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1・入園式前の夏休みです

「起きろー、リズー」

王都にあるバレッサの屋敷でアグが叫んでいる。


「うーん、眠いよー、今は夏休みでしょ」

「リズさん、今日は職員会議の日ですよ、早くしないと遅刻しちゃいますよ」

「そうなのです。リコは支度が終わったのです」

慌ててベッドから飛び起き、服を着替える。


色々なことのあった旅は去年の秋で終わった。

それからはローズ学園の教師になる為の準備に追われ、今は入園式まで一月と迫った夏休みの最中だった。


屋敷の朝食の支度はアグがしてくれている。

一年前から教師をしているリコは落ち着いた雰囲気で私の着替えを待っていた。


私たちは朝食をゆっくり食べている。

アグの『遅刻しちゃいますよ』は私を驚かす悪戯だった。


「行ってらっしゃい」

アグに見送られ屋敷からローズ学園に向かう。


バレッサは私の祖母が会長をしている製薬会社の名前だ。

屋敷には私とリコとアグの三人と、魔狼と犬の雑種のシャンで住んでいる。

一緒に旅した馬のポックはバレッサの本社のある都市タクロアの牧場にいる。


バレッサに雇われたお手伝いさんが通いで二人来てくれるし、庭の手入れや大掃除の時は冒険者の見習いに依頼するので、アグは買い出しと料理が担当だ。


屋敷から学園までは歩いていける。

雨の日もレインコートを着ていく。魔獣の素材で作られたコートは軽く濡れず蒸さない。


三年間通ったローズ学園、今年に入ってから教師になる準備のためたびたび来ている。


「リコ、私たちが通った時と随分変わりましたね」

「そうなのです。生徒数が増えたのです。増築を繰り返したのです」

校舎も寮も増やされていた。


学園に入り、職員室へ向かう。

職員室も以前の部屋でなく、増築された校舎にある。


「おはようございます」

「おはようなのです」


すでに教師が何人かいる職員室に挨拶をしながら入った。


全員がそろうと学園長が前に立ち職員会議が始まる。


「それでは臨時の職員会議を始めます。


今年の179回新入生は、アサラとロベルトの留学生もあり、76人という大人数になります。

そこで新しい教師を増やすこととなり、今日は皆さんに紹介するために集まってもらいました。

すでに、準備のため来てくれているので、お会いしているとは思いますが改めて紹介します。


去年から来ていただいていますが、魔法科、リコ:トレイシー 今年から冒険科を兼任してもらいます。

そして、薬学科教師、リズ:トレイシー リズにも冒険科も兼任してもらいます。



薬学科 ドナ:マーリック 

魔法科 エマ:マグナント エマさんも冒険科兼任です。

冒険科 ナタリー:エレンス


それから、教員補佐として、冒険科に アニス ハリス ロメルに来てもらっています。

最後に生活指導係として、シリルさんです」


学園長から名前を呼ばれると、立ち上がり軽く会釈をする。


「全員が当園の卒園者なので、先生方の中には良く知っている人も多いと思います。

協力し合ってよい授業をしていってください。


それから、もう一つ大事なこととして、王族のヘレン:メシールが入園します。

一般の生徒として扱うよう王家の方からも言われていますが、なかなか難しいでしょう。


そこでヘレンの世話係のナルを付き人として一緒に来てもらうことにしました。

ナルはヘレンの父親の従妹であり、この学園の卒園者です。

学園のことはよく知っているので、ヘレンが問題を起こしたときはナルを通じて指導してもらうことにしました」


『うっ すごい。この学園長は学園生時代の私に講師をさせたり、要領の良さは天下一品だ』

心の中で思ってしまう。


なおも学園長の話は続く。


「アサラとロベルトからの留学生は、メシール王国に不慣れです。そこで付き添いで来てくれる人にそのまま寮で一緒に暮らしてもらい、留学生の面倒を見てもらいます」


確かに、これで寮母の確保が出来る。さすが要領のいい学園長だ。


「ロベルトからは、ソニア:ドルゴルが来てくれます。彼女は貴族ですが、ロベルトで子供たちの世話をしていました、頼りにできる人です。

そして、アサラからも付き添いが3人が来てくれます」


ソニアの話は事前に聞いていたが、正式に来てくれるんだ。


「リズ姉、去年までリコが一人で頑張ったのです。今年はリズ姉が頑張る番なのです。そのためにみんなを集めたのです」


ローズ学園は王都が運営している。

教師の依頼は国の頼みでもある。

断ることは原則できないが、それでもみんながそろったのはリコが声をかけたからだろう。


新人教師の顔見世の職員会議が終わったが、これで夏休みに戻れるわけではなかった。

これからの夏休みは準備のため、ほぼ毎日学園に来ることになっている。

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