110・冒険者ギルドに依頼を出しました
学園は一学期の期末試験も終わり冬休みに入っていた。
「リズ姉、冒険者ギルドに行くのです。学園が忙しくて行けていないのです」
冬休みの初日の朝、屋敷の食堂でリコが言ってくる。
「そうね、ゴランドの森へ行く隧道の入り口を見つけたまではよかったのですが、あれから学園の仕事が忙しくなっちゃいましたからね」
期末試験前に森に行き過ぎて仕事を溜めたせいだ。
食事を終えるとリコと一緒に王都の冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドにはゴランドの森につながっていそうな洞窟の入り口が見つかったことは報告してある。
実際に入って森を見てきたことは報告していない。
「おはようございます」
「おはようなのです」
冒険者ギルドに入り、ギルド支部長がいるか確認すると。
「ええ、ギルド支部長は奥の部屋にいますが、呼んできましょうか」
受付の人にギルド長を呼んできてもらった。
「おお、リズ君とリコ君か。ギルドに来るのは久しぶりだな。どうしたんだ」
「ええ、ちょっと内緒の話があるんですけど」
森のことは受付で話す内容ではない。
「そうか、リコ君が内緒の話ということなら、奥の応接室で聞くことにしよう」
ギルド支部長に連れられて応接室に入る。
「それで内緒の話とは何だい」
「ええ、森で見つけた洞窟の入り口のことなんです」
洞窟の話を切り出す。
「あれだな、奥に深く続いていそうだから調査してほしいと言われたやつか。
あれは王都にも話が言っているはずだが、まだ予算が取れていないので手付かずのはずだが」
「それでですね。これからが内緒なんですけど、あの洞窟、森まで続いていました」
これは言わないと話が進められない。
「そうか、入ってみたか。まあリズ君ならやると思っていたがな」
「ごめんなさい、それであの洞窟はきちんと整備された隧道だったんです。
でも、出口から先が深い森になっていて、ちゃんとした調査隊でないと危ないんです」
「それで、冒険者ギルドで調査をしてもらいたいのかな。
だが、調査隊を誰が依頼する。かなり高額な依頼になるぞ」
「わかっています。依頼料は私が出します。お願いできますか」
森や山の調査依頼は冒険者ギルドには不通に依頼がある。
だが場所によってはお金がかかるのだ。
「そうか、ならば見積もりを出そうじゃないか。
そのためにももう少し詳しく洞窟のことを教えてくれるか」
ギルト支部長から言われ、私の計画を話す。
「まず、森の渕から、洞窟の入り口までの道を整備します。
そして入り口には闇の軍団の対策も含め監視小屋を作ります。
あとは洞窟の出口に森の調査のための拠点の小屋を作りたいのです。
あとは拠点から少しずつ森を調べてもらいたいのです」
私の計画を聞いて。
「洞窟の中は整備されていて馬車でも通れるといったな。
では、その条件で見積もりを取るので明日にでも取りに来てくれるか」
一日で見積もりができるとは優秀なギルドだった。
翌日リコと見積書と冒険者ギルドに取りに行く。
「リズ姉、すごい金額なのです。貯金では足りないと思うのです」
リコの言う通りだ。
見積もりは出口に小屋を建てるところまでだったが、それでも私の貯金が底をついてしまう。
「リコ、監視小屋の人員と森の調査隊のは別予算ですね。
今回のこの計画、もう一度考え直さないと駄目なようです」
森の渕から洞窟の入り口まで昔は道があった。
それを使えば簡単に道ができると思ったが、長い年月で多いかぶさった木々の伐採にかなりの予算がついていた。
そして道を整備しないと、洞窟の先の小屋や森の調査ができないと書かれている。
「それくらいの金額ならバレッサに出させよう。いいかなリズ」
後ろから声がする。
振り返ると、見積書をのぞき込んでいるのは、カルスお爺様だった。
「あっ、お爺様、これは私が個人的にやっていることなので、お金は私が何とかします」
バレッサを巻き込むことは考えていなかった。
「いや、これはバレッサだけではなく、ローズ学園、ひいては王都にもかかわること。
ましてや、バレッサが中心で調査をすれば、後々バレッサが何かと有利だ。
リズ、お金はわしがバックアップする、依頼を頼め」
バレッサの儲けになりそう、そしてお爺様の冒険者魂が燃える。
これは断れなかった。
「ギルド支部長、これでお願いします」
依頼を頼む。ギルド長は久々の大きな仕事に顔がうれしさで歪んでいた。