動き出したディスティア帝国
アデールは決心し、ディスティアが接近してきます。
秘書「はぁはぁ、女王からの勅命です。直ちに取り止めよとのことです」
親戚「えっそ、そうなの。わかりました」
アシル「。。。。(なぜに中途半端な事をする」
足止めと言うか説得中の親戚は勅命が下り話し合いは急遽取りやめ。異変を感じ急いで別荘に向かったアシルは警備責任者ランゲの防弾ベストを見て驚く。
「ランゲ撃たれたのか、まさかアデールは」
「親方様、アデールお嬢様は無事でございます。撃たれ気絶している間にアーネスト陛下が少しお話をした様です」
アーネストは別荘を出る際、”ランゲ、君は撃たれ気絶した事にしてくれ”と言われ従っていた。
「アイツが直接来たのか・・・」
まさかのアーネストの行動に愕然と立ち尽くすアシル、急いで別荘の中に入ると窓を閉め切っていたはずの部屋は久しぶりに日差しを受け光り輝いていた。そしてアデールはテラスで1人お茶を嗜んでとても気持ち良さそうだ。アシルを見るなり微笑んだ。
「お父様、お帰りなさいませ」
「アデール無事なのか、何かされたのか」
「いえ、お話をしただけですわ、ですからもう暗い所に閉じ籠る必要が無くなりました」
「そ、そうか。。お前はそれで良いのか」
「はい、それが勤めでもあります」
「許してくれアデール、あんな奴の所に嫁がせる俺を呪ってくれ」
「いいえお父様、アーネスト陛下とお話ししました。とても誠実で優しい方ですわよ、アデールは好きになれそうです」
「そ、それは男を知らないからだろう、だからだ」
「うふふ、陛下の思考がそう教えてくれました」
アデールはアーネストの思考を読んでいた、もちろん読まれる事を前提で精神防御を外していたのだ。
「そうなのか、嘘じゃないのか」
「ええ、読まれても良いように障壁を外していました。申し訳ないと思う意識と慈愛に満ちた気持ちが読み取れました」
「そうか・・・」
流石にアシルはこれ以上アデールを引き止める理由が思い当たらなかった。
ーー
アデールと別れたアーネストは城には向かわずエルフォードに戻った。それは緊急の連絡が入ったためだった。因みにアーリーは大好きなエルフ酒をちょっとだけ飲んでいたので放置した。
「ラッセル、緊急連絡で秘匿回線とはアイツらが動き出したのか」
「ああそうだアーネスト、ディスティア軍と武力衝突寸前だ、援軍として来てくれないか」
「わかった、詳細を送ってくれ」
「もう送ってある、確認してくれ」
フェデラリー共和国との国交が始まり周辺警戒を行っていたデルタリア軍は、数週間前からディスティア軍との接触を何度か繰り返していた。最初はコンタクトも取らず遠方から観察していたが、最近になって射程距離ギリギリに砲撃を行い反撃の姿勢を見せると毎回撤退を繰り返した。だがしかし今回は戦艦の数がいきなり増えたのだ。
「なんだと20隻の艦隊だと」
詳細を見たアーネストは嫌な予感が走った。現在デルタリア宇宙軍はクーンの技術提供を受け30隻の通常型20万トン級戦艦を建造し運用。クーン宇宙軍はエルフォードを旗艦として、20万トン級戦艦30隻を保有している。
「アーネスト、多分全戦力じゃ無いよな」
「ああ、向こうは150隻以上保有している筈だ、こちらの出方をみてるのだろう」
知らせを受けフェデラリーに急遽向かいラッセルと合理、戦況を聞くと恒星圏外に艦隊が集結、デルタリア軍が近づくと威嚇射撃をしてくるそうだ。
「だが、このままだと戦争になるな」
「ふむ、フェデラリーを中継基地にするのは避けたいな、せめてアーブラハムだ」
フェデラリーは駆逐艦すら保有しておらず、主戦場になった場合甚大な被害が予想されていた。戦場になるならせめて同じ星団内のアーブラハムしか選択肢が無かった。
「アーリー聞こえるか、このままだとディスティアと全面戦争になりそうだ」
<わかった、予備兵を招集するわ>
クーンに戻っていたアーリーはこの重大な決断を速攻で決め軍備拡大に舵を切った。事前に面倒なメインフレームは組み上がっており、この時を待っていた骨組みだけの新造船は急ピッチに完成に向け急ぎ作業を始めるのだった。
「アーリー様、完成は10ヶ月後になりますが宜しいのでしょうか」
「ええ、ラインの防衛隊が破られるのはまだ先よ、今の時期に増強すればまだ間に合う」
「はい、仰せのままに」
ーー
同じ頃、フェデラリー共和国、大統領府公邸クレメンテの執務室に1人の怪しい男が突如現れる。
「大統領、ディスティア帝国交渉人ゾラン・ガヴィオラと申します」
この紺色のスーツ男の名はゾラン、40代半ばだろうか、もみあげから顎まで伸びる細めの髭を蓄え、身長は2m程と長身。精悍な顔付きで眼光鋭く中々の曲者に見える。
「なっ、どこから現れた!」
「大統領、お下がりください」
「ま、待て」
執務室の真ん中に現れたゾランは武器も持たずに、堂々と胸に手を置き軽く頭を下げ挨拶の姿勢を取っていた。即座に護衛が反応して銃を抜こうとするが、クレメンテは手を振り制止させた。
「ほほほ、冷静な判断ですね。いや〜ここは転送阻害装置もないから楽に入れました。では早速エドガー総統閣下の伝言をお伝えします」
「ッ!、ディスティアの使いか、グスタフを呼んでくれ」
「畏まりました」
