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それぞれの誰かの近況。下巻

お楽しみください。

「もう!ほんと失礼しちゃうわ!」


怪訝な表情のアシルがそのまま部屋を出ていくとエルシーは文句を言い放ち、同時に奥に隠れていたアーリーが姿を現した。


アーリー「ふふ、私が囲ってますと言っていますね」


エルシー「ええ、親戚中に聞いたのですが溺愛しているようで、何処かに隠しているようなのです」


「流石に待ちすぎたかしら」


「このままですと適齢期が過ぎるまでずっと幽閉したままですよ。それはそれで不憫です」


「そうね、それは困ったわね、あなたはアデールのこと知っているの、わかる範囲で教えて頂戴」


「はい、最後にあったのは5年ほど前でしょうか、言い方は悪いですが普通の恥ずかしがり屋の可愛い女の子です」


「アシルは何故そんなに頑固に拒否るの?」


「あれ?以前映像見せませんでしたっけ?懇親会の時です」


「・・・・酔って忘れた、覚えてない!」


エルシーは確かに懇親会の時に見せたはずだった。酩酊女王様は思いっきり楽しんでいて忘却の彼方に飛ばしたそうな。


「もう!アーリー様、アデールのこの写真を見れば必死に守る理由がわかります」


エルシーはタブレットにアデールの写真を何点かアーリーに見せる。もちろん追加で集めた写りの良い物に差し替えてあった。


「ああなるほどね〜、こりゃ可愛いわ。妹も綺麗だけどアデールは別格ね拒否する理由がわかるわ〜、それにしてもレベルの高い写真ばかりね」


その画面に映るアデールは、派手な顔立ちのアーリーとは全然タイプが違い、どちらかといえばクレアをさらに可憐に細く仕立てたような超美形美少女だ。その中の何点かはプロに頼んで撮らせたのか物凄くいい笑顔や、可憐なベストショットが含まれていた。


「でっしょ〜、その美貌と奥ゆかしい性格が相まってアシル的には親心をくすぐられ絶対的守りたいのでしょうね〜」


一緒に写っている妹カティーナもそれなりに美人なのだが、アシルがアデールを溺愛する理由はなんとなく理解できるのだった。


「ふーん、そうなんだ、まっアーネストが気に入れば問題ないわ」


「エルフ族の中でもアデールは可憐な部類に入ります。アーネスト様が拒否するとは思えません」


「あのねエルシー、私もクレアも相思相愛なの、だからいくら綺麗でも性格が悪ければアーネストは拒否するよ」


「私が知る限り、奥ゆかしく性格の良い女性でした。何ら問題はないかと」


「わかった、もう少し待つわね」


「そうですね、間も無くお子様が生まれて来ますからね!そうだ、シルクのオムツをお送りしますね!」


「あーそれ嬉しいけど、私大雑把だから使い捨てがいいな」


「それは侍女に任せれば良いのでは、お子様にはシルクのライナーが一番ですよ。もうアーリー様ほんと羨ましい・・・」


「う、うん、そうね」


エルシーが中々懐妊しないことを知っているアーリーはこれ以上断る理由を思いつかなかった・・。


ーー


<フェデラリー共和国>


フェデラリー大統領府近くを、モクモクと煙を上げながら走って来るボロボロのエアーシャトル。正門前に止まると同時に、バシューと火を吹いて燃え上がり、慌てて数名の男女が飛び出してきた。


「うわぁ、ヒャンド人が来たぞ」


「よくもまぁ、都合よく毎回燃えるな〜」


「ほんと、あれ警備の邪魔なんだよな」


正面玄関を警備していた兵士が顰めっ面でその様子を見ながらボヤいていた。そう毎回オンボロで乗り付け燃えて放置するのだ。もちろん帰りは大統領府で使っていたお古を貰って帰るのがお約束だ。


「ふん、クレメンテ大統領と面会をしたいのだが」


ヨレヨレのスーツを羽織り警備員に偉そうに言い放つそいつは、ヒャンド自治区の代表者エウヘニョだ。鼻は低く頬は張り出し平べったい顔で、ボロいスーツと相まってとても貧素に見える。


