猿人族
猿人族とはスムースに話が進みます。
混乱しているアンドレは頭を抱えクレアは大はしゃぎ。タチアナはその光景を見てびっくりしていた。
「勝ち負けじゃないんだよアンドレ、頼みを聞いてくれ!俺はアーネストだ」
「タチアナはこのアーネストに負けたのか!」
「負けてはいないが、彼に部族を纏めて貰う事を頼んだ」
「なんだと、纏めるだと、早く教えろ!」
驚愕の表情を浮かべるアンドレはタチアナとアーネストの話しを聞くと納得したが、ある条件を出してきた。
「俺たち猿人族は血の結束を誇り頭も良い、だが狼族に比べるとのんびりしていて勤勉では無いのだ。皆に知恵と言うかヤル気を授けてくれ!」
猿人族は温和で頭が良く理解度も高い。だがしかし、のんびりした性格からだろうか、生活が安定して変化を望まないのか、狼族に比べ野生に溶け込んだ生活を好んでいるようだ。そして出された要求は数日で出来る事では無かった、逆に途方もない時間が必要だ。悩んだアーネストはもちろん努力するとは答えたが解決策が思いつかなかった。
「協力は出来ると思うが時間が必要だ。今は無理だ」
話を聞いたクレアも同意見だ。ここは一つ精霊女王の出番なのだろうと2人の答えはそこに至る。
「アーネスト、アーリーに聞いて対策するしか無いね。これは結構難しい問題よ」
「それと気になったのだが、狼族に比べ何と言うか田舎者臭いよね」
「そうね、思考的に古臭い感じね。単純だし女の子を侍らかす態度というかドヤ顔が嫌い」
アーネストもクレアも気がついたのは、虚勢を張る態度が古臭いのだ。女をそばに置き威厳を保つ、そんな前時代的な古いやり方を感じたのだ。密かにモジュールを介して会話していた。
「おい、オッサンお前って中折れなんだな!」
「クソガキ、ふざけるな!」
「きゃはは」
ヴァンはまた予言を使ったのか毒舌を炸裂させる。だが事実なのだろうか、女の子たちに笑われ怒ったアンドレだったが、流石に2才児のヴァンを殴ろうとはしなかった。
「ゴン!いってー」
「ヴァン!口が悪すぎ!」
「ワハハ、母親は強しだな」
流石にワルワラが雷を落とすとアンドレは笑っていた。子供に対して寛容らしく優しい一面を見た瞬間だった。
「アンドレさんごめんなさい」
「ああいいよ口は悪いが所詮子供だ。なぁアーネスト、猫族とは一筋縄にはいかんぞ、いま全面戦争状態だ」
「そうか、それなら彼女の力を借りるか、ミーシャ姿を現してくれないか」
「ニャ!」
アンドレ「わわわ、猫族じゃないか!」
タチアナ「やはり、ネコの匂いがしたのは気のせいじゃなかったのか」
護衛「おお、可愛いなその服は」
スッと認識阻害膜を下ろしメイド服姿のミーシャが姿を表すと、アンドレは起き上がり腕を組み少し不機嫌になりミーシャを睨んでいる。そして同じくタチアナもビックリしていたがアーネストの部下だと冷静に判断し静かに様子を伺っていた。だが護衛の男は可愛らしいメイド服に食い付いていた・・。
「今回はクレア様の護衛ニャ!それにしてもきれいなシルバーの毛並みニャ」
「うーん、猫族に褒められると微妙な感覚だな・・・俺が知っているネコ族はな」
アンドレから聞いた猫族の特徴は、プライドが高く集団で生活する割には、束縛や、強制される事を極端に嫌い基本自由に生きているそうだ。しかも縄張り意識が強いが適当らしく狩場を巡って数百年以上争っていた。ただ、族長に選ばれた者たちは比較的まともで話は通じる筈だと教えてくれた。
「クーンのネコ族の縄張り意識は家の中だけニャ!多種族には迷惑をかけないニャ」
護衛「俺が知っているネコ族は、狩場で出会っても好き勝手に獲物をとって境界線を守ろうとしない」
争いの原因は簡単だ。猿人族が取りすぎないように管理している狩場に好き勝手に入ってきて、取るだけ取って荒らすのだ。それに注意しても高圧的で攻撃してくるのだ。
「それは野良猫と一緒ニャ!無責任な自由ニャ、野放図野良ニャ!」
アンドレ「君はミーシャと言ったな、同族に対し辛辣な意見を話すが君は違うのか」
「アンドレ様、私はアーリー様の配下に選ばれ、自分の仕事に誇りを持っているニャ、無闇に争わないニャ〜」
「君の考えは根本的に違うのか・・アイツらは野良猫なのか」
「アンドレ、クーンの住民たちは無駄な争いもしないし、他種族同士が助け合って生活している」
「成程、形成している社会構造が根本から違うという事か・・」
アンドレもタチアナもただ単に敵対しているだけでは無かった。事ある毎に話し合い妥協点を探すのだが、偏屈なのかただ単に気に食わないのか反抗するものが現れ、最後は話し合いがご破算になるらしい。
「分かったニャ、野良は〆るに限るニャ!」
「ミーシャ族長を潰さずに味方に引き入れたい、頼んでいいか」
「勿論ニャー、任せるニャ〜」
「アーネスト、一つ聞くがミーシャは強いのか?」
「うん、相当強いよ。けど試さないでくれよ、ここでの揉め事だけは避けたい」
