輩、やっぱ出現
あの街に繰り出しますが・・・。
「ねぇベス、たしかこの辺りよね前回あの男達に出会った所って」
またあの街に戻ってきた2人。信号を渡ればあの界隈に入ることになるのだが、前回は渡り切ったところで道端に停めてあったシャトルからあの輩の2人が現れたのだった。
「大丈夫ですよ気にし過ぎです。今日はシャトルが止まってませんよ」
「ええ・・」
ベスは全く気にせず横断歩道を渡り、ロレーナは周囲を警戒しながらその街の中に入っていくのだった。
「おお、あの方は姐さんでは無いか、ここで待っていて正解だった」
何故か先日電撃スタンで撃退した輩が2人を見つけ、嬉しそうに近づいてくる。
「兄貴ゆっくりですよ、刺激しちゃまたバババって来ますよ」
「おう、たしかにそうだな、ここで待とうじゃないか!」
ロレーナとベスを見つけた輩は、歩く事をやめ道端で軽く頭を下げ2人が近づくのを待っていた。
「あれあれ〜、あの2人この前の奴ですよ〜、スタン準備しましょう!」
「ぎゃー、勘弁してー」
ベスが見つけ冷静にスタンの準備、艦長は前回の事を思い出したのかトラウマなのか超嫌がり腰が引けて今にも逃げ出しそうだ。
「姐さんお疲れ様です、この前は大変失礼致しました」
「はっ?」
「えっ?」
前回と同じく拉致られると思いスタンの準備をしていた2人は、その言いように虚を突かれポカンとなった。
「兄貴、敵意がない事を述べないと、それとあの件のことを」
「おう、あっしはこの辺りの闇金連中を束ねるルイスと申します。ご相談があり是非ともお話を聞いて貰いたくて探しておりました」
ルイスはとにかく平身低頭でベスとロレーナに対し頭を下げ敵意がないことを表しながら、頼み事をしてきた。
「艦長、話だけでも聞いてみませんか?金の匂いがします!」
「いや!あんたが仕切っていいわよ」
「はい!それで要件てなんなの?」
「ここでは何ですのでお茶でも如何でしょうか、ご案内致します」
金の匂いに敏感なのかベスがその場を仕切り始め、そしてルイスの話しを聞く為に2人はカフェに向かうが・・。
「オラオラ、姉さんがお通りだ!どけ!」
「うわぁ!」
「あのー、写真を・・」
「ゴラァ!お前殺されたいのか!」
「す、すみませーん」
途中、ルイスが先頭でオラオラ歩きで近づいてくる男達を脅し蹴散らし、メンチを切って歩くので誰も近づく事ができなかった・・・。
「ふう、悪いわねお茶代出させて。それで話ってなんなの?」
「いえ、お手を煩わせる手前この位当たり前です。はい、実は資金回収の事なのです」
強面ルイスは低姿勢で丁寧に説明を始めた。彼らは支店のまとめ役なのだが、借金回収の一部も担っていた。それは勿論回収が難しい案件ばかりだ。
「貴方の強面なら見ただけで払うんじゃないの?」
「いえ、それがですね相手も商売人、結構強かで困っているんです。実は法律が厳しくて光り物やチャカの類が使えないのです」
「あー、だから治安がいいんだ」
「はい、銃刀法が厳しくて少しでも刃が付いているだけで引っ張られてしまうのです」
「ふーん、銃刀法が煩くて刃物も所持出来ないんだ」
「ええ、ナイフで脅して回収しようとしても、警察に連絡されればこっちが捕まってしまうし、殴れば病院で診断書を取り治療費の名目で借金チャラにされるのです」
「要は太々しいやつが金を返さないのね」
「全額は無理なのは分かっているので、せめて金利だけでも数回回収できないかと」
「なるほど、元金の金額まで利子を回収できればブラックリストに入れて2度と貸さないようにするのね」
ベスはこの手に詳しいのか、諜報部で得た知識で知っているのか話がサクサク進むのだった。
「はい、それでご相談なのですが、あのバババっと痺れる奴を使って頂けませんか」
「何でよスタンガンならあるんじゃないの?」
「電極に触れると火傷して跡が残るんです。それが証拠になってしまい・・・」
「あっ、そういう事ね」
「ええ、姐さんたちの電撃スタンは何故か全く跡が残らないのです」
