強欲と欲望。
アーリーを巡って欲望がうごめき出す。
<<男性控室>>
ハイナー「なあマーベリック、今回のパーティーに飛び入り参加する王族知っているか?」
マーベリック「ああ、なんかクーンの王族なんだよね」
パーティー会場近くのバーで何やら噂話をする男性がいた。マーベリックは上級貴族で顔は少し我がままな感じだ、ハイナーは友人だが中流貴族で普通の男子だ。
「その女性って女王の親戚みたいだぞ、さっき名簿の名前欄をチラ見してきたんだ、アーリーって明記していたよ」
「なにそれ、アーリーって女王の親戚なのか」
「そうだな、アーリーの名だからかなり近いというか娘とかじゃないのか、女王はおばさんだし」
「おお、それは良い情報だな、女王直系となりゃ夢が見れる」
「そう思うのか?獣人の国だぞ」
「金さえ持っていれば良いよ、稼がなくて済むし楽して暮らせる」
「お前なー、ほんとお前って現金だな」
「世の中は金だよ愛なんて金でどうとでもなる、ほらブスでも適当に相手してお気に入りの側室でも作れば完璧さ!笑いたければ笑え、金だよ金!」
「噂によると、凄い美人で背が高くてスタイル抜群らしいぞ」
「おお、美味しそうだな」
「ほんと、お前には呆れるよ・・・」
マーベリックは俗に言う駄目貴族の御坊ちゃまそのままだった、好色、我儘、欲張りの三拍子揃ったアホだった。。
ーー
同じ頃、アーネストは未だにアーリーの買い物に付き合っていた。
「アーリー、そんなに買うと会場に持っていけないよ」
「大丈夫ホテルに送るから、嗚呼、そうだ最後に香水買わないと」
そうして急ぎ化粧品売り場に移動した2人。
「ねえ、アーネストこの匂いどう?」
アーリーの選んだ試供品の匂いを嗅ぐとアーネストは苦笑いをした。結構きつい系の香水らしい。
「スンスン、うん、一言で表現するなら獣だね、結構きつい系だよ、若い人が選ぶ匂いじゃないよ」
「えー!だってクーン臭いし、これくらい強烈じゃないと・・うーん、じゃアーネストが選んで!!」
「じゃこっちは?」
次はアーネストが勧めてきた試供品を嗅ぐと、その爽やかな香りに笑みがこぼれた。
「クンクン、おおコレいいね貴婦人て感じするよ」
「それはいま流行りの香水だよ、こっちも今は流行りだね」
「そうなの?ふーん、恋人もいないのにどうしてそんなに詳しく香水の事を知ってんのよ、怪しいわね」
ジト目でアーネストを見ているアーリー。彼女もいないのに香水に詳しいって、もしかして実は遊び人?と疑いの目だ。
「ん?なんか変な勘繰りしていないか?」
「だって、男性が香水に詳しいなんて。女がいなきゃ分からないでしょ」
「あのね、実家が商社って言ったよね、コレ扱っているの僕の会社だよ」
「へぇ〜、もう会社持っているんだ」
「そうだよ子会社だけどね一応僕が社長。それで売れるものを探して儲けを出す、これが商売の基本。知り合いの貴族とかにリサーチして次に来る流行りを先取りするんだよ。だから知っているの」
「それじゃ、両方買っていくよ」
「毎度あり!」
そんな事をしていると集合時間が近づいてくる。
「アーリーそろそろ行かないと、これあげる」
アーネストは小さな紙袋をアーリーに渡す。
「なにこれ、あっ!ルージュだ」
「君に似合うかちょっと自信ないけど、これから流行るカラーだし、君なら絶対似合うと思う」
それはメイクを邪魔しないピンク主体の落ち着いた色合いの口紅だ。
「ありがとうアーネスト、後で早速つけてみるよ」
「ありがとう、君ならきっと似合う」
そしてパーティー会場があるホテルに移動してきた2人。
「ねえ、ここなの?ここミラージュホテルだし」
今回の会場はアーリーが泊まっているホテルの反対側にある旧館だった。だが同伴で会場に入るのはNGだ。その事を伝えるとちょっと頬を膨らましていたが渋々了承して別々の入口に向かってく。
「じゃ、中に入ったらすぐ向かうね」
