みんな落第してしまうからです」
ヘレンが説明する」
「ヘレン、嘘は駄目だよ。単純に先生が問題を作るのが面倒なだけってソニアお姉ちゃんが言ってたよ」
「そうでした。他の問題は使いまわしをしていますが、身体の仕組みは全部新規に作るので実施を辞めたそうですね」
ヘレンは本当のことは知っていたのだ。
「それで魔法科はどうだったのかな」
スンが聞く。
「それはティンから聞いてないの」
ニアだ。
「ティンは説明がくどくて結局何を言ってるかわからないの」
ランが答える。
「そんなことないです、あなたたちが魔法のことを知らないから、一から十まで説明してあげたんでしょ」
ティンは出来るだけわかるように説明したらしいが。
「ティン、ランとスンが聞きたいのは、テストが出来たかどうか知りたいだけで、テスト内容を詳しくいっても駄目だと思います」
ランとスンは魔法科の基礎もやっていないのだ。ヘレンはティンの間違いを教えてあげた。
「ニアでもできたから、ティンなら楽勝だったよね」
「ええ、魔法科は実技重視ですから、筆記は楽勝でしたね」
ニアもティンも筆記は問題なかった。
「それに、問題のほとんどが四択ですからね。出来ない方がおかしいです。
薬学科もそうではないのですか」
ヘレンが聞くと。
「えーいいな、四択とか少ししかなかったよ。カッコに答えを入れるとか。
作り方を書きなさいとか、かなり面倒な問題の方が多いんだ」
四択の方が採点も楽だから他の先生が好んで使う。
薬学科の問題は私が作った。採点も私だ。採点が大変なくらいどうということは無いのだ。
「でも、三人ともちゃんとできたんでしょ」
「出来ましたよ。リズ先生の授業を普通に聞いていれば解ける問題でしたから」
ランだ。
「そうね、リズ先生の授業はわかりやすいもんね」
スンだ。
「薬学科の授業は良いのですが、魔法科はギルダ先生とリコ先生でしょ。授業はどうだったの」
何と言ってもギルダとリコだ、授業内容が気になった。
「うーん、教え方上手いと言えば下手かな。でも、リコ先生はきちんとコツだけは教えてくれるから、授業に着いていけない生徒はいないよ」
ニアだ。
「そうね、ナルも教えてくれるし、アサラの生徒はある程度魔法は使えるし、問題なかったわね。
ただ、ギルダ先生はいらないかも」
ヘレンの言葉はきつかった。
「テストも終われば一学期もすぐに終了。そして冬休み。何しようかな」
スンは冬休みを楽しみにしている。
「ロベルトから来ている三人は帰らないの」
カレンだ。
「うん、帰らない。往復しているうちに冬休み終わっちゃうもん」
ニアが答える。
「私も帰らないわよ。乗合馬車の乗車賃ってバカにならないの」
学園生のティンにとっては大金だった。
「それでは、みんなで冬休みは一緒に楽しみましょう」
ヘレンの言葉に。
「ヘレン、冬休みは家に帰ってきなさいって言われていないの」
ニアはヘレンは家に帰るものだと思っていた。
「言われています。でも無視することにしました」
ヘレンを家に無理やり連れていけるのは、学園に一緒に来ているナルとアニスだ。
だが、ヘレンが家に帰るとナルとアニスも王家の屋敷に行くことになる。
私やリコと遊びたい二人は、何か理由を考えて、ナルとアニスはヘレンが帰らなくてもいいようにするだろう。
そして終業式も終わり、楽しい冬休みが始まるのだ。