クーン艦隊敗走。
クーン艦隊絶体絶命の危機
ヴァレリアが爆沈した後、エリアスは全速力で離脱を開始した。ジャンプアウトすれば今回の戦闘が終了と思われたが、アーネストの艦隊の前方に60隻程の国籍不明の艦隊がいきなり出現!殲滅戦を開始するのだった・・・。
ーー
アーブラハム艦隊、ヴァレリア破壊直後。
<陛下、緊急離脱開始します。援護射撃お願いします!>
「ラッセル、悪いがエリアスに援護射撃を頼む。俺はこのまま大きく旋回して後方から追い上げ援護する。エリアスケツは任せろ急いで逃げるんだ」
<了解!>
<アーネスト、それ以外にスクランブル対応の戦艦が前方から迫ってきてるぞ>
アーネストの艦隊は惑星の影で探知できないが、ラッセルの艦隊は迫りくる増援部隊の姿を確認していた、リンクしているので作戦マップ上には表示されている。
「分かってるから俺が殿を担当する。君もジャンプシーケンスが完了したら引き上げろよ」
<ふん、エリアスを見送るまでは残るから心配するな、悪いが頼んだアーネスト>
「おう!」
エリアス達アーブラハム艦隊を追っていたディスティア艦隊は、緊急転回を行い現在クーン艦隊の進路を塞ぐような形の陣形を取っていた。
「これでエリアスは逃げれたな、だが、あの中を突っ切るのか」
「陛下、浮遊砲台の方に逃げますか、それとも突っ切りますか。判断する時間はまだあります」
作戦モニターを眺めるアーネストは苦渋の決断をしなければならなかった。いま右に回頭して浮遊砲台に舵を取れば戦艦に追われることはないが、強力な素粒子砲の雨を浴びることになる。進路を塞ぐ艦隊に突っ込めばそれはそれで、大量の砲撃の中を突き進むことになり、引くも地獄、押すも地獄の様な状態だ。
「ふん、このまま突っ込んでいくしか道がないだろ!全速前進だ!」
アーネストが決断したその時、ディスティアの増援部隊が惑星の影から姿を現した。ラッセルとエリアスが通過した後だったのは幸いだった。
「陛下、進行方向に戦艦多数確認、そ、その数・・・60隻!」
「クッソ、どこに隠れていたんだ、緊急回避だ、後方の艦隊の中心上空を通り抜けろ」
突然姿を表したのはアーヴィン宇宙軍だ。ディスティアの観測宇宙ステーションから正確な座標が届いたのだろう、退路を断つ為に間隔を広げ包囲する形を取りつつ合った。その数60隻だ。まともにやりあえば全滅だ。アーネストは比較的堅牢な船底で砲撃を受けながら本星の反対側に逃げるのが唯一生存率を高める道と考えたが・・・。
「陛下、本星地表に高エネルギー反応確認、防衛用の素粒子砲と思われます。そ、それと進路上に高速で接近する砲弾を確認。」
さすがディスティアだ。たった二日間で防衛用の素粒子砲を配備したようだ。悪いことに旧型の砲弾が放たれ高速で向かってきていた。
「なるほど、浮遊砲台に追い詰める作戦だな、旋回は中止そのまま待機。ジャンプは可能か」
「はい可能ですが、ほとんど進路を塞がれ反対方向のみです。それと妨害電波が強く本星から距離を取らないと阻害される可能性があります」
「わかった、本星と距離を取るためこのままのコースを進め、待ち伏せしている艦隊を盾に使え」
「了解」
少しスライドしながら転進したクーン艦隊はアーヴィン軍の砲撃から逃れるには丁度いい方向を向いていた。そのまま前進すればエリアスを追跡していた艦隊が盾になるのだ。
「陛下、間もなく射程に入ります」
そして後方から来る増援部隊に追われながら、待ち伏せしている艦隊に突っ込んでいく。もちろん隊列を1列にして被弾を避けながら突っ込んでいった。
「隊列を一列に、先頭はエルフォード」
<陛下、無謀ですお下がり下さい>
「ふん、ここで俺の船が前に出れば被弾数が下がるだろ。命令だ金魚のフンのように離れるなよ」
「はい!」
