クレメンテ大統領、落ち込んでお話にならない説。
クレメンテ・・・駄目男
次の日の早朝、グスタフは大統領府を訪れていた。もちろんそれはアーネストとの会談に向けての事前調整の為だ。
グスタフ「それでは聞いてください、アーネスト陛下から頂いた情報です」
クレメンテ「何なの、何なの」
「現在、デルタリア、クーン、ラインスラスト、アーブラハムの4カ国が一つになって星団連合を構築するそうです。ところがですね、ディスティア帝国という敵性国家の存在が確認されました」
「うんうん、えっ?敵性国家」
アーネストはディスティア帝国の情報をグスタフに渡していた。交戦記録や尋問の内容、更には現在監視している偵察艦隊など重要機密情報だ。教える事で早急に対策を取らせ、1日でも早く良好な関係構築を築きたいのだ。
「はい、数年程前から我が国を侵略することを前提に監視していたようです。」
「侵略ってまたまた、そんな大袈裟な嘘言っちゃって」
この国は平穏な日々か続いていたのだろう。ちょっと平和ボケしていた。
「陛下が来日する直前にディスティアの艦隊と戦い撃破、あの閃光は戦艦の爆発です!」
「あ゛そういう事、それってやばくない?」
「そういう事なんですよクレメンテ大統領、結構ヤバい状況なんです」
「はっ、誰、もしかして陛下なの?」
どこからと無く声が聞こえると、ソファー席に座る2人の横に認識阻害の幕を外したアーネストが突然現れる。
「はい、アーネストですが何か?直接会いにきました!」
「うーん、何でここにいるかな」
いきなり現れたアーネスト、しかしドドドと数名の足音が聞こえると客間に数名の黒服が雪崩れ込んできた。
黒服「ふ、不審者発見!身柄確保!」
「あらら、もうバレちゃったよ」
認識阻害幕を利用して侵入したが、赤外線センサーに引っかかり不審者として追われていたのだ。
グスタフ「心配無い、アーネスト陛下だ」
「テレビで見て存じ上げてますが、お、お一人で侵入ですか?」
「悪かったね、余り時間が無いんだ」
「そ、それで僕と話があるの?」
「ええ、とても重要な話があります」
気軽に会いにきたアーネストを信じられない表情で一瞥すると、クレメンテ大統領は急に頭を抱え怯え出した!
「イヤー!」
「大統領、お気を確かに!」
ーー
同じころ、終わりなき快楽の夜を過ごした2人が迎えた朝・・・。
「ベス!起きなさい!」
「ふわぁ〜、アレなんで艦長が横で寝てるんですか〜」
昨晩、散々楽しんだべスは満足して就寝と同時に暗示は解けていた。一方、攻められたロレーナも同時にダウン。目覚めると即座に叩き起こしたのだった。
「もう、昨晩の事は全く覚えてないの!」
「あれ?クレアと楽しんで・・・何で艦長が隣なの、なんでいるの?あれ?」
絶賛混乱中のベス、嫌な汗が吹き出し顔色がどんどん悪くなり始める。
「あなた、私をクレアと勘違いして随分攻めてくれたわね!」
「ひゃ!マヂで、昨夜の相手は艦長だったの、マジマヂ?」
ベスは慌てて周りを見渡すと2人の服が散乱、恐る恐るシーツの中を見れば生まれたままの姿で、匂いを嗅げば体臭とは違う分泌物の残り香が事実を伝える。
「そうよ!何度言っても全然話を聞かないし、もう!」
「ヤッバ、昨日本気で攻めたんだわ、ごめんなさい艦長」
流石に言い逃れが出来ないので素直に謝るベスだった。
「それにしても貴女上手なのね、あまりに気持ち良くて途中諦めたわ」
「ウヘヘェ〜、知ってます!絶頂しまくってましたね!」
そう、ベスの執拗な攻めの前に白旗を上げたロレーナは、途中から諦め快感に浸っていたのだ。
