10・学生食堂のソニアとナル
昼食の時間だ
ソニアはロベルトの留学生と一緒に食事をとるので学生用の食堂にいる。
ナルもヘレン王女と一緒なので学生用だ。
「ソニア、同じテーブルで食べよ」
「はい、ナル。今日はナルがヘレンと一緒なのですね」
ヘレンの護衛のため、ナルとアニスが交代で食事を一緒にする。
入園式の日は、慣れていないので忘れて二人ともリズ達に会うため職員用の部屋に行ってしまったが。
同じテーブルにソニアとナルと、ニア ヘレン ロベルトからのスンとランが一緒に席に着く。
「ねえナル、聞いて、昨日の夕方寮の談話室でアサラのレイラからとんでもないこと聞いちゃった」
すでにソニアは昨日誰にも言わない約束のことは忘れていた。
「なあに、とんでもないことって」
「アスラの付添人って情報諜報部の職員なんだって、それでリコの事が有ってローズ学園に来たって」
「そうなの。そうだとすると、それってチロリナ村の叔父さんのせいね」
「どうしておじさんなの」
「旅の途中で私の生まれた家に寄ったの、家は『魔女の雑貨屋』ってお店なんだけど、魔道具も売っているの、それで、叔父さんが魔道具つくりのもやっているのね」
「ナルの家に行ったんだ」
秘密組織の報告書で知ってはいるが、わざとらしく答えるソニアだった。
「みんなでうちに二か月ほどいたんだけど、その間おじさんがリコから魔道具の作り方を教わっていたのね」
「それが原因なの」
「まだ違うは、それでね、リコに教わってから、叔父さんの作る魔道具の評判がよくなったの」
「良いことじゃないのかな」
「そう、よかったんだけど、叔父さんが看板に『ターニア直伝の魔道具、その力を思い知れ』って書いちゃったのよ」
「でも、もともと『魔女の雑貨屋』はターニアが魔道具の作り方を教えた人が始める店の名前でしょ、別に問題なと思うけど」
「五百年も前の話よ、今では伝授されてる人なんかいないですよ。ただね、叔父さんの魔道具が、本当にいい出来だったの」
「叔父さん才能あったんだ」
「当たり前でしょ、何といっても私の叔父ですから」
「ナルの自慢はいいです。それでその噂が情報諜報部に入って、リコに目を付けたってことかな」
「そういうことだと思うわ」
「これってリコやリズに話した方がいいかな」
「私から話しておくわ、でも気にしない方がいいよ、リコの出生のことはアニスと私は聞いているし、完全に秘密にするつもりはないようだからね。
それにリコが留学生を呼んだのは、リコの知識をみんなに教えることだから、わざわざ調べる必要もないはずよ」
ソニアはナルに気にしないで良いと言われたので気にしなことにした。
「ソニアお姉ちゃん、なんか難しい話してる」
横で聞ていたニアには何のことかわからなかった
「ニアは解らなくていい話だから気にしないでね。それより、ニア授業は大丈夫なの」
ソニアが心配して聞いている。
「大丈夫、ロベルトで中間試験までのことはソニアお姉ちゃんから教わっているから」
「私も大丈夫だよ」
「私も」
スンとランの二人も大丈夫そうだ。
「ソニア、アスラの子たちはメシールの生徒と同じ試験を受けたのでしょ。この子たちは受けなかったの」
「ナルも一緒にいたからわかると思うけど、ロベルトでリコ達が教えていた時に、すでにリコが誰がいいか決めていたみたい。だから試験はやっていないの」
「でもそのせいで、成績順の出席番号が魔法科でニアがビリ、薬学科でもスンとランがビリとビリ2になっているんでしょ」
「大丈夫、中間試験で上位に食い込みますから」
「本当に大丈夫なの、ソニアが教えてんでしょ、確かソニアは一年から三年までずっと薬学科のビリだったはずよ」
「ナルに言われたくないです。ナルも魔法科のビリじゃないですか」
「ナルはビリだったの」
「ヘレン、今のは聞かなかったことにしなさい」
ナルが、ピシリとヘレンに言う。
「わかりました。でもニアは私と一緒に勉強するから、次の試験は二位になりますね」
一位を譲りたくないヘレンだった。
「それから ニア、食事の時にスンとラン以外の友達も連れてきなさい。特にスンとランは寮の同室の子を連れてくることができませんか、 ヘレンの友達が増えそうにないんです」
ソニアはおせっかいで心配性なのだ。
「ソニア、ヘレンのことは気にしなくていいよ。初めから友達については覚悟しているから」
「そうかもしれないけど。ニア スン ラン、ナルがああ言ってますが、学園の良いところは友達が出来るところです。頑張ってヘレンの友達を探しましょう」
友達の大切さを学園で覚えたソニアならではの言葉だ。
もう一度、キャロルやペネロペに会いたいソニアだった。