婚活パーティーついに始まる。
遂に始まります。
男性が集まる控え室ではひとり暗く表情を落とすアーネストが座っていた。その理由は考えなくてもわかる、別れ際のアーリーの表情が原因だ。
ラッセル「よっアーネスト、どうした浮かない顔して」
アーネスト「んっ、ラッセルども」
ラッセルは中級貴族、フルネームはラッセル・クイン。幼馴染の2人はなんでも話せる親友の仲だ。身長はアーネストとほぼ同じ、ブラウンの髪、目鼻立ちがクッキリしていて優しい眼差しが特徴的だ、徴兵の際も同じ特殊部隊に入り見た目と違い中々の猛者だ。
「どうした、悩み事か?」
「まあな今日のパーティーの事だよ多分相当荒れる、クーンの彼女が静かにしていてくれればいいんだが」
「まさか飛び入り参加の麗人か?そうか君は知り合いなのか、クーンの大使だから知っいるのか」
「そうだよ!昨日一緒にクーンから戻って、それからずっと彼女の世話をしている」
アーネストは女王とは話せないのでうまくぼかして話をしている。
「それで、噂の彼女は性悪か?」
「まさか、頭も良くて美人で性格も良いけどな、分かっているだろ見初められたらクーン行きだぞ」
だがラッセルは親友だからこそ客観的な意見を言う。そう、一つの可能性としてなのだがそれは的を得ていた”下級貴族ならクーンに行くのもアリだ”と言い放ちアーネストは動揺してしまう。
「そ、そうだな、それもアリだな、しかし・・」
「家は次男に押し付ければ?君は婚約者もいないよな、クレアとは付き合わないのか?」
「婚約ね・・・クレアは無理だろ上級貴族だし」
アーネストは格の違いで絶対お付き合いできないクレアのことを諦めていた。彼女の両親の反応が芳しくないのだ。そしてアーリーと言う、アグレッシブで、好奇心旺盛、甘えん坊なそんな彼女に自分も知らない内に好意を抱き始めていた。
「それでさぁ、今回はどうする?君はそれなりに他の女の子に好かれているよな」
どちらかと言うとアーネストは気に入らない女性とは絶対お付き合いはしないタイプだ。だが、それは相手が許してくれない、数名の同格か少し上のお嬢さん達がアーネストを狙ってコンタクト?お誘いを受けるのだが全てお友達の体でいつもボカしていたのだった。
「うーん、これと言って良い子がいないんだ、本当はクレアが理想なんだけどな、君は良いよなスージーと良い仲なんだろ」
「相変わらずはっきり言うな、スージーとはこのパーティーが済んだら即婚約だ、色々あったのさ」
「おう!もうそんなに進んでいたのか、んっ?色々とは?」
「・・・・・・(恥」
少し恥ずかしそうな表情のラッセルは手を頭に乗せ、とてもバツが悪そうだった。まぁ愛し合う若者なら当然の行為なのだが。
「まさか婚前・・・そりゃ責任取らないとダメだね」
「若気の至りと言ってくれ、反省も後悔もしない。もう決めた!あいつを幸せにする」
「おお、さすがはラッセル」
スタッフ)「皆さん、まもなく始まります。会場に移動してください」
「さあ始まるぞクーンの麗人を拝みに行こう!話すぐらい良いだろ、今後、繋がりがあるかもしれないからな」
「こら、スージーが焼き餅焼くぞ、だから鼻の下伸ばすなよ痴話喧嘩はみたくない(笑」
「ふん!お前に言われたくないわ」
スタッフに言われたように整列し、まもなく始まりを迎えようとしていた。このパーティー会場は真ん中にカーテンが引かれ相手が見えないようになっている。参加者は40名弱、名簿登録順に等間隔で綺麗に整列して待っていた。
司会)「それでは紳士淑女の皆様。只今より20歳以下限定社交パーティーを始めます」
サッーとカーテンが引かれお互いの顔を見合うが、男性の目線が一斉に集まるのはやはりアーリーだった。
参加者「おお、凄い美人だ」
ラッセル「なかなかの顔立ちだな、それにプロポーションも完璧だわ」
マーベリック「ウフォフォ、こりゃたまげたとんでも無い美人じゃないか」
男たちの評価が漏れ聞こえるが、しかしそんな呟きを気にせず彼女は全く気にしてない。それどころかアーネストを見つけ”ジッと”見つめ続けていた。ああ、やめてアーリー、凝視しないで・・・と呟き、騒ぎになることを恐れ彼女からの目線を避ける。
「ふふ、見つけたわよアーネスト、目を逸らしても無駄よ!最後の最後でどんでん返しするからね!待ってなさい!」
アーネストを見ていたアーリーは笑顔から”作り笑顔”に変化しそして他の男たちを品定めをし始める。
「ふぅ、あの顔は社交モードになったな、アーリーそのまま静かにしてくれよ」
司会「それではみなさん十分にお顔の確認は済みましたでしょうか、それでは自己紹介の後、事前申し込み順にトークタイムが始まります。男性諸君、ひとり15秒で自己紹介をお願いします」
参加者「うー、緊張する」
「ニッキー・ボーン君」
「私はボーン伯爵家のニッキーです。こ、今宵は良い出会いを求めています、淑女の皆様よろしくお願いします」
そしてその後順調に自己紹介が進み・・。
司会「ラッセル・クイン君」
「クイン家のラッセルです。今回でこのパーティともお別れになりますので、今日はのんびり参加させて頂きます」
参加者「おお、もう決まっているのかさすが!」
