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一生懸命やってます

とうとう始まりました。

所属は違うがエイナルが信頼する士官で構成された臨時艦隊は出港し、作戦モニターには現在航行している船の情報が一斉に映し出され、作戦スピードの半分以下の速力で周回軌道に入った。


「やれやれ、動けたのは俺たち10隻だけか」


「何もなければよいのですが、やはり戦艦は動いてないと落ち着きませんね」


宇宙戦艦乗りは静止することが正直嫌いだ。それは動き出しが遅い事が一番の理由だ。しかし標準艦と言われる20万トン級の戦艦は海上に浮かぶイージス艦と比べると、多種多様な計測装置、真空に耐えられる船体、生命維持装置にジャンプコア、それを支える骨格。そしてそれを動かす巨大なエンジン。とまぁサイズこそ違えど必要な機材を積むとそれなりのトン数になるのだ。だから遅いと文句を言っても仕方ないことだったりする。


「仕方がないよ、止まっていれば大砲が付いた単なる金属の塊だからな」


「まぁそうですが・・」


宇宙での静止状態とは本星が基準なだけで、自分たちが動いて無いと錯覚しているだけなのだが。それでも動くと言うことは重要なのだ。


Ai「早期警戒情報が入りました。誤射によるミサイルに注意するように」


いきなりAiが警戒モードで何やら危険を伝えてきた。


「指令、何処の馬鹿が大量のミサイルを誤射した模様です」


「なんだそれは?どこに飛んでいった?」


出航し防衛装置とリンクすると注意情報として放たれたミサイルの情報が表示され飛んでいく予想軌道が示されていた。しかし遠方に設置してある浮遊砲台とは気がついてなかった。


「発射後ミサイルはバラバラに外に向かって飛んでますね」


「阿保な奴だな、やった奴は銃殺刑だぞ」


放たれた地対空ミサイルは現在、燃料節約のため惰性飛行を行っている。目標に近づけば更に速度を上げ、浮遊砲台に向け一直線に飛んで命中するはずだ。対空砲で撃墜される心配は実は無かったりする。それは射程距離が近くなるどフェアリングが外れ、超強力な小型の弾頭(クラスター)が数十個単位で広がりながら命中するのだ。