「確かに良かったけど次回は無いわよ!」
「え〜、またしましょうよ〜」
「駄目よ、示しが付かないわよ!こんな関係!」
「ウフフ、仲間を紹介しますね!」
「ゴラァ話を聞け!誰にも喋るなよ、もし噂がたったらお前を軍法会議に掛けて断罪するからな」
「ゴメンなさい・・」
癖になる一歩手前で止めた理由は簡単だ、乗組員は全て女性、艦長がカミングアウトすれば、まちがいなく上下関係お構い無しの百合隊員が押し掛けて来る事は想像が難しくないのだ。
「ほら、時間が無いわよ!クレアを探して船に連れて帰るのよ!」
「はーい(嬉」
「はーいじゃない!ちゃんとやれ!(怒」
なんだかんだ言って満足そうなべスを見てお怒りロレーナ。黒歴史確定なのだが自分的には無かったことにしたいのだろう・・。
ーー
アーネストが独断単騎で乗り込んだのだが、どうも精神的に不安定なクレメンテは話を聞いてくれない。甲高い声で全力拒否されていた・・。
「イヤー!今は無理!」
「アーネスト陛下、溺愛してたペットが死んで少し落ち込んでいるのです」
「無理無理無理!」
「気持ちは分かるが、少し落ち着いて為政者として対応してくれないかな」
「いやー!」
「失礼します大統領、お時間が迫っております、朝の会見は如何しましょう」
説得していたが無駄に時間だけが過ぎ、朝の会見の時間が迫り秘書が痺れを切らし話に割り込んできた。
「うん、行くよ」
「畏まりました。本日はアーネスト陛下に関する質問が集中すると思われます」
「分かった、行こうか」
いきなり態度が変わるのはいいが、目の前には話題のアーネストが立っているのに全く気にしてなかった。
「大統領!」
「グスタフ君、分かっているよ。アーネスト陛下少しお待ちください」
仕事モードに変わったのか、二重人格なのか判断しかねるが、先ほどまでのアホ大統領は何処かに消えてしまったようだ。踵を返し部屋を出て行った。
「はぁ〜、アーネスト陛下すみませんでした」
「彼の頭の中は混乱と悲しみが入り混じっていたよ、さっき秘書の言葉で我に帰ったようだね」
「可愛がっていたデブ猫が死んで心の拠り所が無くなり不安定になったみたいです・・」
「その話を聞かせてくれないか」
「・・・わかりました」
身内の恥ずかしい事だと思い少し躊躇したグスタフだが全て話してくれた。クレメンテは間も無く60を迎え、数年後に控えた大統領選挙には不出馬宣言を発表を発表。まだ為政者として活躍できる年齢の彼が引退を決意した理由は3年ほど前、伴侶先が先に旅立ち子供たちも独立、デブ猫と一緒に老後を暮らす事を考えていたのだ。だがそんな矢先、急激に調子が悪くなった猫は数日前、腕の中で眠るように死んでしまったらしい。
「ミーシャを連れて来るか・・」
アーネストは問題解決としてミーシャを呼び、大統領と引き合わせることにした。そして1時間後・・。
「おお、猫族獣人なのか話には聞いていたが・・可愛い!」
「ニャ、女王専属護衛のミーシャなのニャ」
メイド服姿で綺麗なカーテシーを決めるミーシャを一目見たクレメンテは、その可愛らしさに目を奪われるのだった。
「おおお、癒される・・やはり猫は可愛い・・」
「ニャ!」
ソファーに移動した2人は寄り添うように座り、クレメンテの表情が急激に穏やかになり始めとても幸せそうだ。ちょっとキモいが・・。
「少しこのままで様子を見ましょう、大統領分かっているとは思いますが彼女は護衛ですので」
「うん分かってるよ、アーネスト陛下ありがとう」