「アーネスト・ウェブスター君」
「アーネストです、皆様よろしくお願いします」
アーネストは目立たない様に控えめの挨拶だ。それでも数名の令嬢がキャっと歓喜の声を挙げた。だがアーリーはじっと見詰めたまま思わず呟いてしまう。
「もう、気にしすぎだよアーネスト!」
その呟きは瞬く間に広まり、アーネストを狙っているアーリーとして認識され、数名の女の子は愕然とするのであった。
「あっ、狙ってる無理だわ・・」
「無理、勝てないわ・・」
「いつの間に、悔しいけど彼女に勝てる自信がないわ・・・」
アーネストを狙っていた女の子からは青色吐息が漏れ出ていた。
「それでは淑女の皆様準備はよろしいでしょうか」
数分後、女の子の自己紹介も最後の1人になり全員の注目が集まる。
「アーリー・フェアフィールドさん」
「女王アーリー・メンディエタの勅命のもと参加させて頂きますアーリー・フェアフィールドと申します。この度はクーン精霊王国に相応しい殿方を探すためにこちらのパーティーに参加いたしました皆様よろしくお願いします」
参加者「おおお」
ハイナー「決まったらクーンに行くのか?」
マーベリック「おお、あの美貌で王族との繋がりが持てるなら最高だな」
「さあさあ皆様、お待ちかねのトークタイムです。お知らせした順番にお目当ての方の元にお集まりください」
「嗚呼・・とうとう始まってしまった・・・」
1人暗い顔のアーネストは少し離れたバーカウンターに座り傍観を始める。軽く酒を飲みながら見ていると早速、アーリーの前は長い列ができていたが、ほぼ全員群がっている状態なので1人2分程度の時間に調整されていた。
「あれ、あいつクレアを狙っていたんだ・・・・」
クレアの元に一人の中級貴族の男性がちょうど話しかけようとしていた。だが彼女の作り笑顔をみたアーネストは残念だねって思ってしまう。長い付き合いだからこそ分かるようだ。そして時間だけが無意味に過ぎて行く。
女の子「何よアレ、ホント男ってバカばっか!けど桁外れの美貌だよね」
クレア「うふふ、仕方ないよあの顔立ちじゃ(アーネストが選んだらどうしよう」
控室とは違い、凛としてまるで女王の様に堂々と立ち振る舞い、破壊力抜群な笑顔を見せるアーリーを見たクレアは急に不安になり始める。
アーネスト「アーリー大変そうだ、アレじゃ一口も飲めないよ・・」
数十分後、アーネストは一番最後でそろそろ呼ばれる頃だ。いまお話し中の紳士はラッセルだ。あれほど忠告したにも関わらず思いっきり鼻の下が伸びていた。それを見て苦笑いしながらゾンビグラスに白ワインと炭酸水を半分ずつ入れ軽くステア、そしてアーリーのところに赴く。
「次、アーネスト君」
「アーリーお疲れ様、はい、これ」
「もう、もう凄いよアーネスト、あっ、ありがとお喋りしっぱなしで喉が渇いていたのよ、飲み物を取りに行く暇すらなかったわ」
「そうだと思ったよ」
「コクコク、はぁ〜、コクコク、ふぅ!これ美味しいね、ワインってこんな飲み方あったんだ」
「そうだよ、喉が渇いた時にはこれは最高だよ、それで良い人見つかった?」
「ふふ、やっぱ優しいよアーネストありがとう・・・けど、何か、みんなギラギラしていてちょっと引いたわ」
「そっか、みんな真剣だもんね」
「うーん、真剣というか酷いんだよ、アレ絶対誰かに指示されてクーンの事を細かく聞いていたよ」
マーベリックは手下の貴族を使いクーンの内情に探りを入れてきていた。財務状況から、治安、特産品など代わる代わる聞いてくるのだ。流石に誰かに指示されたと気がつくアーリーだった。
「アーネスト君そろそろ時間ですよ」
「わかりました、それではアーリー嬢、失礼します」
「ふんだ!」
司会)「それではみなさんこれより食事の時間として40分程休憩に入ります、お好きにテーブルにお座りください」
「ほら、アーネスト座りましょう、ほらここに座りなさい」
逃げ出そうとしていたアーネストの腕を無理矢理引っ張り、隣の席に座らせた。アーリーがニコリと笑みを送り終わった瞬間、誰かが文句を言いながら近づいてきた。
「おい、アーネストなんでアーリー嬢の隣に座るんだ!」
「ほら、早速来たでしょ」
「ん、もう!大事な時間を取らないでよ、もう!」
「なんでしょうマーベリック君、アーリー嬢に呼ばれ着席しているのですが」
「ふざけるな俺が座るサッサと立て」
「マーベリックさん親善大使のアーネストさんにはクーンの事で大事な相談があって座って貰っています」
「うぐぐ」
脅しをかけたが、アーリーに軽くいなされ苦悶の表情を浮かべるマーベリック。まぁ、既にバカ認定しているので扱いが雑だった。
「アーリーさんやめてください、僕は引きますから」
既にテーブルの周りには数名の男達が集まっていた。アーリーはその様子を見ると渋々離席を許す。
「アーネストさん、本国に連絡を取りたいので10分後に来てください」
「わかりました」
わざとアーネストを呼ぶための口実を言い放ち、アーリーは表情を変えマーベリックの相手をし始めた・・・。
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