表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/537

26・一学期後半薬学科の授業です

バレッサの屋敷から学園に付くと門のところにソニアが立っている。


「おはようございます。リズさん。リコさん。アグちゃん」

「「「おはようソニア」」」


「って、どうしたのソニア」

「はい、授業が始まる前にリズさんにお話したいことがあって待ってました」


「相談って」

「ええ、アサラの子のことです。

中間試験が終わったら、薬学科の実技でマナを使うようになったそうですね。

授業に着いていけなくて困っているのです」


アサラの生徒のマナの練習は昼からの自習時間に行われているが、薬草から薬を作る時のマナ操作がまだ出来ていない。

ソニアはアサラの薬学科の生徒から何とかならないか相談されていた。


「そうね、それは私も気づいてました。

ソニアの時はマナを使う実習は二学期からでしたものね。

でも、今の生徒は入園前から簡単な薬なら作れる子たちでしたから、ソニアの時みたいに、薬草でない草を使って、切ったり煮たり、擦ったり蒸したりする道具の使い方を教える必要がなくなりました、今からアサラの子に合わせた授業をすることも難しいですね」


アサラに合わせれば、他の生徒から不満が出る。それに留学生全員が出来ないのではない。ロベルトの生徒はマナの使い方を覚えてから入園して来ている。


「まあそう言うと思ってました。それでお願いがあります、その授業中アサラの四人の生徒に私がマナを教えるのを許可してほしいのです」

「えっ やってくれるのですか。本当は私からお願いしくちゃいけなかったのですよね。

それではさっそく園長には許可取っておきます」

助かった。渡りに船である。

アサラの子をどうしようか、ちょっと悩んでいたのだ。


「そう思っていたのならもっと早く言ってください。

それから、彼らは貴族です、一般の生徒の前で指導するわけにはいかないので、生活指導室の使用許可も一緒にお願いします」

平民が簡単に出来ることを練習するのは一緒の場所でない方がいいらしい。


「あーあそこ使うのね。いいなー私も行きたいなーってのは冗談です。一緒に許可を取っておきます」

あそこでシャンとコーネを見ながらアグの入れてくれたお茶を飲むのは至福の時間だ。


薬学科の授業、他の生徒は実験室に行くがアサラの四人の生徒はソニアとともに生活指導室に行く。


「シリル、お邪魔しますね。学園長とリズの許可は貰ってありますから」

「聞いているわよソニア、もともと留学生のために作って部屋だから気兼ねすることはないからね」

今回はトラブルではないが、留学生の相談に乗るために作られた生活指導室である。


アグは軽く挨拶をする。同じアサラの出身だが、アグは平民の子、生徒は貴族である。

対応に困っている。


「アグさんですね。アグさん意外とアサラでは有名ですよ」

アサラの留学生の一人が言う。

「そう、『魔狼使いのアグ』って呼んでいる人もいましたね」

「五人の少女が荷馬車で盗賊を倒しながら旅をしているってかなりの話題だったな」

アサラの他の生徒もうなずいている。


私たち五人の旅は、それなりに目立っていたようだ。


「はい、おしゃべりはそこまで。

では、持ってきた。道具で薬草をすりつぶしてください。私が背中に手を当てて、マナの制御を助けますから、落ち着いてマナに集中してください」

四人の生徒は椅子に座り机に置かれたすり鉢に入った薬草をすりこ木棒で擦っていく。

ソニアは、一人ずつ背中に手を当て、マナが綺麗に流れるようサポートしていく。


「ソニアさんに手伝ってもらえると出来るんだけどな」

「うーん、私は何となく感じがつかめた気がする」

「僕はもうすぐできそうな気がするな」

三人の生徒はソニアがサポートすれば、薬草にマナを注ぎ込めた。


「えー、私まだ全然駄目だよ」

一人の生徒は感じがつかめないようだ。


「大丈夫よ、マナにあなたの意思が感じられるから、諦めないでね」

四人とも魔力とマナを別々に感じることは出来ていた。


「あたいも最初はちょっと戸惑ったけど、魔力を最初に体かどかすんだ、そして体にはマナしかないと思ってマナに集中すると、自分の思った通りにマナを使えるようになったんだ」

アグが自分がマナ制御が出来るようになったコツを言ってみた。


「魔力をどかすってどうするの」

「簡単だよ。魔力を感じて、魔力に体から抜けていくイメージを与えるんだ」

アグが説明する


「一日で出来るものでもないし、製薬に使う道具の練習も必要ですから。しばらくの間、実習の授業はここを使うことになっています。あせらないで、基礎をしっかり身につけましょうね」

ソニアはそう言いながら、生徒の背中に手を当てていく。


「薬学科の生徒でも、アサラの子はみんな腰に魔法の杖を挿しているのですね」

シリルが生徒の杖に気が付いた。


「はい、全員が魔法科を希望したので、くじで薬学科に来ることになりました。

でも、私たちは誇り高き魔法使いの貴族です。杖は手放せません」

「そうです。私の杖は家に代々伝わるものです。これほどの杖は他にはありません」

生徒が自慢すると。


「ナルの杖はもっとすごいぞ」

アグが言う。


「あの杖もアグと同様、かなり話題になりました。

リコ先生が生家のあるロズ村の魔力だまりの谷からとってきたそうですね。あれは国宝級で、持ち歩いていいものではないものです」

ナルが使っている杖は規格外の中の規格外らしい。


「それに、この間見たリコ先生のマギボード、バラせば、六本の杖が作れるって言われてるし、

杖の材料のコトブ木が沢山生えている魔力だまりの谷に一度行ってみたいですね」

生徒たちの話が杖に移った。


「行くのは良いけど。あそこは強い魔獣のテリトリーだよ、リズさんやリコさんの身体強化なら半日かからないで着くけど、普通の冒険者は二日がかりで行くところだから、まず、それだけの力をつけないと行くのは辞めた方がいいと思うんだ」

アグはリコから、コトブ木を取りに行った話を聞いていた。


「そうね、その為にも まずマナの使い方を完璧にしましょうね」

杖の話に夢中で薬草づくりの手がおろそかになった生徒にソニアは声をかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