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不可侵条約とミランダさん

フェデラリーが不可侵条約を結び、ミランダさんは・・・。

捕虜収容所を襲撃したディスティアに対し、毅然とした対応を取り、一旦止まっていた交渉は、数週間の間を置いて始まり一気に進むのだった。


「総統閣下は不可侵条約を結んでもよろしいと、理解してよろしいのですね」


ゾランはエドガー総統に手短に済ませろと言われ、仕方なく不可侵条約を結び捕虜を帰還させる手続きに入るのだった。


「それで何名返すんだ、10名は勘弁してくれ」


「アーブラハムに抑留されている偵察艦隊以外の捕虜1500名です」


「約半分か、まっ妥当な数だな残りはどうする」


「この先、国交樹立、平和条約など進まなければいけない道がありますので」


「ふん、どうせ獣人の国の入れ知恵の賜物だろう」


強かなグスタフは勿論アーネストと相談は行っていたが、今回はエリアスとアイアスに頭を下げアルビーンの艦隊の乗組員を先に解放してもらったのだ。これには色々理由があった。女性達より男性乗組員の方がディスティアは助かり借りを作れ、頭を下げたアーブラハムに対しわざと借りを作り、友好関係を維持する考えなのだ。


「ふふふ協力者ですよ。良き相談相手とでも言いましょうか」


「ふん、これでアーブラハム本星を攻撃できるな」


「あっ、偵察艦隊の士官数十名はまだ抑留されてますよ」


「ギー!、お前はどこまでタヌキなんだ先に教えろよ!」


激昂するゾラン、確かに後出しされれば頭にもくるが、アーブラハムも保険が必要なのだ。


「それはディスティア帝国が侵攻しなければ良いだけでは?」


「帝国にはカリスマ性と侵略という名の夢が必要なんだよ」


「我儘なだけやな」


「なんだと馬鹿にするのか!」


「事実だし、こっちは偉い迷惑だわ」


「クッソどこまでも食えんヤツだ、ケッ、捕虜の引き渡しは何処でやる」


「護衛艦で連れて来ますね~」


「クーンの中古船だろ!シレッと配備しやがって。総統閣下はお怒りだぞ」


グスタフは会談の合間にシレッと憲法改正を行い、正式に宇宙軍を立ち上げた。もちろんアーネストとアイアスの力を借りて素案を纏め、格安中古船を品定めの体で持って来て貰い護衛艦として即お買い上げしたのだ。


「まぁ確かにそうですが、安い買い物でしたよ。ディスティアも売ってくれますか?買いますよ」


「は、話にならん!そもそも更新はまだまだ先だ!」


ゾランは激昂しつい更新時期を喋ってしまったが、本人は気がついて無かった。それだけ頭が痛くなる問題なのだ。


「あっそうですか、フェデラリーの船は弱いので攻撃しないで下さいね」


「するわけ無いだろ!」


「それでは来週お連れします」


「ああ、わかった」


こうしてグスタフはうまく立ち回り侵略を防ぐのだった。しかし毎回のギリギリの交渉は国内不安が高まる要因でもあった。交渉が終わりシャトルに転送されたゾランはディスティア艦隊に戻らず、とあるホテルの一室に入っていく。


「私に会いたがっている君がデジレ君か、それで俺に何のようだ」


「私ども野党連合はディスティア帝国の考えに同意します」


「ほほう、君は帝国の見方をしてくれるのか、それで代償はなんだ」


「代償は必要ありません、政敵のグスタフが失脚してくれることが1番です」


「なるほど、敵対しているのか」


デジレは若くして最大野党、社会共和党党首に上り詰めた男だ。いつかは政権交代し自分達、社会共和党が実権を握ることを夢見ていた。


「ああ、与党の力は強大だ。もう既に70年も政権交代してない」


「なるほど、ディスティアの影響力を使い政権交代したいのだな」


「そう、その通りだ」


グスタフが所属している与党、自由共和党が長年にわたりフェデラリー政治の根幹を担ってきた。そのことは勿論悪いことではなく、要は国民に不満がない表れでもあった。だが野党、社会共和党は共産主義が根幹にあり、より強い指導者が国をより良き方向に導くと信じていた。しかしフェデラリーでは人気がなく、反対のための野党と揶揄され辛酸を舐めていたのだった。