「試したい気持ちはあるが、ここは一つ俺に変わって誰か見てこい」
「はっ!アンドレ様、その大役わたくしセオドアが引き受けました!」
案内してくれたゴリことセオドアが名乗りを上げた。こうしてまた一人交渉団として加わることになる。そしてネコ族に対し方針が決まったところで街中の様子を見に行くことになった。
「猿人族はコロニーを形成して数千人単位で生活している」
族長の屋敷を出て中心部を目指し丘を降りると、最初に目についたのは大きな木の上に無数の小屋が立っていた。街中に向かうとその様相はだんだん変わり、森の中なので間隔は広いが普通のアパートや一軒家が立ち並んではいた。
「なるほど、一言で片付けるなら自然と共存して生活しているか・・」
「ああ、一般人は静かな所を好むからな、中心部の建物に住んでいるのは商人や役人のたぐいが多いな」
中心部の大きな広場を起点として木造5階建てのアパートメントが放射状に立ち並んでいた。森の中と比べると異質な場所に思える。
「この中心部は朝は市場、昼間は露店が並び、時には集会場として使っている」
「結構賑わっているな、今の時間は露店なんだな」
その広場には露店が並び、美味しそうなカットフルーツや串焼きなど軽食が売っている。因みにアパートメントの一階部分は洋服店、靴屋、雑貨屋などが入り、生活必需品から工具まで何でもそろうと教えてくれた。
「これでも大半の連中は狩りや農作業に出ているので少ないほうだ」
猿人族は狩の他に離れた山間部で農業、酪農や、畜養なども行っていて、基本皆働いているそうだ。だが、子供達の姿が見えなかった。疑問に思い聞いてみると働き手として使ってるそうだ。教育に関しては各家庭で教えるのが普通だと言われた。
「取り合えず教育の重要性を教えるのが先だな、この様子じゃ学校は無さそうだ」
「狼族も教育に関しては各家庭に任せてある。学校を作っても通わせる事が出来るのは極一部だ」
この星はまだ教育を重視せず子供を働き手として使っていた。アーネストの前に更なる難関が立ちはだかろうとしていた。そしてクーンに帰る準備ができたのだろう、いきなり連絡が入った。
<陛下、燃料補給が終りました。いつでもクーンに戻れます。それと超長距離レーダーに不穏な動きをする船が観測されました>
「ディスティアの追っ手かな」
<はい、小型船ですが徐々に近づいています。探査船と思われます>
<アーネスト、ラインの猛者を連れてきたがどうする?>
遅れて到着したラッセルがラインの特殊部隊の連中を引き連れて来たらしい。奴らを残していくかトンボ返りするか悩んでいると・・。
<陛下!お久しぶりです!>
相変わらず暑っ苦しい顔が画面いっぱいに映し出されているのだった。
「フォウルナート、悪いが一時撤退だ。ディスティアの探査船が近づいてきている」
<うーん、それはマズイですね。わかりました我らは一旦報告のためラインに引き上げます>
「うん、そうしてくれないか。必要になったら呼ぶし、多分必要になるから」
<はっ!その日をお待ちしています>
アーネストの予想に反し簡単に諦めてくれた。ハミングバードだけなら隠蔽シートで誤魔化せるがエアータンク部隊は目立って仕方がない。ホッと胸をなでおろすアーネストだった・・。
「タチアナ、アンドレ、ディスティアの連中が近づいてきた。悪いが一旦引き上げるぞ、俺たちここにいたら戦争が起きる」
「分かりました。アーネスト様、この問題の解決をお願いします」
「アーネスト、頼んだぞこの星の獣人が殺されるのは俺は望んでいない」
「わかりました」
アンドレもタチアナも未来を憂いているのだろう。アーネスに全権委任してまでもこの星の獣人達の事を守って欲しいと思っていた・・・。
「アーネスト様、ジャガーを連れて来て下さいニャ、ミーシャは下準備をするニャ」
「分かった、ハミングを送り返すから」
「俺は残るぜ!」
「ヴァン、陛下と一緒に帰りなさい!」
ヴァンフリートはいきなり残るとドヤ顔で言い出した。何故か身体が小さいだけでとても2歳児とは思えない。アーリーが帯同を許した理由を考えたが思い当たらず、アーネストは頭を抱えていた・・。
「えっ?2才児を一人で送り返すのか・・」
「だから、カーチャンと一緒に残るって!下手な護衛より強いぜ!」」
「うん、わかった。ワルワラの護衛を頼んで良いかな」
この意識だと諦め無さそうだし、そもそもアーリーが送り出すと言うことはなにか特殊な能力があるのだろう。ここは一つヴァンフリートに任せようと判断したアーネストだった・・。
「よし!頑張るわ」
そしてミーシャ、ワルワラ、ヴァンフリートが残り、事前協議を進める下準備を任せることにした。2時間もすれば屈強なジャガーが送り込まれる筈だ。アーネストはそう判断しクーンに戻って行くのだった・・・。
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