211・街中の魔法対決は難しい
街中に作られたステージ。
王都の中央に作られたほとんど広場と言ってもいい道を封鎖している。
剣の模擬戦に十分の広さがあるが、魔法対決にはどうなのだろう。
「リコ、決して怪我人をだしちゃ駄目よ」
リコが広範囲攻撃を全力ですると、王都がなくなってしまうかもしれない。
「大丈夫なのです、使うのはこの魔法の杖だけなのです」
そう言って、リコは一本の杖を持ち出す。
「これって、ナルと交換した杖だよね」
「そうなのです。授業でも使っているのです。扱いには慣れているのです」
学園内でも使っている杖である。
きちんとステージ内で収まる魔法攻撃が出来るようだ。
リコとセリは名前を呼ばれステージに上がる。
セリは、バレッサのお店で着ている服だ。
「魔法対決は三分一ラウンドで行います」
司会者から説明が入る。
本来魔法攻撃は一撃で決まることが多いので一ラウンドにしたようだ。
「はじめ」
審判の掛け声で戦闘態勢に入る。
リコは自然体のまま杖を軽く前に構えた。
「私のほうは手加減できませんので、リコさん避けてくださいね」
セリが不吉なことを言っている。
「かまわないのです。全力でリコは避けるのです」
ブーン ブブーン ブブブーン
リコが返事を返すころにはセリの周りに魔力の固まりが回りだす。
「あれはマギボールと同じものなのです。
それをコントロールして、身体の周りの回しているのです。
固まりは五個もあるのです」
「さすがリコさんですね、数までわかるなんて」
「それでは行くのです、『ファイヤー』」
リコは様子見の炎攻撃をセリに放つ。
バシッ
セリに届く前に炎はセリの魔力の塊に落とされる。
そして、いくつかの塊がリコに向かって飛んでいった。
ブィーン ブーーーウン ブン ブィーン
「面白いのです。くねくね曲がってくるのです」
リコの言う通り、まっすぐ向かってこない、完全にコントロールされた魔力の塊は、リコの隙を狙って襲ってくる。
セリは無詠唱で魔法を使っている。
詠唱を聴けばリコは魔方式を解析し解除することが出来るが、セリにはそれが出来ない。
リコは襲ってくる攻撃を身体強化により避けていく。
「さすがに当たりませんか」
セリが言う。
「当たらなければどうと言うことは無いのです、今度はこちらの番なのです」
リコは地面に強力な静電気を這わす。
バチ バチ バチ
ステージに電撃がはじけるがセリはシカとしている。
「フフフ、バレッサの用意してくれたこの靴、たいしたものですね」
「やばいのです。防御魔法を付与した魔獣の革でできた靴なのです。
あれは学園でも作っていないのです」
防御用の魔法道具は学園で開発し作っており、物理攻撃も魔法攻撃も防いでしまう。
「これは、学園の製品を参考にバレッサの開発部にいるマルタさんが作ってくれました」
マルタ叔父さんのことだ。
マリー会長の次男でマックス社長の弟であり、魔力持ちで普段はポーションを作っている。
さすがマックス伯父さんだ、学園の製品を見ただけで作ってしまったようだ。
五つの塊は防御に攻撃にセリの体を中心に動き回わる。
セリは塊に守られながら、リコへの攻撃が続く
リコもよけながら、何かやっているようだ。
「リコ、あと一分よ。何かしないと、採点で負けですよ」
私が声をかけると。
「大丈夫なのです」
何故かリコには余裕があった。
「あと十秒よ」
さらに私が声をかけると。
『ウォーター』
リコがつぶやくと、大量の水が滝のようにセリに襲い掛かった。
セリに見つからなようにかなり上空に巨大なウォーターボールを作っていたのだ。
セリはずぶ濡れになり、魔力の塊も流されてしまう。
『スタティック・イレクトゥリシティー 』
さっきより大量の静電気を流す。
バッチーン
静電気でセリは飛び上がってしまった。
その瞬間
「やめー」
審判の合図で試合は終了した。
「防御魔法具には隙間があるのです、全身ずぶ濡れなら、付けていてもしびれるのです」
防御魔道具と言ってもどこかに隙間が出来る。
ましてやずぶぬれで電気を通しやすくなっていた。
しかし、セリの活躍と濡れた女性の悩ましさで観衆はセリに大きな歓声を送っていた。
「試合に勝って勝負に負けたのです」
リコの顔は晴れなかった。




