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ラケールの秘密(下)

続きです!この話で一応完結します。なので今後の扱いは未定です。

アーヴィン王国に2年ぶりに戻ったラケールは、国王ユーリーの元に帰着報告を行うために王宮を訪れていた。だがその表情はまたあの”アイス”に戻っていたのだった。


「ユーリー陛下、只今戻りました」


「おお、長らくの任務ご苦労さん。少しは休んだらどうだ」


謁見室の玉座に座る国王ユーリーは、赤黒い髪を持ち髭を蓄え、良くも悪くも普通の王様だ。その代々続いたアライス家は名門で国民からの信頼も厚く、人気もそれなりに高い。政情も安定していることから結構長く君臨していた。逆にその事がラケールを苦しめる結果となったのは皮肉でしか無い。


「はい、少し休暇をいただきたいと思います」


「そうか、少しは落ち着いたのか」


ユーリーは息子が犯した罪を分かっていたが遠回しに心情を聞いてきた。それは王家を出たあの日以来、人前では能面のような無表情に変わった彼女を見て心配してのことだった。


「申し上げます。心情的には落ち着いておりますし、何ら問題はありません」


「ふむ、そうかわかった下がって良いぞ」


「失礼しますユーリー陛下」


「チョット待たれよ、近くに参られよ」


会話中、何か考えていたのだろうか、後姿を見たユーリーは彼女を引き止めた。すると能面の表情のままゆっくりとユーリーに近づくが、3mほど手前でピタッりと動きが止まった。


「アマンシオは既に死んでいる。表向きには長期入院中のままだがな」


犯した相手が死んだと聞き、一瞬ピクッと顔がひきつる彼女は”長期入院中”の言葉を聞きそれが何を意味するのか流石に即座には理解できてなかった。


「そうですか、それはお気の毒にご冥福を申し上げます」


「あの時の”嘘”が彼を助長させた、アイツは”病気”だったんだ。これ以上は言わない分かってくれ。そして許してくれ」


「いえ、今更私が誘った事実は変えられませんので許す事など何もありません。お気になさらず」


無表情に返答をすると彼女は踵を返し静かに部屋を出ていくのだった・・。


ーー


「ラケール!」


王宮の正門を出たラケールは懐かしい聞き覚えのある声を聞くと、無表情だった彼女から満面の笑みが溢れ、嬉しさ溢れ出る可愛らしい女の子に戻るのだった。


「ベルナール!」


ラケールが嬉しそうに呼ぶ相手ベルナールは、父親譲りのひとつ上の金髪イケメン青年だ。現在の彼は父ジョルディから家督を譲られ、若手上位貴族として政務に励んでいる。


「迎えに来たよ。さぁ、シャトルに乗って!」


「うん!」


2人は仲良くシャトルに乗りベルナールの家に向かった。因みにラケールは王家を外れたので帰る場所は無く自分の家もない状態だ。


「ラケール入って、父さんが待っている」


「いいの、本当に良いの」


「もちろんだよ、君をずっと待っていたんだ」


「本当、嬉しいよ」


家の玄関をくぐり、不安なのかラケールは今にも泣き出しそうな顔をしていたが、間髪いれずにベルナールは彼女を優しく抱きしめた。


「ラケール、もう絶対離さない!」


「嗚呼、ありがとうベル。嬉しくて涙が出てきちゃった」


ラケールがやっと幸せを掴んだ瞬間だった。同時に彼女はベルナールの全てを受け入れた瞬間でもあった。


「お父様、ラケールを娶りたいと思います」


「既に2人とも決めているのだろ、なぁラケール、結婚するからには理不尽な誹謗中傷に対して強く出ても良いんだぞ」


「はい、もう王家の為に我慢しません。父オバーンには報告だけは致します」


「オバーン様も兄上には逆らえないのだよ、分かってやってくれ」


「勿論です」


客間に移動した2人はベルナールの父であるジョルディに結婚承諾を無事得ることが出来た。ラケールはあの一件以来、淫乱ラケールと呼ばれ公務で姿を表せば誹謗中傷の的になっていた。彼女は耐えきれず王位を捨て一般人として生活していので、父であるオーバンには事後報告を行う程度で十分なのだ。


