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間者は紛れるだけじゃないの

ハインツさん登場です。

入室してきた男を無視し、引き続き作戦会議は進んでいた。


エリアス「燃料保管場所が変わっている可能性は無いですか?」


アーネスト「尋問内容、メール、ログ解析の結果、やはり燃料補給基地近くの可能性が高い。建設予定地の情報と一致した」


男「何故、燃料補給基地を執拗に狙うのだ!直接総統府や政府関係の建物を狙わないのか」


いきなり不満をぶつけ文句を言い放つのは、フェデラリー共和国、アーブラハム駐在大使コージモだ。ディスティアの捕虜の窓口として赴任中だ。今回、作戦攻略会議とは言わず定期的な星団会議を行うと通達、普段は重要案件以外参加しないが、宇宙ステーションで開催すると知り不安になり急いで来たらしい。


「この作戦は2面展開します。一つは停泊中の戦艦を潰し、そして燃料を断つことです。軍事基地、重要施設には防空装置が存在すると推測。攻撃の効果が薄いのでそう判断しました」


「しかし、大規模攻撃を行うなら都市中枢部の重要施設だろ」


「今回の2面作戦を遂行するには、戦艦の数が足りません!」


流石に頭にきたのかアーネストの口調が強くなる。


「だがしかし!」


「作戦立案の際、1番効率的で且つ相手にダメージを与えるのが定石。本来なら戦艦を先に叩きますが、燃料も同時に攻撃すれば効果があがります」


「レーダー施設とか重要施設が先だろ、燃料保管庫なんて後で良い」


「ディスティアの技術でしたら都市機能が麻痺しても通信さえ確保すれば即時に立ち上がります。だから建物を壊すのは意味が無い。それに防衛装置が設置してあるとの情報があります」


「それなら発電所を狙えばいいだろう」


「もちろん叩きたいのですが、大型発電所の場所特定には至っておらず、広域探索を行いながらの攻撃はリスクが高くなります」


「核だ、核を使え!」


「関係ない市民に甚大な被害が及びます!」


とんでもない事を言い放つ代理人のコージモ。先程から執拗に食いつき、戦艦より施設を狙えと吠え、仕舞には無謀にも核を使えと言い放った。全く話にならない。


クレア<アーネスト、気がついた?変な感じだよ>


<ああ、わかりやすいな>


そのコージモの意識は、焦り、怯え、欺瞞などが感じ取れとても不安定なのだ。


<この思考は撹乱を狙っているのか戦艦を攻撃されたく無いのか・・・生体エネルギー施設か>


<はい、燃料の話になると一気に緊張感が増します。最近生体エネルギーに転換したばかりですので、間違いないでしょう」


2人は秘密裏にモジュールを使い通話していた。その状況をエリアスに知らせると、一瞬表情が引き攣る。


<な、内通者ですか!>


<そうだ、彼の身柄を拘束しないと>


<わかりました、証拠を掴むので泳がせます>


エリアスは実に話が早い。休憩前に諜報部に連絡を取り、コーモジが連絡を取る前にスマホの回線を封じる指示をだした。


「彼は次の休憩中にメールか何かを利用する筈だ」


「そうですね、彼には監視役兼護衛が常に張り付いていますので、それしか方法がなく間違いないでしょう」


そして休憩時間に入り、席を立つと早速スマホを操作しながら何やら送信していた。


「エリアス様、通信内容のコピーが届きました。メールは野党党本部宛です」


休憩が終わり再度作戦会議が始まるとほぼ同時に諜報部から連絡が来たのか、一枚の小さなメモ用紙が密かにエリアスに渡された。


<<星団連合軍、数時間後ディスティア空爆を開始。早急に対処されたし>>


「うん、確保していいよ」


短い一文だが証拠には十分だった。刺激しない様にゆっくり警備兵が背後に入った。


「クレア、頼むね」


「はい!」


ーー


「グフゥ〜、良い知らせは無いのか」


ディスティア帝国は混乱の最中、死んだエドガーの代わりに急遽、副総統のエセルバートが代理を務めていた。この男、金髪で短髪、しかしデップリと太り巨体をユッサユッサと揺らし歩き回っていた。痩せれば良い男なのだろうが、肉付きの良い大きな顔は目が小さくみえ小心者に見える。そして暑いのか分からんが大汗をかいていた。


「5柱の1人宇宙軍提督が暗殺されました」


「なんだと、艦隊の柱も殺されただと、やばい俺も狙われる」


ディスティア軍には5柱と言われる、陸海空、宇宙軍、それに諜報部が加わり5名の最高責任が存在していた。もちろんエドガーがその柱を作り上げ、子飼いの連中を指名するのだ。ちなみに柱は総統選挙には出られない。


「エセルバート代理、このままではクーデターが起きてもおかしくありません」


「諜報部を使い情報を集めるんだ!残りの柱に護衛を付けろ」


「承知しました」


「既に3人・・誰だ裏で指示を出している奴は・・艦隊は全て集めろ、士官は司令本部に出頭だ」


5柱の5人中、宇宙、海、空の3名が瞬く間に暗殺された。これは誰かの指示ではなく私怨が主な原因だ。エドガーの権力を傘に好き放題人事を弄り、邪魔な奴を排除。酷いやつだと女性下士官に手を出す始末。普通にスキャンダルなのだが騒げば口封じを行い非道の限りを尽くしていた。