ロレーナたちが使っている電撃スタンは先にイオンを放出し射出方向を決め、そして高圧電流が空気中を伝わって広範囲に電撃を喰らわすので跡が全く残らないのだ。
「分かったわ、それじゃ早速回収に行こう!」
「あのー、報酬とか決めなくて良いのですか」
「そんなの出来高払いでいいわよ!当たり前でしょ!」
ネゴシエーターの素質があるのかわからんが、裏世界に精通しているベスを見ていたロレーナはただただ、感心していた。
「ベス、船乗りじゃなくても食っていけるね」
「艦長、それは言わないで下さい!あの船大好きなんですから!」
「あっそ、そっちの趣味と実益を兼ねているのね」
「うふふ、さあさ行きましょう」
「頼みます姐さん!期待しています」
「まっかせなさーい」
最初に向かったのは汚い雑居ビルだ。早速地下に入り薄暗い廊下を進むと目的の商社に辿り着く。もちろんその様な場所に存在する会社はまともでは無いと1発で理解できる。因みに取り扱い商品は違法薬物、輸出禁止の製造装置など裏社会御用達のお店なのだ。
「何ここ、社名を書いてないし」
「ええ、知る人ぞ知る裏社会のお店ですから不要なのです」
そして早速、回収先の社長と面会を始めるが・・。
「何だ、お前らまた来たのか金は、バババ!ぎゃー」
一言交わす前に電撃を喰らった社長は全身が痺れ硬直、バーコード頭が思いっきり逆立っていた。もっと出力を上げ焦げたら毛根まで焼き尽くしそうだ。
「今のは軽めだからね、記憶が飛ぶ奴にする?それとも連発で喰らいたい?」
「クッソ、何なんだこれは。クッソ証拠を探さないと」
「社長、警察呼びますか?」
「先ずは証拠だ証拠だ火傷がればそいつらが捕まるからな」
初めて電撃スタンを喰らってびっくりしていた社長は目を丸くしている。そして上半身裸になり痕跡を探すが見当たら無かった。
「無駄よ無駄!探しても痕跡なんてないわよ〜」
「社長お願いしますよ〜、金利だけでもいいんで〜」
「・・・」
「出力最大!ルイスに代わってお仕置きよ!」」
「ベス、髪が焦げない程度だよ、毛根にダメージが思いっきり入るくらいね」
社長のうすっーい頭を見てロレーナが思いついたのか、毒舌全開だ!
「了解!艦長出力調整完了!行きまーす」
「えっ、やめて、やめて、残り少ない俺の髪が、毛根が・・」
慌てて頭を抑える社長はとても情けない格好だ。間髪入れずにベスが手を差し出す。
「じゃ!払って」
「はい!支払います」
そしてバーコード社長は素直に金利だけを払ったのだ。
「社長さん、あと数回払ったら借金チャラにするから」
「・・・ほんと」
「ああ、だがブラックリストに載せるから金は借りれなくなるけどな」
「分かった、次回全額払うから」
「うふふ良い心がけね。けど嘘ついたら今度こそ毛根を全部焼くわよ」
「や、やめて・・ちゃんと払います」
「じゃ、ルイス次行こうか」
そして電撃スタンを武器に次々に回収を進め、次が最後の1人なのだが実は超難関の相手だった。そいつは何の変哲もない地味なスーツ姿でインテリぽいメガネを掛け、鍛え上げられた胸筋が自慢のマッスル系オヤジだった。
「ふん、また来たのか!受けて立つ!」
ドヤ顔のおっさんはキリッと表情を変え胸を張り勝負に出た。
「スタン!」
「ふん!俺には効かない」
パッと閃光が走り確かに電撃が入ったのだが、綺麗に見事に受け流され足元に消えていく。
「ええ!何で効かないのよ!こいつ電気が流れないの?脳みそあんの?」
「失礼な!この特別に誂えた電撃無効化スーツには効かないんだよ、これは超伝導体を織り込んだ特別製だ。全ての電流はな表面を流れ、見ろこの特別な通電シューズから地面に流れるんだよ。分かったか!」
この男、屈強な肉体を持ちそれでスタンを防いだ訳ではなかった。スーツに仕掛けがあるのだ、細い金属の超伝導体を織り込み電撃を表面で受け流し、地面にアースして全く電撃を喰らわないのだ。丁寧に仕組みを説明してくれたのでベスは地肌に狙いを変えるのだった・・。
「じゃ、これで終わりね!」
ベスは狙いを額に変え電撃を喰らわせた、するとバン!と大きな音を立て、数秒後スーツ男は目を回しバタンと倒れた!
