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族長タチアナ

狼族の族長タチアナと出会います

クーンに破損の激しい戦艦を戻す指示を出したアーネストは数名の部下を引き連れシャトルに乗り、アロルドの後追い族長タチアナが待つ街の中心部に向かっていった。


「文化レベルは産業革命よりもっと後の時代だな」


石作の城壁に併設された大きな門を潜り抜け見えてきたのは中世の時代、日本で言うなら鎌倉か江戸時代のような風景だった。ロバや馬が荷馬車を引き、子供たちが走りまわり、その服装は布一枚だが汚い訳ではなかった。シャトルに興味があるようだが警備隊長のアロルドが引き連れていたのでジッと大人しく見ているだけだった。


「陛下、あの煙は薪を燃料として燃やしているのでしょうか。クーンの片田舎でも見ない光景です」


周りを見渡すと家のあちらこちらの煙突から煙が上がっていた。何かを作っているのか時折美味しそうな匂いが流れてくる。アロルドはゆっくり馬を進め何度か城門を潜り抜けると、広い敷地に馬を止めこちらにやってきた。どうやらここから徒歩で向かうらしい。シャトルのドアの前で仁王立ちをしていた。


「ここから歩くのだな」


「ああ、そうだ。タチアナ様には先に伝えてあるからそのまま合うことになるだろう」


「わかった」


そしてアロルドを先頭に城の中に入る。予想はしていたがクーン城と比べ無骨な作りだ。窓ガラスは存在して無いのか明り取りは空洞で室内はうす暗い。照明はろうそくと松明が頼りだ。


「ガラスは無いのか?ここは薄暗いな」


「ここは戦いを想定してガラスは使われてない。そもそも貴重品だからな」


アロルドに連れられそのまま客間に入ると、そこは意外に明るく、歪んだガラスの先にはきれいな庭園がみえた。


「おお、ここは別世界だな。ちゃんとガラスはあるんだ」


「こちらで待っててくれ」


少し経つと長のタチアナが屈強な護衛とともに部屋に入ってきた。彼女を一言で表現するならアマゾネスだ。薄い小麦色の肌色、大きく尖った耳、屈強な筋肉、暴力的な双丘を革と布で一応は隠してはいたがその格好はやっぱ半裸だ!


「私がタチアナだ、貴方が支配者で王のアーネストか?」


「はじめましてタチアナ様、私はアーネストと申します。王は間違いないが、完全なる支配者は女王のアーリーだ」


「そうか、アンタを倒せば私がNo.2って事だな」


眼光が鋭くなり即座に戦う雰囲気を見せるタチアナ。ここでは力が全ての順位を決めるらしい。


「ふむ、力で全てが決まるのか、何とも野蛮だな」


「ここじゃ力が全てを決めるんだよ!」


「陛下、お下がりください。我らが相手をします!」


「チョット待て、もう少し話をしたい」


「ハッ、畏まりました」


アーネストは部下を下がらせ、普段使うことがない威圧を試すことにした。


「それじゃ、俺の力を見せてやるよ」


アーネストはタチアナに向けて腕を伸ばす。するとブンっと空気が揺れ威圧を発動。異常を感じた護衛がピクリと反応し剣に手を掛け臨戦態勢に入ったが、スッと彼女の腕が横に伸び制止した。


「ウグッ!何だこの力は!」


タチアナは強烈な威圧のプレッシャーに耐えていたが、額には脂汗が滲み出て凄く苦しそうだ。もし戦ったとしても筋肉が強張り思うように動けず、アーネストに大敗してしまうのは目に見えていた。


「俺の住む星、クーンではこの威圧など必要ない。力は重要だが同じく”知”も重要なんでね。腕っぷしで全てが決まることはない」


「クッソ、お前のほうが強いということか!」


「それじゃ俺が勝てば狼族の長の地位が手に入るということか。こりゃ簡単でいいな」


「無礼だ、若造!」


威圧に晒されてない護衛がアーネストに切りかかり、大振りの剣を振りかぶったが、ダッシュを決め懐に入ると顎を掌打で打ち、のけぞった瞬間、後ろ回し蹴りで吹き飛ばした。


「全く、素手相手に剣なんか使うなよ」


「な、なんて威力なの、見た目と違ってどんな脚力持っるのよ!」


護衛の狼族はアーネストより大きな立派な身体を持っていた。しかし蹴られ後ろの壁まで吹っ飛び失神しているのだ。


「ああこれね、スピードブーツと言ってな蹴りの威力が増すんだよ。いい加減諦めてくれないかタチアナ、争うつもりはない!」


アーネストは更に威圧の威力を上げ、晒されたタチアナは息ができないのかパクパクと口を開けていた。


「わ、わかった。・・・争いはやめる」


降参すると明言すると後々面倒なのだろう、息も絶え絶えのタチアナはアーネストの要望に答えるのだった・・・。


「うん、それが良いよ、ほら俺って一応”客人”だろお茶くらい飲ませてくれないか?」


タチアナ「・・・(呆」


護衛「ハッ?」


副官「あはは」


図太いというか斜め上を行くのかいうか、アーネストは微笑みながら冗談を飛ばした。まぁ、結果的にはこの行いが親睦を深める事になるのだった。


ーー


警備兵「んっ?鳥か?それにしても騒がしいな」


キョ〜、キョキョキョ、キョーと大空から小鳥のさえずりのような鳴き声が響き渡っていた。少し経つと黒い影が見え始めたがその速度がめちゃくちゃ早かった。


「アーネスト陛下のマーカーはあの城の内部から発信されています」


ウラッツェンが高度を下げながら指差すのは、勿論石作の城の方角だ。高速船ハミングバードはジャンプして30分もかからず到着。エルフォードにコアを下ろしアーネストの下を訪れようとしていた。


