244・アグとビーナ
「リズさんとリコさん達、レストランでおいしいもの食べてるのかな」
「リズさんとリコさんは緊張しているの。味なんかわからないの」
屋敷で留守番をしているアグとビーナだ。
「リコさんが緊張するわけないよ、きっと『おかわりなのです』なんて言ってよ』
「そうだったの、リコさん食べ物の前では緊張しないの」
アグとビーナが勝手なことを言っている、リコはともかく、私はドーツナの広場でのお披露目もその後のレストランでも緊張し続ている。
「そうだビーナ、リズさん達がおいしいもの食べてるんだからあたしたちもおいしいもを食べに行こうよ」
「でも、ビーナはお留守番なの」
「大丈夫だよ、バレッサからきている使用人もいるから」
「アグさん、ビーナも使用人の一人なの、お留守番もお仕事なの」
「そっか、そういえばあたしだけが仕事してないんだよな」
アグはこの屋敷の居候だ。
「アグさんは冒険者なの、お仕事しているの」
「うーん、最近はリズさんやリコさんの頼みばかりで、冒険者ギルドにも顔を出していないし、少し考えないといけないのかな」
私たちがアグに雑用を頼むときは出来るだけ冒険者ギルドの依頼扱いにしている。
あまり依頼をやらない冒険者はランクダウンされるので、それを防止するためだ。
「アグさんは、荷馬車の御者ができるの。バレッサ専属の冒険者として荷馬車の御者ならなれるの」
「そっか、そうすればあたしもバレッサの社員になれるのか、今度リズさんに相談してみよ」
アグとビーナが話をしているところに。
「ビーナ、アグさんのところで油を売っていないで、きちんと仕事をしなさい」
使用人のリーダーがビーナを見つけて、注意をする。
「ごめんなさいなの、ビーナ早番だから終わったと思ったの」
「あら、そうだったかしら って、早番にしてもまだ終わるの早いですよ。そうね、あと階段の掃除がまだだから、それをやって終わりにしなさい」
リーダに言われ、アグはバケツと雑巾を持って階段に向かった。
「やっぱりあたしじゃバレッサの社員は無理かな」
勤め人をやったことの無いアグだった。