「えーと、ヒャンド自治区代表のエウヘニョさんですよね、毎回毎回燃えてますが今回は撤去費用を請求しますのでお支払いください」


慌てて職員が対応の為出てきたが、いきなり処分費用を払えと強く言い放った。


「ふざけるなここは公道ではないのだろ!大統領府の敷地内だし緊急脱出したんだ免責だ、だから支払わん」


とてもふざけた事を当たり前の様に話すこのエウヘニョにはそもそも恥という観念がないらしい、思いっきりドヤ顔だ。


「そうですか、上司から言われておりまして支払わない場合、帰りのシャトルはご用意しませんので公共交通機関でお帰り下さい」


「仕方ない、もうこの手は使えんのか・・・」


もう何度目だろうか、最初は敷地内の駐車場で2回ほど燃え、危険極まりないと駐車を拒否され、次に送迎だけと言い敷地内に入ると何故か都合よく煙が上がり燃えた。当然ながら入場禁止になり、今回は敷地内ギリギリを狙ってきた。


「そうね、早く支払ってくれよ、ほんと迷惑だわ」


「俺に向かってなんだその言い草は不敬だ、不敬!」


「ふん、週刊誌にはいいネタが揃ったよ、毎回放置で税金を使い処理するポンコツシャトルの持ち主はヒャンド地区代表だって売り込んじゃおうかな〜」


「クッソ!分かった払うよ」


「撤去代金は5万だ、名義変更はそちらでやってくれ」


「ふん!」


職員に軽くあしらわれ苦虫を潰した表情に変わるエウヘニョ。ここで揉めても帰りの足が無くなるだけなので、渋々撤去費用を払うことにした。そしてレッカーはすぐに呼ばれ残骸を運んで行くのだった。


「クレメンテ大統領お久しぶりになります」


「相変わらずいきなり来るんだな君は」


数十分後、エウヘニョは無理やりアポを取りクレメンテと面会を果たした。以前、会いたくないので放置した時もあったが、面会予約者に”早く済ませろ俺が会えない”と言い放ち、昼時になれば飯は出ないのか?夕方になると大統領はそんなに忙しいのかと、秘書課に直接クレームを入れて来る中々の厚顔な奴なのだ。


「ええ、テレビを見てクーン精霊王国のアーネスト陛下に挨拶をしようかと思い、馳せ参じました」


「アーネスト陛下もう出立したよ、次は数ヶ月後になる。会いたいのならもっと早く来なければ無理だな」


「はぁ、これでもテレビを見て慌ててきたのです。自治区は遠方なので仕方ありません。また次の機会を待つとしますか」


ちなみに自治区に駐機場は存在しシャトルもあるのだが、今は整備不良で翼を休めている状態だ。数年前、3機ほど貸し与えたが整備費用をケチり共食い整備を始めあっという間に飛べなくなるのだ。


「要件はそれだけか?」


毎回なにかしらおねだりしているのだろう、クレメンテは怪訝な表情に変わるのだった。


「今回はなにもありません、強いて言えばシャトルが壊れ帰りの足がないことくらいです」


「またそれか、ヒャンド自治区はいつになったら自立するんだ」


「私はもっと働けとは言ってますが、なかなかどうして」


「ふん、この前来た士官候補生は文句ばかり言って、挙げ句の果てにはカンニングして退学だ、金融関係の奴らは違反ばかりしてもう少しで逮捕されるところだった。楽して稼ぐ事しか考えんのか!」


「それは個性があって宜しいのでは」


「サッサっと帰りやがれ!」


さすがにクレメンテはキレて追い出すのだった。


秘書「大統領、あの自治区はどうにか発展できないのですか」


「無理だ、もう数百年支援しているが与えられる事が普通と思い働かない連中だぞ、異物は所詮異物なんだよ!」


その自治区に住むヒャンド人は太古の昔からフェデラリーの異物と呼ばれていたのだ。


「まぁ、選抜者を迎え入れましたが散々な結果でしたね」


「全くだ、全然使い物にならん!」


クレメンテが怒るのは仕方がなかった。そのヒャンド族は近代国家が誕生した時代ですら上下水道は無く簡素な小屋に住み街は異臭を放っていた。


各国首脳は自立した生活を送らせるために多岐にわたる支援をするのだが全て無駄になった。井戸を掘れば装置を壊し地金として売り飛ばし、学校を作っても子供を通わせず農作業に使う。食糧支援を行えばそれを頼りに働く事をやめ、自給率が下がりさらに貧困化する始末。要するに働かないのだ・・。


