ロレーナは獣人を知り、捕虜の処遇が決まる。
捕虜達は南の島に送られます。
偵察艦隊の武装解除が行われ携帯用の武器の類がコンテナに積まれエルフォードの格納庫で選別作業が始まっていた。その後部ハッチに一台のシャトルが入ってくる。勿論アーネスト達だ。ディスティアの船とは違い空気遮断膜が装備されていてそのまま侵入してきた。
「全員敬礼!」
「うわぁ、動物ばっかだわ」
「うひゃ、敬礼されたし」
エルフォードに降り立ったロレーナ達は軍服を着た獣人達の姿を見て驚いていた。さらに一眼見て士官とわかると作業員達は通り過ぎるまで敬礼を行なっている。
「アーネスト陛下入室!」
「ご苦労さん、ディスティアの士官を連れて来た。彼女はロレーナ司令官だ」
アーネストが入ると一斉に立ち上がり敬礼。そしてロレーナはディスティアの司令官と話すと再度ロレーナに向かって敬礼を送った。
「ロレーナ司令に敬礼!」
「えっ、わたし敵なのよどうしてよ」
「ロレーナ司令、敵だとしても上官に挨拶を交わすのさ、最低限の礼儀だからね」
「凄いね、統率が取れているのね、けど命令は受け入れないでしょ」
「まぁ、無理難題言わなきゃ従うはずだよ」
2人の会話を聞いていた他の士官は驚いていた。まぁあの船が緩すぎるのだろう。。
「君の艦隊とは違い悪いが階級はちゃんと守るぞ」
「はは、それに関しては何も言えないわ、酷いもんね」
次にアーネストは士官達を艦長室に招き、クーンの現状を映像を見せながら説明すると何となく理解したようだった。
「あの・・陛下、アルビーンにはあえるのでしょうか」
「知り合いなのか?」
「ええ、士官学校の先輩でして、個人的な付き合いがあります」
「アーブラハムに寄っていくつもりだが、面会できるかどうか分からない」
「そうですか、分かりました。。」
何故か先輩と言いながら、何故か微妙な面持ちに変わるロレーナだった。
「悪いがクーン到着するまでこの部屋で過ごしてくれ」
「意外と待遇いいのね、独房かと思ったけど」
ロレーナ達は案内された部屋を見て驚いていた。独房では無くちゃんとした部屋なのだ。
「んっ?捕虜の気分を味わいたいならそれなりの所を用意するぞ、工員用のタコ部屋なんかどうだ?活気溢れてすんごいぞ」
「わわわ、すみません、ここで充分です!」
士官用の部屋に数台の簡易ベットが持ち込まれ多少狭くなったが、彼女達はクーン到着までの間快適にすごせるのだった。因みに工員用の部屋は畳2枚ほどのプライベート空間は存在するが、終始喧騒が絶えることなくとても騒がしいのだ。
ーー
数時間後、秘密裏に大統領府を訪れているアーネスト達は、女性捕虜についての処遇について話し合いをしていた。
「グスタフ議員、捕虜1300名の身柄は任せたよ。所長には士官学校の教官を抜擢した」
「お任せ下さい大統領。女性専用収容所の手筈は終わってます」
グスタフは自信ありげに話すが女性収容所はほぼ空きがなく、飲み水が確保できる無人島に全員隔離する事が決まった。現在、急遽プレハブ小屋を立てている最中だ。その大まかな道筋を決めたのはあの立ち直った大統領だった。前回とは違いズバズバと判断していた。
「大統領、アイアス司令と話し合った結果、お礼と言っては何ですが核融合技術の提供を決めました」
「それは有難い、これで我が国の燃料問題が解決する。出来れば反重力装置の理論だけでも教えて頂けないか」
「わかりました。それではトップクラスの技術者を選抜して派遣してください」
表向きは捕虜の費用負担の代わりに技術提供を渡すとなっていたが、実はその話には裏があった。ディスティア帝国は搾取を目的としてフェデラリー侵略を想定していたが、それなりに反発が予想され泥沼化する恐れがあるとアルビーン司令から聞いていたのだ。そこでアーネストは技術提供する事で軍事力、防衛力を高め、植民地政策は無駄と思わせる思惑があったのだ。