「全員着席、安全ベルト、安全帯を装着しろ。衝撃が来るぞ」
「シールド前方に集中、出力最大!」
「数分間だ、オーバーブーストの使用を許可する!」
「了解、シールド出力130%」
モニターには悔しそうな2番艦と3番の艦長が顔を顰め、仕方なくアーネストの命令に従った。そしてエルフォードのシールドを手動で全面に集中、出力も130%まで上昇させ、少しでも被害を少なくするために出来る限りの手を尽くしていた。
「ものすごい数の砲撃がきます!」
数え切れないほどの砲撃の雨が降り注ぎ、艦首に命中したがまだ距離があるのでシールドで跳ね返していた。しかし艦橋内はガガガ、ガタガタと大きな衝撃が伝わりコンソールが火を吹き出し、艦橋内は煙で覆われる。
「全員ヘルメットを装着、火災が起きたら真空状態に」
「了解」
「陛下、艦首食料貯蔵庫脱落」
「かまわん、そのまま全速前進、戦艦に向け砲撃開始!」
エルフォードも負けてはいなかった。650ミリ素粒子砲が発射されると先頭の戦艦に命中。だが威力が足りないのか砲台が歪んだだけだったが、粗粒子砲は発射することは不可能だろう・・。
「敵砲台無力化、損害軽微」
「対艦ミサイル60発射、標的ランダム設定」
エルフォードの後方から60セルの対艦ミサイルが放たれた。標的をランダムにすることで砲撃を分散させるのが目的だ。狙い通りに砲撃は対艦ミサイルに狙いを変え、少しだけ攻撃が和らぐのだった。
ディスティア軍目線。
「クッソ!一列で突撃だと」
「艦長、艦影面積が少なくて当たりません」
敵の艦長はアーネストの奇策に惑わされていた・・。
「ええい、隊列の間隔を開けて命中率を上げるんだ」
「了解!」
そして命令が下り、戦艦が横に動き出し隊列が広がると・・。
<君たちは俺たちの邪魔するつもりなのか>
後方のアーヴィン艦隊の司令官ジョルディー提督からいきなり文句の連絡が入る。広がった隊列が邪魔で砲撃ができずに怒っているのだ。
「クーン軍が隊列を一列にして砲撃が当たらないのです!」
<間もなく君たちの後方に展開予定だ、射線を開けるように>
「了解、ケッ、今頃ノコノコ出てきやがって、仕方ないもとに戻すんだ」
艦長は仕方なく隊列をもとに戻すのだった・・・。
「対艦ミサイル確認、数60!」
「さっさと撃ち落せ!」
「つ、追加で60が発射されました」
「あ゛ー、ムカつく戦い方をしやがって!」
「こちらも対艦ミサイル打ちましょう!」
「あほ、あれだけ密集しているんだ、こちらの素粒子砲が撃てなくなるだろ!」
「あー、そうだった・・」
何とも間抜けな副官だった・・。
クーン艦隊目線。
「陛下、艦首損害が酷くなっています」
エルフォードは度重なる砲撃を受け、優雅なデザインの艦首部分はボロボロになっていた。だが超大型艦は10隻程度の砲撃ではまだまだ沈まないが、シールドの効きが悪くなり放置すると、船体内部に甚大な被害が及ぶことになる。
「どのくらい持ちそうだ、距離は取れたか」
「艦首の装甲板4割破損、この砲撃ですと残り5分でしょうか」
<私が前に出ます>
聞いていたのかわからないが2番艦の艦長が、戦列から離れエルフォードの前に鎮座した。
「分かった頼んだぞ、間違っても撃沈されるまで頑張るな」
<了解>
「陛下、後方の艦隊が惑星の間に入った為ジャンプ可能です。しかし座標が指定できません」
「かまわない、ジャンプだ!」
妨害電波が後方の艦隊の影に入った事により可能となり、アーネストは即座にジャンプ開始の命令を出したが、ほぼ同時に2番艦が大量の砲撃に晒されあっという間にぼろぼろになり始めた。間違いなくアーヴィン軍の一斉砲撃に晒されたのだろう。
<陛下、どうかご無事で、精霊の加護があらんことを>
2番艦の艦長が最後の言葉を残すと同時に艦橋が崩れ始め、爆散してバラバラになった。