「やはり放置しかないのでしょうか?」


「最近は自分たちの境遇が悪いのは共和国のせいだと言って責任転嫁しているんだぞ、適当に支援するしかない」


「アーネスト陛下に会わせるのでしょうか」


「当分の間は合わせるつもりは無い、フェデラリーの恥部だぞ」


「そうですね・・・」


「ここだけの話なのだが、最近、人権擁護派が裏で扇動して何かたくらんでいる。奴らはヒャンド自治区を固定化して既得権益を得ようとしているんだ」


「大統領、その中に諜報部員を潜り込ませて独立運動の気運をたまめませんか」


「おお、団体を逆に利用するのか」


「はい、実は諜報部を頼り相談していまして、プランは既に立ててあります」


歴代大統領は解決策を常に考え実行したが全て無駄だった。クレメンテも同じく思考を巡らせたが良い案が思いつかない。それを知っていた秘書は諜報部に相談をし解決策を模索していたのだ。そう、諜報部員を送りこみ人権擁護派の信頼を得た段階で独立の気運を高めさせる裏工作を行うのだった。


「宜しい人選は任せた。独立の機運が高まったら全面支援するからな」


「はい、お任せください」


大統領の許可が降りた数日後、潜入する諜報部員がクレメンテと面会していた。


「君がサザーランド君か」


「はい、クレメンテ大統領!サザーランドは今回の作戦の為に変えた名前です」


呼ばれたのは諜報部きっての美男子キーファー・サザーランド22歳だ。本名はもちろん非公開だ。


「中々の美男子だな。君の得意技は女性たちを懐柔するのか」


「はいそうですが、任務の為なら性別は問いません」


彼を一目見ればその甘く危険な美貌に一瞬で引き込まれ、そして巧みな言葉使いで口説かれるのだ。もし一度でもベッドを共にしてしまえば彼が持つ特殊能力”淫魔”の餌食に。それは唾液を通じて体内に入ると強烈な快感を与え、さらにシナプスに作用して何度も求めたくなる中毒症状(欲情)が現れるのだ。ちなみに彼の能力は性別に関係無く作用する。


「わかった、それでは君に特殊任務を与えることになった。人権擁護派の信頼を勝ち取り、ヒャンド人独立運動の機運を高め行動に移させるのが仕事だ。もちろん手段は選ばない」


「承知しましたクレメンテ大統領、きっとご満足できる結果を残します」


「おお、頼んだぞサザーランド君」


「はい!」


こうして運命を握る男が裏舞台に深く潜り込んでいくのだった。そして1ヶ月後、男女が交わった後のベッドの上では・・。


「ねぇサザー、今日も凄かったよ、何でこんなに気持ちがいいのかな?」


そう話す女性の名はペラジー、ヒャンド人にしては珍しく赤い髪を持ち、ミランダほどではないが彫りが深く顔のパーツも大きくバランスが取れてそれなりに美人だ。


「それはね君が僕の事を心の底から欲しているからだよ」


サザーランドは20代後半に偽装しペラジーには2歳下と告白していた。


「ウフフ、そうね、ねぇ貴方は誰のために働いているの」


「僕はそう、全てのヒャンドの人達が幸せになればと願っているだけだよ」


「うふふ、人権派の若手やり手弁護士が私と良い仲なんて誰も思ってもないわよね」


「人権派の連中は関係ない、君を愛したからこそ僕はここにいるんだよ、マイハニー」


サザーランドは人権派の連中に協力する若手弁護士に化けている。勿論、諜報部が職歴を改竄し資格も取ったことにしてある。


「ああん、旦那が死んでくれれば良いのに、アン!」


「君は僕の理想の女性なんだ、そんなこと言わないで。けど旦那が死んでくれればずっと一緒に過ごせるよね」


話をしながらサザーランドの左手はペラジーの下腹部を刺激していた。


「ンッ、もう、サザーたら!私も一緒にずっと過ごしたいよ」


「ほら、もう準備ができてるよ」


「ああん、お願いサザー欲しくなってきちゃった」


「僕もだよペラジー」


サザーランドのお相手は8歳年上のヒャンド自治区エウヘニョ代表の娘だ。もちろん既婚者なのだが、ある時、人権団体主催の集会で出会い、甘いマスクに魅了され体を交える関係にまで発展していたのだ・・。

宜しければブクマ評価お願いしまーす。

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