「今日はこれからどうするの?」


「ホテルを予約してあるからそこに向かうわ。あまり人前に出たくないの」


承諾を得た二人はいまベルナールの部屋で寛いでいる。しかしこのままお泊りすることは流石にできないので、夕方に差し掛かればホテルに送るしか無かったのだ。


「ラケール聞いてくれ。現在王位継承を巡って熾烈な争いが起きているんだ。病気で長期療養中のアマンシオは論外だが、上二人が争っている」


「アマンシオは死んでると陛下が教えてくれました。長期入院は嘘です、多分暗殺されました」


「なんだと、本当だとしたらスキャンダルじゃないか」


「ええ、陛下の言葉を思い返して考えましたが、女癖が悪かったようですね(冷」


「ごめんラケール、思い出させたね」


アマンシオの話題が出た途端、あの無表情なアイスに切り替わり、異変を感じたベルナールは彼女を優しく抱擁するのだった。


「あり・・が・とう、んっ・・」


嫌な記憶が蘇ったのか、たどたどしく喋るラケールは少し震えていた。ベルナールは額を合わせジッと彼女を見つめ、そしてゆっくりとキスをするのだった・・。


ーー


「アイツはアマンシオ王子を堕落させた淫乱王女様だぜ!」


「ああ、淫乱ラケールか久しぶりに見たな動画を拡散しようぜ」


翌朝、ホテルを出たラケールは外務省に向かっていた。だがその途中、彼女を見つけた庶民からいきなり指を刺され馬鹿にされスマホで動画や写真を取られる羽目に陥った。しかし振り切れている彼女は大声で言い返した!


「あんたね、近親者のアイツなんか誘うわけないでしょ!戒律で婚姻すら結べないのよ」


「でもやりたくて誘ったんだろ〜」


「誘うなら相手を選ぶわ!私にだって好きな人がちゃんといるのよ、彼に私の初めてを貰って欲しかったのに!」


「WWW、初めて、キター!」


「それって、もしかしてそれが真実なの?」


「そうよ!私の方が被害者よ!こんな汚れた身体にしたのはアマンシオよ!」


ラケールは今まで王家を守るため沈黙を守っていたが遂に真実を語り始め、それがそのまま動画発信されると一気に拡散。すると今までアマンシオに手篭めにされた被害者達が名乗りを挙げ一気に形勢逆転。批判の鉾先が王家に向けられる事になるのだった。


「陛下、ラケールの暴露動画が拡散され、大変な事になっています」


「わかっている、アマンシオは病死したと発表しろ、それと週刊誌には自殺と情報を流せ!不名誉だがこれくらいの責任は取って貰わないと」


庶民は憶測を呼ぶ噂話しが大好きだ、それも王家の不祥事なら尚のことだ。流石に病死は都合が良すぎて疑問を持たれるが、自殺したと噂を流せば辻褄が合い納得する筈だ。


「わかりました。司法解剖の結果を一部漏洩させましょう。致死量の”睡眠薬”が検出されてますので、国民は責任を取っての自死と思うでしょう」


「まかせるよ、これなら暗殺でも自死でも言い訳がたつからな」


王家を繁栄させるのは色々と大変なのだ。裏では足の引っ張り合いが行われ、下手に証拠を残せないのだ。


「これでやっとアマンシオ様の葬儀が出来ます」


「慎ましくお願いするよ」


「心中お察しします」


因みにアマンシオは、ラケールの件で味を占め、侍女、一般人など数人の女性、それも処女ばかりを狙い乱暴を繰り返していた。何度か注意をしたが1ヶ月も経つと同じことを繰り返しユーリーは頭を痛めていた。だが、誤魔化すことが限界に近づいたある日、精神鑑定を行うと、王族専属医者からとんでもない結果報告が舞い込んだのだ。


「アマンシオ様は重度の精神疾患です。現在、相手が嫌がることに興奮を覚え欲情、処女の印を征服の証と捉えています。このままですと残虐性が増し猟奇的殺人を犯す可能性が高くなります」