「すまんギオルギー、勇敢な君のことは忘れない」
「左舷にジャンプアウトする戦艦、20隻確認、砲撃来ます!」
「ジャンプだ!」
エルフォードの左舷に2発の素粒子砲が突き刺さり大きく傾いたが、そのままジャンプすると一斉にクーン艦隊は消えていった。
「くっそ、逃げられたか」
ジョルディーは撃破できなかったのが不満のようだ。最後の砲撃でエルフォードは中破、後方に追従していた3番艦は耐えきれずに実はジャンプと同時に爆散したのだった。その残骸から発せられるオレンジの長い尾を引いてクーン艦隊は漆黒の宇宙に消え去った。
ーー
「陛下、ジャンプアウトしました。ただいま座標確認中」
クーン艦隊は2隻の被害を出し、エルフォードはボロボロの状態でやっと逃げてきた。しかし、一番後方の戦艦には追跡マーカーが張り付いていた。
「前回、エリアスの船に追跡マーカーが付着していた、即座に確認だ、ジャンプ準備」
「了解!」
「陛下、7番艦にマーカー確認、排除しました」
マーカーは電波を発しているので見つけるのは簡単だ。だが敵は必ず追ってくる。この場所に留まるのはとても危険だ、即座に移動するしか無かった・・。
「クッソ、近くに隠れる場所はないのか」
「前方500万キロ小惑星を確認」
「オーバーブーストを使い全速で向かえ!惑星の影に隠れるんだ」
「了解!」
マーカーを早めに破壊したのでピンポイントに追ってくる可能性は少ないが、障害物がない空間は探査されれば見つかってしまう。クーン艦隊は全速で小惑星に向かっていくのだった。
「陛下、3番艦はジャンプ直後爆散した模様です。4番艦の艦長が確認していました」
「この程度で済んで良かったのか、少し悩むな」
「はい(暗」
副官は落ち込んでいた。多分、仲の良かったクルーが載っていたのだろう・・・。
「戦いで散った者たちに敬礼!」
「はっ!」
オーバーブーストを掛けた艦隊は程なくして惑星の影に入っていく。途中観測用シーカーを数台設置し追跡の艦隊が現れるか確認していると影に隠れて5分後。ジャンプアウトする艦隊を確認するのだった。
「距離900万キロ、60隻の艦隊を確認。あの不明な艦隊と思われます」
「推測だが、あれがアーヴィン王国の艦隊のはずだ」
「はい、ジャンプ前に測定した戦艦の艦影が70%一致しました」
アーネストが捕獲した戦艦のデーターの中にアーヴィン軍の詳細が残っていた。それは機甲歩兵が監視を行ったため流石に消去出来なかったのだ。その情報を元に現れたのはアーヴィン主力艦隊と判明した。
「マズイな、ジャンプして逃げるとするか」
「陛下、座標を確認しましたが現在クロウ星団内の端です。それとこの影に入ったままでしたら、星団連合方面にジャンプは無理です」
「そうか逃げ切る以外に方法は無いな・・・逃げ切れるか」
「はい、そのとおりです。あと燃料も乏しいのでどこかで補給しないと」
シールド強化のため通常より多くのエネルギーを消費し、更に燃費が異常に悪いオーバーブーストを掛けて500万キロを激走したため残り少なくなっていた。ますます追い込まれるアーネストたちだった・・。
「捕獲した戦艦の星図を参考に生命が存在している惑星を探すんだ」
「了解」
そして座標を照らし合わせると、ディスティアが発見した惑星が何箇所か映し出された。その中で水が多量に存在する惑星を選び向かうことに決めた。
「敵艦隊こちらに向かってきます距離500万キロ。精密探査を行っている模様」
「ジャンプシーケンス完了までどのくらいだ」
「残り数十秒です。間もなくオンライン」
「オンライ後、全軍た直ちにジャンプ!」
追手のアーヴィン艦隊が近づく中、クーン艦隊はジャンプして消えていくのだった。
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