ーー
ベス「ナーンにもないね〜、あの小屋に住むんだー」
ベス達捕虜1300人はフェデラリーの南半球近く周囲20キロほどの無人島にやってきた。周りを見渡すと確かに何もない。この島は農地として利用されている所だ。林が点在しているがほぼ平らな地形だった。
「あのプレハブに住むんだ、しっかしここは暑いわね」
「あれが完成するまで野営らしいよ」
2階建の仮設住宅工事が既に行われ半月後には移り住む予定だ。全て完成するまで野営で対応することになった。そしてベス達はグランドのような広場に集められ整列させられていた。頃合いを見計らい、カーキー色の制服を着た髪の長い1人の女性が壇上に立つのだった。
シェーラ「ここの管理人兼、最高責任者のシェーラよ、今日から所長と呼びなさい。前職は軍の教官だったから規律、階級を守ら無い馬鹿にはそれなりの懲罰が用意されているので命令は絶対遵守するように」
「えー、それって人権無視してませんか〜」
「貴様は誰だ、名を名乗れ」
「ベスでーす!」
「よし、自己紹介も満足にできんのか、貴様は懲罰第一号の記念として選ばせてやる。何も無い無人島で1週間1人で生活か、トイレ処理係として3週間のどちらか選んでいいぞ、なんなら作業員の”休憩所”として働くか」
「はーい、無人島で生活しまーす」
鬼の形相で睨まれ怖くなったベスは、3択のうち一番楽そうな無人島生活を即座に選んだ。いくら好色でも休憩所としては働きたくないらしい。
「そうか無人島を選ぶんだな、ベス、君は見た目と違ってタフなんだわかった」
「えっ?タフ?何それ島ってすんごいの?」
「ああ凄いぞ、誰か説明してやれ」
何も知らないベスにシェーラの部下が無人島生活の説明を始めた。その島は小さく周囲500m程で、日除けとなる木々が数本のみで基本砂浜だけだ。もちろん水と食料は配給される。
「なーんだ、日焼けするけど寝てればいいや」
「あー、砂浜で寝てると小さな吸血昆虫が纏わり付くぞ、昼間はテントの中は暑くて無理だ」
「えー、それじゃ長袖着なきゃね」
意外にもまだ前向きだったが、次の説明を聞き慌ててトイレ処理係に変更するのであった。
「夕方は吸血コウモリが飛来して追いかけ回されるぞ、テントを食い破って中に侵入してくる」
「うんうん、まだそれ位なら。火を起こせば大丈夫」
「夜は巨大な虫や蟹、ワームの類が上陸して、そうね貴女は小さいから齧られるかもね」
「はい!トイレ係に変更しまーす!」
そしてベスは”汲み取り式”トイレの掃除と汚物処理を毎日やらされるのだった。もちろん1300人分は膨大な量だ。午前中に回収を済ませ、午後はひたすらトイレ掃除の日々を送ることになった。そして数日後、食堂での出来事・・。
「うわぁ、ベスあなた臭いわよ!」
「そう?わたしは気になら無いけど」
「うわぁくっさ、あっちに行って」
「・・・」
昼飯時、配給食をトレーに乗せ席に座った早々、超臭いと皆から文句を言われた。
「悪いけど食事中は席を離してくれない」
「・・・はい」
ベスが座ると周りの数十人が一斉に睨み邪魔者扱いされ、居た堪れなくなり離れて行くのだった。原因は勿論汚物臭だ。それは衣類や髪の毛に染み付きやすく全身から異臭を放っていたのだ。自分は慣れてしまい感じないのだが、他の人はそういう訳にはいかなかった。
「うふふベス、結構堪えるでしょ」
「はい・・(泣」
その様子を見たシェーラは惨めなベスに声をかけてきた。
「もうね貴女の代わりと言うか交代要員の2人が待機しているのよ、無人島に行きたくないって言いうから一人当たり2ヶ月の懲罰にしてあげたわ」
「うわぁ〜2ヶ月ってそれヤバすぎ、所長、宜しければ原因を教えてください」
「性行為を禁止したんだけどね、隠れてやってたのよ」