ーー


とある協力者の農家の元に出向き、情報を仕入れた男を乗せたシャトルは田舎道を突き進んでいた。途中のスーパーで水を買い、後部座席に乗り込み喉を潤し一緒に買ってきたナッツを掌に乗せ、無造作に口に放り込むとカリッと噛み砕きボリボリと食べ始めた。


「嗚呼、今日は疲れた少し寝る。本部に到着する前に起こしてくれ」


「うふふ畏まりました、おやすみなさいステン、永遠にね」


ナッツを食べ急に眠くなったのか運転手兼、秘書の女性に言伝を頼むと、彼女は振り向きフェイスマスクを少しずり上げ素顔を晒した。


「お前はマチルダ・・何故だ」


「うふふ、お久しぶりですね」


「クッソ・・・(眠」


自分が選んだ水とナッツは彼女に渡し、目の前で精算をしたので毒を仕込む余裕はなかったはずだ。そんな事を考えながらステンの意識は遠のき目の前が暗くなり始めた。


「作戦完了しました」


<よくやった、これで君の恨みがはらせるな>


「はい、チャンスを頂きありがとうございます」


<仕上げに、仕込んだデミナパームを使いなさい>


「はい」


女は公園の駐車場に止めて降りると、振り返る事なく後方から尾行していたシャトルに乗りその場を去った。そして数秒後ポンと軽い音と共にシャトルの窓から激しく炎が吹き出すと、数秒後ドーンと大きな音と共に爆散した。焼け死んだ男を司法解剖しても毒ではなく睡眠薬が検出されるだけだ。そのまま普通に焼身自殺で処理されるだろう・・。


運転手「”メイジー”さん、諜報部に戻りますか」


「ええ、その前に議員会館に寄ってくれない」


指示を出すその女性の名はメイジー、本名ルッチラ、マチルダは以前、諜報部で呼ばれていた名前だ。彼女は工作員の1人なのだが、諜報部の柱ステンの”元愛人”でもあった。今回の暗殺は単なる私情の縺れではない。れっきとした仕事の一環なのだ。その指示を出したのはハインツという男だった。


「ハインツさん、完全に寝てから燃やしたよ」


「お疲れさん、”マチルダ”さん」


ハインツは30代前半、与党議員の中で未来の総裁候補と呼ばれている若手実力者だ。キリッとしたツーブロックの髪型は青黒い髪と少し甘めのマスクがよくマッチしている良い男だ。もう少しだけ身長が高ければモデルか俳優になれそうだ。


「もう、その名で呼ばないでよ!愛しているなら”ルッチラ”って呼んで!」


「おいおい、いつから相思相愛なんだ」


「もう、今回のお礼として抱いても良いわよ~」


フェイスマスクとカツラを外し現れた髪は赤黒く、斜めにカットされたショートカットは小顔と相まって鋭い印象を与えるが、顔立ちはとてもキュートでボーイッシュな女の子だ。因みにハインツの事が大好きらしく遠慮なしに誘っていた。


「俺が上り詰めたら、その時にでも相手してやるよ」


「ふん!けど、今回はありがとう。そのうち借りは返すわ」


「早速なんだが、総統候補者達の女と金を調べてくれないか」


「ハハーン、そう言うと思ってリストはできてるわよ〜。赤い丸は完全にアウトね!」


彼女は小さなメモをポケットから取り出すと、ヒラヒラさせながらハインツに渡した。


「なんだ、殆どアウトじゃね」


「ええそうよ、赤丸以外の奴も何かしら脛に傷があるわ。貴方くらいよ金と女に真っ白なのは」


「ははは、俺は金には綺麗だし、女は選ぶんだよ」


「もう、私を選んでよ!まだ未婚でしょ!」


ハインツは独身だが女は慎重に選んでいた。ルッチラとは酒を酌み交わすほど仲が良いが絶対手を出さなかった。彼には野望がありそれを達成するまでは無闇に楽しまないと決めていた。


「俺には、国家帝国主義ディスティア党を立ち上げ、新しい風を起こすのが夢なんだよ」


「知ってるよ、だからお手伝いするんだよ」


「そうだね、今回の暗殺はその一環だからな」


「けど、私を屈辱したステンが死んでくれて本当に嬉しいよ」


ルッチラは元々諜報部の下で訓練を受けていた工作員候補生だった。数年後、初めての任務の時、彼女のモジュールが突然壊れ、緻密な連絡が取れなくなり作戦失敗。保護対象者と同僚が死亡。責任を取るために処分されそうになった所を総括責任者のステンに助けられたのだ。まぁ、その後の展開は言わずと知れたお決まりの愛人コースだ。


「ほんと、権力を持つとろくなこと考えないんだな」


「ええそうね、貴方が間違った道に進んだら殺してあげるね!」


「その時は頼むよ」


「うん!」


恐ろしいことを平気に明るく喋るルッチラをハインツは気にもしてなかった。彼は総統を目指すが、柱のような愚者を側近として置くつもりは無い。カリスマ性をトコトン追求し国民を魅了し引っ張り、その影響力を武器に部下たちを厳しく統制し規律を守らせようと考えていた・・。

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