ーー


ゾランはフェデラリーから戻ると総統府に向かい、執務室に入るとすでに数名の高官が集まっていた。今後の話し合いを行うのだろうか、”柱”の一人諜報部ステン局長、アーヴィン王国親善大使ラケールの姿が見えた。そして早速交渉内容をエドガーに伝えた。


エドガー「フェデラリーは我がディスティア帝国には逆らわないということだな」


「はい、星団側の情報を逐一報告すると約束して参りました。それと野党党首ゾランという者が支援を欲しています」


ステン「総統閣下、それは好都合です、野党に諜報部の工作員を送り込みましょう。これは使えます」


ステン局長はエドガー子飼いの5柱のひとりだ。諜報部の他に軍部にそれぞれ柱が存在する。


「要するにだな無理に侵略はせずに情報屋として使い、野党をに協力して政権交代を画策するのだな」


ゾラン「下手に刺激すれば全面戦争になります。ディスティアが負けるとは思えませんが、戦力が出揃うまでは我慢かと」


ステン「野党を影から応援し政権交代を行えば、楽に統治できます」


髭を触りながら思考を繰り返したエドガーは同席していたアーヴィン王国のラケール大使に話を振った。


「なぁラケール、君らの国としてはどう考える大使」


ラケール「アーヴィン王国は、ディスティア帝国に忠誠を誓っておりますので、何ら不満はありません」


ダークグレイの長いストレートヘアーの彼女は19歳。王族の血がながれそれなりの美貌の持ち主なのだが、常に能面の様に無表情で感情が一切表に出ない、そんな麗人は氷王女アイスと呼ばれている。


「そうか、君らに取って代わる可能性があるとしてもか」


「アーヴィンが必要ないとお考えでしたら、それに従うだけです」


「相変わらず冷徹な判断だな」


「いえ、当然な考えかと」


100年程前、同じ星団内に存在するアーヴィン王国を発見したディスティアは探査衛星を送り詳しく調べ上げ、数十年後、探査船が完成したと同時にファーストコンタクトを取った国である。当時は侵略主義では無かった為、スムーズに国交を結び共存関係を築き今に至る。


圧倒的技術力の差から初期の頃は平身低頭だったが、関係が深くなるにつれ技術力も追いつき現在は発言力も強まり良好な関係を維持している。


「そうかわかった、フェデラリーと正式に国交を結べ、野党には工作員を送り込め」


「承知しました」


アーネストの思惑通りエドガーはフェデラリー共和国をディスティア側に組み入れた。意外にもこの判断が国民に評価され支持率が回復。これによって無闇に侵略できなくなり一層の安全を得る事ができた。この様な経緯を経て共和国は暫定的に中立国になる筈だ・・。


ーー


エドガーの判断から二日後、ゾランは早速グスタフと交渉に入っていた。


「グスタフ君、君とは長らく交渉して来たが、やっとお互い苦労が報われたな」


「ゾラン代理人、今までの非礼の数々お詫びします。何分フェデラリーは弱い国ですのでご容赦を」


「ほほほ、今日は素直だな、君は本当に強かだよ。だがもうアーネストの知恵は借りれないな」


「ふっ、私は大統領になる男です、いつまでも頼る訳には参りません」


「その言葉に嘘がない事を望むよ、グスタフ君」


フェデラリー共和国はこの日、ディスティア帝国と正式に国交を結ぶ事が決まった。だが同時に監視される事にもなり、アーネスト達星団連合とコンタクトを取る事が難しくなっていくのだった。


ーー


ゾランとの交渉が終わり、後日正式に国交樹立の式典を行うことを決めた翌日。グスタフはミランダを大統領府に呼び出していた。


「ミランダ、君に頼がある」


「なんでしょうグスタフ副大統領様!」


ミランダの腰の辺りまで伸びていた赤く綺麗な髪が何故か少し短くなっていた。彼氏が出来て気分一新したのだろうか?