「なんだと、そんな状態なのか!治療はできないのか!」


「もっと早く気がつけば改善の余地はありましたが、既に手遅れと思われます。早めに行動抑制を行った方がよろしいかと」


「腐ってもアイツは第3王子だぞ!」


断言する医者に腹を立てたユーリーだが、何か知っているのか冷静に聞いていた秘書官が人払いを行い、執務室には医者と秘書官だけになった。


秘書官「陛下、詳細な報告は控えていましたが、アマンシオ王子の残虐性が増している兆候が現れています」


「なんだ、申してみよ」


ショッキングな内容で報告を控えていたのだろう。苦しい表情になった秘書官は、言葉を選びながらアマンシオの異常な行動について説明を始めた。


「暴行中に・・相手の首を締め上げて・・・失神させているのです」


「なんだと、そんな事をしていたらいつかは死ぬぞ」


医師「へ、陛下!このままエスカレートすれば確実に死者が出ます!」


アマンシオの残虐性は違う方向へと向かい始めていた。聞いていた医師は間違いなくエスカレートし、いつかは確実に死人が出ると断言。ユーリーは苦渋の決断をするしか無かった・・。


「アマンシオを即刻幽閉しろ!、病気療養中と発表だ!」


「承知しました」


そして自室に幽閉され2週間ほど大人しくしていたが、それは警備が手薄になる機会を狙っていただけだった。人々が寝静まる頃、窓から抜け出し繁華街を目指したアマンシオは少女を物色し、ナイフで脅し乱暴を働こうとしたが・・。


「いやー!誰か助けて!」


「黙れ、喋ると殺すぞ!」


「いや、いやー、ギャー!」


そして頑なに嫌がった女の子はがむしゃらに暴れ始め、抑え込もうとしたが誤って急所を刺してしまいそのまま死んだ。流石に事件は表面化しなかったが更生は無理と判断したユーリーは暗殺命令を出したのだった・・・。


ーー


うす暗いベッドの上では、今まさに結ばれようとしている重なり合った2人がいた。


「ラケール、行くよ」


「うんベル、優しくお願い」


長期休暇を貰ったラケールはベルナールに誘われ、南半球のスキーリゾート施設に休息と観光がてら訪れていた。昼間はバックカントリーに出かけ新雪を味わい尽くし、夜はクリスタルガラスのような一面の氷で覆われたレストランで食事を楽しみ、食後は幻想的なナイトイルミネートを満喫しながら熱いキスを交わした。そしてホテルの部屋に入るなり、今まで我慢していた二人はお互いを求めるように抱きしめ、深くキスをするとそのままベッドに縺れ込んだのだ・・。


「愛しているよラケール」


「ああ、やっと、やっと貴方に抱かれた・・・ンッ、嬉しいよ・・」


結ばれた二人は抱きしめ合ったまま動く事はなかった。嬉しさの余りラケールは涙を流し感傷に浸り、ベルナールもまた彼女に対し優しく接し、感動的な夜は更けていくのだった・・。


「ラケールおはよう」


「んっ、おはようベル」


感動の夜を過ごした二人は生まれたままの格好だ。ラケールは恥ずかしそうにベルナールにピッタリ寄り添い、昨日の余韻がまだ残っているのかとても幸せそうだった。そして暫くのあいだ抱き合っていたが、流石に起き上がり支度を済ませ、経済ニュースをチェックしようとタブレットを開くと速報が流れていた・・・。


<<アマンシオ第三王子自殺。昨日病死と発表されたが昨夜正式に自死と訂正が入る>>


「ラケール・・」


「うふふ、貴方と結ばれた夜に、アイツ、ゴミが死んだ速報って最高の朝だわ」


「もう気にしてないんだね」


「勿論よ、大好きな貴方に抱かれたのよ、もうアイツのことなんかどうでも良いわ。ねぇベル抱いて」


「えっ、ラケール」


にっこり微笑むラケールはベルナールに抱きつくと、艶めかしい表情に変わり求めてきた。


「もう最高に嬉しくて、嬉しくて、もう我慢できないの・・」


昨晩とは違い野獣のような目に変わったラケールはこの後ベルナールを激しく求めると昨日とは違う歓喜の声を上げ、まるで別人に変わったかのように豹変した。そう、今まで抑えてきた全てが開放された瞬間だった。


「もう、これからは我慢しないわ!」


「ラケール、変わり過ぎだよ」


「うふふ、あー、自由って素晴らしいわ!」


性格が豹変したラケールさん、この事で彼女の人生は大きく岐路を迎えるのだった・・・。


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