Ai「続報確認、対艦ミサイル確認、戦闘警戒レベルを上げることを推奨します」


「緊急事態です、停泊中の戦艦20隻が攻撃されました!」


「なんだと、敵は何処から現れた!」


「それがどうも先程、誤射した船からの攻撃で、いきなり撃ってきたと無線で喚いています。現在、情報が錯綜中」


パニックに陥り、全てのチャンネルで怒号が飛び交っていた。これでは正確な情報が入ってこない。しかしエイナルは冷静だった。


「司令部に連絡して緊急出動を催促しろ、この艦隊は現場に向かい発射した船を拿捕又は無力化する」


エイナルは味方の船に偽装した敵だと直感で感じ、司令部に緊急打電し現場に急いだ。


「了解!メインエンジン全開!」


「いいぞ、規則は無視して構わない、飛ばせ、飛ばせ!」


周回軌道上は作戦スピード以下に規制されていたが、そんな事を言っている場合では無い、時間との勝負だ。派手に火炎を上げ突き進むエイナル達の戦艦。


「司令、高速で飛来する艦艇確認!」


「これはヤバい敵だ間違い無い」


急速に速度を上げ反対側の襲撃現場に急ぐエイナルだが、事もあろうに後方にデルタリア艦隊が出現。悪い予感が的中した瞬間だった。


「後方に約30隻の艦隊確認!」


「くっそ!急速・・」


「し、司令、前方に大型艦を含む約30隻の艦隊が現れました」


「なんだど、ええいこのまま突っ込むぞ、砲撃開始!」


「駄目です、ロックオンできません」


「なん、だと」


急旋回の指示を出そうと考えたエイナルだが。前方に現れたクーン艦隊を確認し攻撃の指示を出したが、停泊している味方の船が立ちはだかり砲撃出来なかった・・。


ーー


デルタリア軍目線。


「各自、自由砲撃開始!動き出す船に集中攻撃だ!」


ラッセルの掛け声と共に一斉に主砲が発射、緊急命令が下り動き出した戦艦が火だるまになり次々に爆散してゆく。


「ラッセル指令、燃料貯蔵施設は、やはり存在しません」


「ああ、戦艦に集中攻撃でいい、徹底的に潰すんだ」


「わかりました!」


デルタリア艦隊に割り振られた座標は貯蔵施設よりどちらかと言えば一時的に停泊する簡易ステーションが多数存在するエリアだ。確実に船を破壊するのが目的だ。


「10隻の戦艦がβポイントに向かってます」


「βはアーネストだ、任せて大丈夫だ。俺たちはオレ達の任務を遂行しよう」


ラッセルはアーネストを信じ自分の役割を全うすべく、全力で行動に移すのだった。


--


偵察艦目線。


エンジンストールした偵察艦は発射したミサイルの反動で縦に回転していた・・。


「無線も使えないよペイジ、おまけに回転してるし、燃料不足で再起動むりだね」


そもそも片道分の燃料しか積んでなかった偵察艦は、ゆっくり進みながら本星に接近する予定だったが、勝手にジャンプ位置を変え、ほぼ全開に近い速度で動き回り使い切ってしまったのだ。


「最後にレーダー見た時ミサイルが向かってたよ」


「回転してるから適当なとこに当たるんじゃないの?」


「まさか、艦橋かCICをピンポイントで狙ってくるよ」


対艦ミサイルを追っていた迎撃ミサイルは、進路を変え偵察艦に変更し近づいていたのだ。


「ここ、やばく無い?とりあえず酸素ボンベ補給しないと。俺のもう無いよ」


「そうだね急ごう!」


呑気な2人だったが、流石に慌てて酸素補給のため格納庫に向かいCICを出たが、その問題の迎撃ミサイルは急速に接近しつつあった。


ーー


ディスティア管制目線。


迎撃ミサイルを放った管制塔内は大騒ぎになっていた。先に放たれた対艦ミサイルが戦艦に着弾。追っていた迎撃ミサイルは安全のため自爆を考えたが、座標を入れ直し攻撃してきた偵察艦に向かわせていた・・。


管制官「ミサイル燃料切れで届きません。惰性で当たるかどうか」


「1発くらい当たらんのか!」


「船自体が移動しつつ回転してますので、衝突するか現状ではわかりかねます」


航続距離の短い迎撃ミサイルは途中で燃料が切れた。後は惰性で当たるか謎だ。神に祈るしか無い・・。


Ai「全弾着弾不可、通過の際信管を作動、爆破による衝撃波を使う攻撃が最良と判断とします」


「タイミングは任せた」


Ai「了解、信管作動まで残り90秒」


人間が行うより最大限の効果が得られるAiによる攻撃は、後に各国が協議する場として星団会議が立ち上がるまでのあいだ使われ続けられるのだった。廃止になった理由は簡単だ。戦意喪失した相手でも構わず攻撃の対象とするためだ。