「・・・・・多分無理かな」
少し暗い顔をするアーネスト、今回のパーティーは上級貴族でも下級貴族でもお相手と話せる時間を平等に与えられるのだ、そしてフリータイムになれば相手が拒否しない限り話は会話は続く、しかし下級貴族がアーリーを独占すると争いのタネを撒くことになり、後々嫌がらせを受けたりする。そのため先の展開が見える為、諦めの表情なのだ。
「もう、もう、私はアーネストだけとお喋りしたいの!!」
「多分無理だよ、その後のフリータイムが更に凄い事になるから」
「なんでよ、その時間になったらすぐに行くよ」
「アーリー」
「なあに?」
「悪いんだけど、僕のそばに来て欲くないんだ」
「えっ!・・・・なんでよ!!」
衝撃発言に唖然とするアーリー。その理由はアーネストのスマホには問い合わせの連絡が既に数十件入ってきていた、もちろん彼女の事だ。内容を見ずともこの先の展開が容易に想像できる。
「下級貴族が君を独占すると争い事が必ず起きる雰囲気を壊したくないんだ」
「わかったそれじゃ欠席する、終わるまで外で待ってる」
アーリーは真意を見抜き今回のパーティーを辞退すると言い出すが、それでもアーネストの表情は明るくならない。その理由は紹介者の相手が王族、それも始まる前から噂でもちきりの彼女が欠席すると信用問題になるからだ。
「仕方ない俺が頭を下げれば良いから」
「それは私も望んでいないわ、じゃ考え方変えて楽しむよ(ふふふ、よし!最後のダンスで絶対指名してやるんだから!!」
「うん、そうしてくれ(うやぁ、顔が小悪魔だよ何かやらかしそうだ・・・」
口角を上げフフッと笑うと颯爽と会場に向かうアーリーだった。
ーー
控室ではパーティーの始まりを待つ淑女達がおめかしをし、友人と恋バナを咲かせている中、ひとりポツリと部屋の隅で誰にも交わらず1人で参加表を見ているアーリーがいた。クレアはその見慣れぬ彼女を見つけ即座にクーンから飛び入り参加した噂の麗人と気がついたが、声をかけようか躊躇していた。
クレア「彼女がアーリー・・・」
そう頭の中で呟き彼女をじっと見ていると、目線を感じたのかフッと笑みを向けられ思い切ってアーリーに声をかけた。
「失礼ですが、今回飛び入りで参加するクーン王族の方でしょうか」
「ええ、そうですわクーンから来ましたの(ウフフ、見つけちゃった!」
やはり予想通り噂で持ちきりのアーリーだった。自己紹介を済ませクレアは親善大使としてのアーネストの評価を事を聞くとこれも予想通り高評価、すかさず参加理由を聞くとやはり彼を連れ帰る事を前提に考えているような事を言い放ち、胸のモヤモヤが増えていく彼女だった。
「それって、有能な男性で結婚相手になるなら誰とでもって事なのですか?」
「もちろんそうです爵位は全く関係ありません、ただひたすら有能な方を探しています」
「そうですか・・宜しければアーネストさんの評価を教えてください」
「クレアさん、あなたはアーネストさんに拘っているようですが、貴方が気になる彼より上位貴族の方ですよね」
「んっ!(この人鋭い!けど何で知っているの!」
「どうしまして?」
「ひょ、評価を聞きたいだけよ」
「あらあら、上流貴族の貴女が下級貴族のアーネストの事を気になるって事はもしや」
アーリーは既にクレアの深層意識を読み取り、アーネストに好意があることに気がついていた。それに探していた貴族令嬢はこの子だ、心のなかでガッツポーズをしていた。
「そ、そんな事はありません。大使としての評価が聞きたいだけよ(汗」
「率直に言いますと彼はクーンに是非とも欲しい人材ですわ(笑」
「やっぱり・・・そうですよね」
「そうですよ彼は間違いなく稼ぎます、既に会社経営なさっていて実力もお持ちですわね、クーンでも色々改善して頂きましたわ」
「!!そこまでご存知なのですね、わ、わ、わたしは親善大使としてのアーネストを評価しています」