「あれ、ゴメンねピンポイントに狙ったから焦げちゃった!」
「ああ構わないっす、こいつは一度痛い目に遭わないとわからないんです。全くこんなスーツ作るなら金返せよ!」
「ううう」
倒れたスーツ男の額にはインド人女性が付けているビンディの様に赤く腫れ上がっていた。
「プークスクス、吹き出物みたいね!」
「これで懲りたろ、ちゃんと払えよ」
「・・・・」
スーツ男は黙って起き上がるとファイティングポーズを取りベスに攻撃の姿勢を見せたが、ルイスが前に入り睨みを効かせ一発即発状態だ。
「姐さん、もっと強烈な奴を喰らわせてやって頂けませんか」
「うふふ、良いわよ!」
「分かった、仕方ない今回は降参する」
ファイティングポーズを解き、眼鏡をクイっと持ち上げサムズアップを決め支払いの準備を始めた。
「はぁ〜、やっと回収できた・・」
「よかったねルイス」
この男は以前、回収に訪れた際に手出ししないだろうとたかを括っていたが、水を掛けられワイヤー型スタンガンで撃たれ痺れ降参したのだ。その後、電撃無効化スーツを作り、万全な対策をしていたのだ。だが、今回は圧倒的威力の電撃スタンの前に白旗をあげ素直に借金を払うことになった。
「ほら、全額だ!」
「何だ、全額払えるなら払えよ!」
そう、男は事業が軌道に乗り儲けを出していたのだ。きっちり利子を含め全額支払った。
「ふん、この前やられたからな、悔しいからやり返して払うつもりだったんだよ!」
「呆れるわ〜」
「男の意地ね・・」
ともあれ日銭稼ぎはこれを最後に終了。回収した金額の5%を報酬として頂き、ロレーナとベスはクレア捜索を再開することにした。
「なーんだ、スタンガン使えるじゃないの」
「そうなのですが、あの男防犯カメラをそこら中に設置しまして、ワイヤーが証拠として映ってしまうのです」
「あー、だから1回しか使えなかったの」
「はいそうなんです。前々回スタンガンを使って回収して以来、対策されお手上げだったんです」
「そっか、それじゃ私たちは自分の仕事に戻るね」
「姐さんありがとうございました、お世話になりました」
「じゃーねー」
立ち去る2人をじっと見ていたルイスは頭を深く下げ謝意を伝えるのだった・・・。
「兄貴、何で連絡先を教えて貰わなかったのですか?また探すには苦労しますよ」
「ベス姐さんはロレーナ姐さんを”艦長”って呼んでいたよな、間違いなくあの武器といい軍人だ、それも士官だ。だからこれ以上俺たちと関わると姐さん達に迷惑が掛かる」
「そうだったのですか、勉強になります」
「俺たちゃ裏世界の人間だ、お付き合いがあるだけで出世に響くだろ」
「はい」
「そういうことだ」
意外に男気がある悪党だ。とは言えこの一件で彼らの回収率は飛躍的に上がる事になった。そう”バババ”が来るぞ、この一言で皆震え上がり金を支払うのだった。
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