ワルワラ「ウラン、本当に小鳥のさえずりのような音がするのね!けどチョット音量が大きいかな?」


三人はヘッドセットを付けていたが、ワルワラはそれでも煩いのか更に手を当てて音を嫌っていた。


クレア「面白いわね、私が操縦するとこんなに綺麗な音出ないのよね〜」


ヴァンフリート「あ゛ー、最初は良かったけどずっと鳴かれると苦痛だわ!」


ウラッツェン「うーん、音量が問題か・・改善しようかな」


あくまでもめげずに鳴き声にこだわるウラッツェンだった。そして城の上空1000m程の高度まで降下してホバーリングをしながら下の様子を伺うと、大勢の護衛が火縄銃を構え今にも撃ちそうな姿がモニターに映し出された。


ヴァンフリート「あのね、この速度のまま降下すると間違いなく撃たれるよ」


ドヤ顔のヴァン、予言の力を使って未来予想しているらしい・・・。


ウラッツェン「わわわ、本当なの」


ワルワラ「それじゃ私が先に降りて説得します!」


ワルワラは手早く飛行カイトの準備を始めた。そう、軍医にジョブチェンジした際に脱出訓練で使い方をマスターしていたのだ。そして装備品を装着し終わった彼女はハッチを開け、大空に飛び出していったのだ。


「なんだ?何か降りてくるぞ!それにしてもおっきな鳥だな」


「隊長、撃ちますか?不審者ですよ」


「まぁ待て少し様子を見よう、先程の客人の連れだったら大変なことになる」


「みなさ~ん、撃たないでね〜」


警備兵達は降りてくる飛行カイトを眺めながらずっと狙いを定め緊張した時が流れていたが、ワルワラの可愛らしい声が響くとキョトンと拍子抜けしたのだった。そして降下してきたカイトはエアブレーキを掛けながら反重力ブーツを使いピョコンと警備兵の前に着地するのだった・・。


「ぷっは~」


「か、かわいい」


「絶世の美人だ!シルバーとミルキーホワイト。。。た、堪らん」


ヘルメットを脱いだワルワラをひと目見た警備兵全員が釘付けになっていた。中には興奮してハァハァ息遣いが荒くなる者まで出るほどだ。この部族の美的感覚がおかしいのか、それとも犬族とのミックスは美人に見えるのかよく分からんが、とりあえず人気者確定のようである。


「皆さん聞いてますか?今からおっきな鳥さんが降りてくるので撃たないでね!」


「ウンウン、撃たない、撃たないよ、ねぇ名前は?オジサンに教えてくれるかな」


「ワルワラよ!えへ!」


その、今まで見られたことのない羨望の眼差し?エロい目線?に晒されているワルワラは何か感じ取ったのか。首を傾げ、可愛らしいポーズを取り名前を述べると大変なことになった。


「お、お、俺と結婚してくれ!」


「と、とりあえずお友達から始めませんか!」


「俺はワルワラちゃんと結婚したら長になるんだ!」


いきなりの求婚、お友達登録?わけのわからないフラグを立てる者など、現場は騒然となり。ハミングバードは完全に放置されていた・・・。


「おっちゃん達、発情すんなよ。キモいわ!」


「なんだと、子供のくせに!」


降りてきたヴァンフリートはワルワラを取り囲んでいる男たちの足の合間をくぐり抜け、下から現れると同時に毒舌を言い放った。すると怒った一人が殴ろうとするが、予言の力が発動したのかヒョイヒョイと受け流していた。


ヴァン「おっと、危ない危ない、ほらよっと」


兵士A「ボコン!ウギャ!テメー!」


兵士B「ウゴォ!、クッソ何しやがる殺すぞ!」


兵士C「それは俺のセリフだ!」


受け流したパンチが同僚の股間を直撃、すると怒った男が殴り返し吹き飛ばされ今度は頭が激突し怒った相手が殴った奴を殴り、小さな事で始まった小競り合いが大乱闘に発展。そしてヴァンフリートはワルワラの手を引きその場を逃げ出したのだった。


クレア「ありゃ、血の気の多い人達ですね」


ウラッツェン「ワルワラちゃん大丈夫?」


ヴァンフリート「ほんとアホばっかだな、野蛮人は嫌いだ」


ワルワラ「コラ!ヴァン、あなたが火を付けたんでしょ」


「とーちゃん、カーチャンすごい人気だったよ。嫁になってくれとか言ってたわ」


「ウラン、凄かったのよ。みんないきなりプロポーズしてくるんだもん」


「ほ、ほんと、そんなに?」


「うん!けど私はウランが一番だからね!」


ワルワラは面白かったのか笑いながらピッタリ寄り添い、あなたが一番と言い放ち、満面の笑みを振りまいていた。ウラッツェンも肩を抱きそれに答えていた。


「おい!お前が恋人なのか!」


喧嘩の最中に気がついた一人がウラッツェンに食って掛かってきた。


「僕の可愛いお嫁さんなんですけど」


「はっ! なんだと!決闘じゃ!奪い取るぞ!」


クレア「もう、本当に野蛮な人たちね。お座り!」


「はい!」


引いて見ていたクレアが割り込み、食って掛かってきた兵士に”お座り”を命令。するとシュバッとクレアの目の前にスライディングをして土下座を決め平伏していた。


「プップ、ここの獣人って簡単に操れるわね」


アーネスト「あはは、クレア遊んでいるでしょ」


タチアナ「すごいわね、特殊能力かしら」


隊長「おい、族長様のお成りだ。みんな整列!」


騒ぎを聞きつけたアーネストとタチアナが現れた。流石に族長が出てくると喧嘩を止め、綺麗に整列を始めるのだった。

宜しければブクマ評価お願いします。

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