既に目が泳ぎ心情が丸わかりのクレア。アーリーは吹き出しそうになるがここで笑って関係を悪くする訳には行かない。だが反応が面白くアーネストをネタに心を揺さぶろうとしていた。
「そうですよね、でなければ彼の事は気になりませんよね、アーネストさんが気になっているクレアさん」
「うっ!そ、そんな事まで話したのでしょうか・・・」
「いえ、彼からあなたの名を直接仰りませんでしたが”箸にも棒にも引っ掛からない”とは申しておりました」
「・・・(駄目だこの人は相当感がいい、頭もキレる・・絶対勝てない」
クレアは僅か数十秒話しただけで、相手の心情を読み取りズバズバ的確に言い当てるアーリーに勝てないと確信してしまった。反則技を使っているとは言え、格の違いを見せつけられ落ち込むばかりだ。
「パーティーの間に他の男性の品定めをするつもりですが、今の所アーネストさんが一番の有力候補ですわ。クーンに来てくれるのなら高待遇を用意しております」
「何がなんでもクーンに連れて帰ると、ですが彼の家は下級貴族ですよ王族と釣り合いが取れませんわ」
「ええ勿論、承知しています、くだらない貴族遊びには付き合っていられません」
「クッ!下らないとは!あなた何様のつもり!」
クレアに対し挑戦的なことを言うのは、アーネストを悩ませている格の違いがアーリーはとても嫌いなのだ、彼女の深層意識も同じ状態だと知っていてわざと試し真剣に悩んでいるのか見極める為だった。
「私はアーリー・メンディエタ女王の勅命の元、此方の会に参加しております。結果を残すのが私の使命ですからお気に障ったのでしたらお詫びいたします」
そう言い放つと軽く頭を下げるアーリー。
「貴女は、そもそも真剣さが違うと・・・・」
「はいクーンの未来を担う婚姻相手と、階級で悩む男女の未来とどちらが重要か、賢い貴女でしたらお分かりになりますわよね」
「私だって貴族の縛りがなければ、実力があり聡明なアーネストを選んでいます」
「ふふ、アーネストが貴方を好む理由が分かりましたわ」
自分が挑発され試されていることに気がついたが、負けたくない気持ちが、アーネストを思う気持ちがクレアを動かし、自分の考えを吐露すると胸の引っ掛かりが取れたのか、逆にアーリーに悩みを打ち明けた。
「アーリーさん・・・・いま・・物凄く悩んでいます。すみません、初対面の方にこの様な事を言うのは失礼だと思いますが」
「はい、そうでしょうね、アーネストさんから貴族の事は伺っております。気になさらず私があなたの立場でしたら・・・」
「でしたら?」
「全力でアーネストさんを口説いてアタックします!爵位など気にしませんわ。こんな事で悩めるデルタリアはとても良い国ですわね」
「ッ!・・・と、申しますと」
「ここまで繁栄したのは先人たちの努力の結果なのです、私も随分努力してきましたがクーンはまだまだ発展させなければなりません。自然と共に生き、人々の暮らしを安定させるのは至難の業です」
「そうなのですね、正直申しまして貴方に勝てる自信が有りません。真剣さが余りにも違います・・・」
「気になさらず悔いが残らないように結果を残すだけです、お互い頑張りましょう」
「はいアーリーさん、有難うございます」
スタッフ「それでは皆さんお待ちかねの対面のお時間がやってきました。こちらにお集まりください」
「さあ、行きましょうクレアさん」
「・・・・はい」
同じアーネストを認め、すごく前向きで前を見て行動するアーリーを見て感じてクレアは急速に彼女の事が羨ましくなり、同時に好感を持つ様になっていた。
アーリー「・・・(シメシメ、彼女を引き込めば完璧だわ」
とんでもないことを考えているアーリーは獲物を狙っている豹の様に、クレアの後ろ姿をジッと見詰めていた。
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