近くにいた秘書官は冷静にスマホを持ち連絡を取ろうとしていたが、ジャミングしているのか繋がらなかった。
「無駄ですよ、電波は遮断されています。秘書の方動かないで頂きたですね、動けば殺します」
武器は見当たらなかったが、袖の下に何か武器を隠し持っているのだろう、ゾランは拳を握りしめ秘書官に向けるのだった。
「それで、伝言とはなんだ!」
「全捕虜の解放と全面降伏、今後ディスティア政府の管理下に入れとの事です」
「なんだいきなり荒唐無稽な要求は!」
顔色一つ変えず淡々と喋るゾランはじっとその冷たい目でクレメンテを睨んでいた。拒否は当たり前だろうと思っているのか、フッと笑みを浮かべ途方もない事を言い出す。
「ええ、こちらの要求は簡単です。受け入れない場合は殲滅戦と言うか皆殺しですね。お早めにご決断を」
遅かれ早かれこのような事態に陥ることは簡単に予想できていたが、いきなりの全面降伏し管理下に入れととんでも無い要求をしてきた。ディスティアとは平和的に交渉する余地はないらしい。即断を求めてきたゾランはクレメンテを嘲笑うかのようにまた笑みを浮かべる。
「対等な関係で交渉する気はないのだろう」
「あははご冗談を、こんな無力な国さっさと攻撃して皆殺しにすればいいだけなんですがねクレメンテ大統領」
「クッソ!」
ものすごく上から目線で畳み掛けるゾランは無力な国と言い放ち強気なのだが捕虜の居場所は知らないらしい。ディスティアの技術なら探査出来るはずなのだが・・・。
「んっ?おい大統領と秘書のマーカーが反応しないぞ」
公邸の警備室ではクレメンテと秘書に装着したマーカーがいきなり画面から消えていた。
「これって電波遮断されてませんか?」
執務室近くで待機する職員のマーカーが不安定に点滅を繰り返しているのを指差す。
「グスタフ副大統領に連絡、警備、いや警備兵を向かわせろ」
「はい!」
グスタフはフェデラリー親善大使の大役を務めあげ、半年ほどアーネストと共に行動し最近帰国。ファーストコンタクトから大使まで務めた彼の人気は急上昇。5カ国を見て周り一皮も二皮もむけて戻って来た彼はアーネストの影響もあり、歯に着せぬ物言いをさらに磨き上げ知名度は鰻登りに。クレメンテは次世代の大統領と捉え、その前段階の副大統領に指名したのだった。
「失礼しまーす」
そして呼ばれたグスタフは軽くノックした後、返事を待たずして入って来た。
「チッ、近づくな大統領を殺すぞ」
「俺、副大統領なんだけど、誰だお前知らん顔だな何しに来たんだよ」
「ディスティアの手のものだ、捕虜解放と無条件降伏勧告を伝えにきた」
「おい、おっさん失礼極まりない奴だな、これがディスティアのやり方なのか?お前が誰かを殺せばその3倍の捕虜を殺してやるぞ!」
「なんだと、さっさと解放しろ」
「ふん、その言いぶりだと捕虜をどこで収容しているのか探せてないようだな、アハハ」
「くっ!」
真意を言い当てられてオマケに高笑いされると、一瞬動揺してしまったゾラン。そう、ディスティア軍は捕虜の居場所を特定出来てなかった。それもその筈、女性達は日焼けを嫌い、赤外線、紫外線吸収素材で出来た長袖長ズボン、頭には同じ素材の被り物ですっぽりと覆い農作業を行うので人感センサーに全く探知されない。レーダー探査はジャミング装置の影響で不明瞭なのだ。
「そうだな、少し返してやるからフェデラリーに手出しするなよオッサン」
実はアーネストから軍事力の差についてことあるごとに説明を受けていた。ディスティアは必ず捕虜がどこかに収容していると仮定し探し、発見した場合、強襲艇か何かを使って奪還してくるはずだと言われていた。そしてゾランは”捕虜の解放”と言ったので探しきれなかったと推測したのだ。
「ふざけるな、お前らの軍事力など取るに足らん」
「あっそ、攻撃して来たら10人ずつ処刑でもしようかな、それか娼館にでも放り込むか、ここじゃ人気者だから結構稼げるわ」
「偉そうにどっちの立場が上か分かっているのか」
「あほ、上下じゃないんだよ、解放してもらいたいならそれなりの誠意ってもんが必要だろ」
「ふん、今回はこれくらいにしてやる!」
「おい、おっさん、次回来るときはちゃんと連絡しろよ」
「うぐぐ、うるさい!」
顰めっ面に変わるゾランはシュンと転送して消えていくのだった。
「グスタフ君助かったよ、ありがとう」
「クレメンテ大統領、アーネスト陛下からディスティアの考えを聞いていたので強気に出たのです。輩のような連中と大して変わりありません」
「そ、そうか。私は荒事はあまり経験がないのでな・・」
共和国になって平和な日々が長かったのだろう、クレメンテは粗暴な交渉人の前で少し萎縮したようだった。グスタフがアーネストと過ごした半年間は驚きの連続だった。一緒に行動した事で随分と成長したのだった。
「大丈夫です、荒事は私が引き受けます。大統領になる男ですので!」
「そうだな時代が変わって来たんだな。次回の選挙は君を推薦するよ。今後の事で相談があるのだが」
「はい、何でしょう」
こうしてグスタフは大統領になる道を確実に一歩ずつ登り始めるのだった。
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