--


クーン軍目線。


Ai「陛下、βポイントにジャンプアウトします」


アーネスト達クーン艦隊はエイナルの進行方向、偵察艦の付近に姿を表した。


「攻撃開始!」


アーネストはジャンプアウト後、即座に攻撃を開始。対艦ミサイルで動けなくなった戦艦を中心に集中砲撃を行い一隻ずつ完全破壊を目指していた。


「陛下、地表に貯蔵施設多数確認、製造工場と思われるエネルギー反応も同時に確認しました」


「地表はまだだ、高度を合わせて集中攻撃だ」


「ですが敵船の中を進むのでしょうか」


「近距離戦になればこっちに勝ち目がある」


「了解!全軍エルフォードを護衛しつつ高度を下げる」


「おー!突撃だ!陛下をお守りしろ!」


アーネストの一言で全艦隊が一斉に高度を下げ始めたが、エイナル達10隻の艦隊が近づいていた。


「9時の方向、高速で接近する戦艦10、確認!」


「早いな、防衛隊か?だが撃てない筈だ」


アーネストの艦隊は近づく戦艦に砲撃はせず、近くの停泊中の戦艦に狙いを定めていた。エイナルの艦隊と戦うより少しでも多くの船を破壊したいのだ。


「指令、完全破壊数10隻を超えました」


「気を抜くな、ギリギリまで砲撃だ!」


「り、了解!」


アーネストは破壊の限りを尽くした後、エイナルの艦隊とは戦わず速やかに反対方向に逃げる予定だ。


ーー


偵察艦目線。


ドーン、ドーンと激しく衝撃波が伝わり偵察艦は自爆したミサイルで装甲板が大きく凹んでいた・・。


「わわわ、衝撃波だ」


「ウギャ!」


無重力下で格納庫に向かっていた二人は、衝撃波の影響で壁に激突し叩きつけられていた。


「着弾じゃないよね」


「そうだね、着弾していたらこんな小さな船はバラバラだよ」


通路はひしゃげた歪な形になっていたが、真空状態なので壊れている装置は火を吹くことはなかった。それだけが救いだ。


「ねぇ、すんごくスピンしてない?」


歪んだ装甲板の隙間から外を見ると、外の景色がグルグル回っていたのだ。


「あれれ、重力が発生してないってことはここが中心なの?」


「そうじゃない、丁度中間地点みたいだし・・」


「それじゃ格納庫は変な重力発生してるね」


「まっ、気にせず行こうよ」


「そだね〜」


そして軽い足取りで進んだのはいいが、徐々に重力を感じ、床は滑りそうになり天井の突起物を握りながら格納庫に向かうのだった。


「ペイジ、結構きつくない」


「そうだね、下まで行ったら動けないかも」


心配して進む先を見ている二人。だがその時、またドーンと衝撃が走った。遅れて来たミサイルが接近して爆破したようだ。


「うわっ!」


「わわわ、重力が、重力が」


また衝撃波を受け偵察艦は回転速度こそ下がったが、次に横回転も加わりひどいスピン状態になった。そう、天井と艦尾に向かって変重力が発生していたのだ。


「コレ無理かな」


「うん、酷いね。けど行かなきゃね。ゴン!ギャ!」


諦めずに進む二人。だがそこにはさらなる試練が待っていた。重量が変動したことで色々な物が頭から降ってきたのだ。


「わわわ、ゴン!」


「ギョエ〜」


敢えなく降ってきた障害物が頭に当たり、力尽きた二人は一気に艦尾に向かって落ちていくのだった。


「うわぁ!ペイジ、重力がきつくてこりゃたまらん」


落下途中の2人はスラスターを使い通路に避難、だが壁に向かって張り付いていた。そう、駆逐艦は相変わらずスピン中で重力が艦首と艦尾に向かって発生していたのだ。


「ほら、ここ格納庫の入り口じゃないの」


壁を這いつくばり少し進むと格納庫の入り口にたどり着いたのだが・・。


「そうだね、けど落ちたら死ぬな」


「ワイヤーもないし。。」


二人がいる場所は艦首に近い入口だ。だが艦尾に向かって重力が発生中、中に入れば真っ逆さまに落ちるのは間違いなかった・・。


「この重力が緩ければいいのに」


「ペイジ、そこの上の部屋って宇宙服があるところじゃない?」


「ああ、ここだった。助かった・・」


上を見上げれば、ボンベが置いてある部屋だこれで空気問題は解決。だが安心もつかの間、ドーンと今までより大きな衝撃が走った!ミサイルが当たらないのでどうやら砲撃されたらしい。ふわっとした浮遊感が襲ってきた。


「やったー、スピンが止まったね!」


「ペイジ大変だよ、すごいスピードで飛ばされているよ」


観測窓を見ると、くるくると回りながらディスティア本星がドンドン遠ざかっている。度重なる衝撃と砲撃によってスピードが上がり、気がつけばスイングバック軌道に乗りさらなる加速が待っていた。彼らは助かるのだろうか。このまま進めば間違いなく宇宙のゴミになる筈だ。

宜しければブクマ評価お願いいします。

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