「あのな、頼むからカメラを止めてくれないかな」


「嫌です!」


部屋に入るなりずっと小型カメラを片手に、グスタフの発言、行動の一挙手一投足を収めようとしているのだ。


「はぁ〜、頼むよ〜、止めないとこれ以上話が出来ない」


「ふーん、そうなんだ!(怒」


グスタフに怒りを露わにするミランダ。実は各国巡りの最中の出来事が原因だった。短くなった髪も含めて・・。


「だから、俺は悪くないだろ。機嫌直してくれよ〜」


「だって、私の全て、恥ずかしい所、全部見たでしょ!いつ責任とってくれるの!」


「いや、流石に放置できないよ〜、頼むよ〜」


「ふん!」


実は最後の訪問地、フォーレストのフォーチューンホテルに宿泊した時の事だ。こともあろうか夜這いを画策したのだ。もちろん狙った相手は意中の相手アーネストだ。合鍵を使って部屋に入るなり服を脱ぎ真っ裸で寝室のドアノブを触ろうとした瞬間、ゾクッと殺気を感じると同時に部屋が明るくなり、振り向くと鬼の形相のミーシャが目の前に立っていたのだ。


「ケケケ、不審者は殺していいニャ!」


「ヒッ!」


「大丈夫ニャ、一瞬で死ねるニャ!」


ブンと風切り音が聞こえ、ハラハラと髪の毛が落ちて行く。


「ひゃー、髪が髪が、やめといてー」


「二゛ャー!」


もちろんミーシャは殺すつもりは無い。アーネストが隙を見てきっと彼女は来るよと言われ遊んでいるのだ。だがナイフ捌きは本物だ、全く剣筋が見えない。残像が見える度に髪が切られていた。


「わわわ、髪が〜、キャー」


部屋の中を悲鳴を上げながらドタバタ走り回り、ミーシャはドアの前に追い詰めるとそこでピタリと動きが止まった。ミランダはなぜ廊下に逃げないのか、それはもちろん服を着てないからだ。


「死ぬニャ!」


「ひゃー、ごめんあさーい、服、服!」


「ムリニャ死ぬニャ」


「いやー」


服を拾おうと屈んだミランダにまたがり、ナイフを高く振り上げると、慌てて振り解き廊下をダッシュで逃げた。しかし騒ぎを聞いたグスタフが同じタイミングで部屋を飛び出し、思い切り激突!


「グハァ!」


ドンとぶつかり跳ね返りひっくり返ったミランダは、後頭部を床に強打して気絶。そしてグスタフは見てはいけない彼女の恥部が思いっきり目に入った。そう、思いっきりM字なのだ。


「ウワァ、やべえ」


咄嗟に手で目を塞ぐが、”不審者排除完了、処理は任せたニャ!”と言い放ったミーシャはバタンとドアを閉める。もちろんミランダの服は部屋の中に取り残されていた。


「うーん」


ミランダは気絶したままだ。しかし騒ぎを聞きつけた警備員が来たのだろうか、エレベーターの到着を知らせるベルがポーンと鳴った。


「ああ!」


彼女の尊厳を守るため、意を決したグスタフはミランダを抱き上げ自分の部屋に運び入れベッドに寝かせるのだった。そして朝、目が覚めた。思い出した。けどグスタフの部屋だったのだ・・・。


「何度も言うけど見たよね」


「おう、何度も言うけど一瞬だけ見えたんだ!」


そう言われるとプルプルと震え顔が真っ赤になったミランダは衝撃の言葉を言い放った。


「あんたが責任取りなさい!」


「えー!アーネスト陛下を狙っていたんじゃないの?けど色々やらかしたよね」


「いいの、もういいの!だって、ムリなの知ってるもん、ヒーン。けど・・・」


そう、ミランダさんは色々やらかしていたのだ。予めベッドの下に隠れたり、メイドに化けたり、貢物の箱に入ったりと、よくもまあ色々あの手この手でアーネストに接近しようとしていたが、クレアとミーシャに全てバレて毎回叩き出される始末。アーネストは諦め、何故かグスタフに好意の矛先を変えたのだった・・・。


「だが断る!」


「酷い!」


思いっきり断るグスタフ。その後ミランダさんは大人しくなったが、終始ご機嫌斜めでそのまま帰国したのだった。


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