「ウッ、それってもしかして・・」
「あら、あなたそう言えば同居人と仲良く一緒に寝てるんだってね。けど最近は臭くて寝てくれないでしょ」
「そうですね・・」
そう、ベスの行為もバレバレなんだとさ。高性能監視カメラと高性能マイク、この組み合わせだ、バレ無い方がおかしいのだ。
「うふふ、流石に連チャンはきついから許してあげるわ」
「はい・・もうしません」
見逃して貰い小さくなっていくベスは懲りたのか禁欲生活を誓うのだった。悲惨な懲罰生活は周知されたが、時折我慢出来ない馬鹿には更にえげつない懲罰が遠慮なく与えられ、徐々に規律正しい生活になっていくのだった。
ーー
バシューンっとエルフォードがアーブラハム近くにジャンプアウトした。
「は、早いよ、この船は早すぎ!」
ロレーナ達士官はエルフォードの艦橋内を見学していたのだが、ジャンプ起動からアウト迄の短い時間に驚いていた。そして数十分後、眼下に見えてきたアーブラハムの首都近くの捕虜収容所に降り立つためシャトルに乗り込んだ。
「この星にアルビーンがいるのね・・・」
窓の外を眺めながらロレーナは1人そう小さく呟いた。
「これなんですかね、嫉妬心でしょうか仄暗い不気味さを感じます」
他の士官の不安感とは違う別の感情を読み取り、クレアはアーネストに答えを問いた。
「何か渦巻いているね・・それと小さな意識を感じる」
「ええ、急に意識が芽生えましたねこれは間違いありません、アルビーンさんと関係あるのでしょうか?」
「何かしらありそうだね」
そして収容所に降り立ったが、ロレーナから変な感情と意識が読み取れたので個別に話を聞いて見ることにする。
「ロレーナ司令、アルビーン司令と面会したい理由を教えてください」
「物凄く個人的なことなのですが彼の子供を妊娠しました。あっ、もちろん不倫とかじゃ無くて、旦那でもなくて、不妊治療の一環で精子の提供を受けて・・」
「そう言う事でしたか」
詳しく話を聞いたら自分の旦那さんが放射能事故の影響で無精子になり、弟のアルビーンに精子の提供をしてもらい第二子を産むことを決めたそうな。
「報告と言うか、彼も心配してくれていたので直接お礼を言いたくて」
「そのような事情でしたらアルビーン司令との面会許可を出します」
「ありがとうございます」
思ったより時間があったのでディスティアの士官同士の面会を許し、ロレーナはクレア監視の元、個別面会を行った。
「アルビーン、間違い無いわ、わたし妊娠したよ」
「そうかこれで兄貴も喜ぶな、だがそれを理由に帰ることは不可能なんだろ」
「ええ、私も捕虜ですからね、戻ったら確実に死刑ですよ。子供はクーンで産むことになりそうです」
「アーネスト陛下はクーンで庇護すると話していたぞ」
「えっ、私聞いてないよ」
「アーネストがアーリー女王の許可を取り特例ですが捕虜としては扱わないそうです」
事情を知ったアーネストは三人で話し合い、アーリーは同じ妊婦同士なので共に生活すればいいと即断したのだった。
「クレア様は知っていたのですね」
「ええ、3人で相談して決めました」
「そうですか、ありがとうございます」
「できればロレーナ指令だけ妊娠を理由に送り返そうと考えましたが、他の士官の方に相談しましたが止められました」
「ええ、それが、その判断は間違いありません・・」
捕虜になりクーンで出産することがほぼ確定のロレーナは複雑な表情を浮かべていた。
「ロレーナさんは子供のことが心配で不安だったのですね」
「はい、なんて言って良いやら、捕虜ですし・・本当にありがとうございます」
心配事が少しは解消されたのか、ロレーナの仄暗い意識は消えていた・・・。
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