その場をミーシャに任せアーネストとグスタフは一旦席を外す事にした。もちろんミーシャに変な事をすれば返り討ちにあうことは必至。クレメントには一応その事を伝えたが、欲情して何かするのではなく安らぎを求めているようだった・・。
「ムーランは捨て猫だったんだ、出会ったのは視察先の路地で小さくなって怯えていたんだ・・・」
アーネスト達が退出するとクレメントは愛猫ムーランとの出会いから話し始め、一緒に過ごした思い出を語り出した。ミーシャは途中、相槌を打ちながら優しい眼差しでそれを聞き良き話し相手になっていた。
1時間後・・。
「ムーランはムーランは俺の腕で、腕の中で最後は死んで、何でだ、何で死んだんだムーラン!」
「ニャー、そんなに悲観ばかりすると亡くなったムーランが可愛そうニャ!その様子だときっと満足して逝ったと思うニャ」
最後に最期の様子を語るとミーシャは、ムーランの気持ちを代弁するかのように慰めた。
「そうなの・・そうなのかな、最後に俺の事見つめて静かに、眠る様に目を瞑ったんだ」
「猫は死期を見られたくないニャ、腕の中で死ぬ事を選択したのはそれだけ信頼していた証ニャ」
「そうか、あの子は最後に僕を選んでくれたんだね」
「そうニャ、間違いないニャ、だからいつまでもクヨクヨするのはダメなのニャ!」
「うん、分かった!ミーシャありがとう」
クレメントはミーシャと話し心癒されたのか、死んだムーランの事を受け入れたのか、涙ぐみながらミーシャの手をギュッと握り締めるのだった。
「もう大丈夫そうですね陛下」
「ああ、諦めというか踏ん切りが付いたんだと思うよ」
頃合いを見て戻ってきたアーネスト達は、離れたところから2人の様子を見ていたのだった。
「待たせたねアーネスト陛下、ありがとうもう大丈夫だ」
「それでは話を進めましょう」
時間はかかったがミーシャの協力もありクレメンテはやっと立ち直った。彼の目には光が戻りやる気に満ちていた・・。
ーー
少し前、アーネストが宿泊しているホテルではディスティアの2人がカートを押しつつゴミを回収しつつ廊下を清掃、もちろんあのダサい格好だ。とてもクレアを探している様には見えなかった。
客「あー、これ捨ててくれないか?」
部屋から出てきた宿泊客の1人がロレーナを見付け、無造作にゴミ袋を差し出した。
「わたしは!」
「艦長ダメです、問題起こすと日銭が貰えませんよ!」
「うっ、そうね、お客さま承知しました〜」
ベスに言われパッ切り替え、掃除婦役をこなすロレーナ。実は金が底を尽き、朝食確保の為にクレア探しながら掃除のバイトをしていたのだ。
「あと1時間の我慢よね」
「そうですよ朝食代を稼がないと、昼はシャトルに積んであるレーションです!」
「もしかして夜もレーションなの?」
「それは遠慮したいので、街で悪党を倒して金をふんだくりましょう!」
結局、金欠の2人は掃除しながらクレアを見つけられず、日銭欲しさに街に出る事になったのだが・・。
ベス「凄く平和な街ですね〜」
街中を彷徨い歩くが、悪人らしき人物はみあたらなかった。それもその筈フェデラーの中心部はとても治安が良いのだ。物価が高く、家賃も高いのでそもそも貧乏人がいないのだ。
「ねぇ、どうするの、どうやって金稼ぐのよ?」
「あのですね、子供服に着替えてあの街に行って有料で写真を撮らせましょう!メッチャ集まって来ますよ絶対!」
「イヤー!また拉致られるよ〜」
輩に拉致られた事を思い出したのか、顔が真っ青になるロレーナ。余程嫌な経験だったのだろう。一方ベスは全然気にしてなかった。
「まあまあ、そう言わずに行きましょう!電撃スタンのエネルギーは満タンですから」
そして嫌がるロレーナを無理矢理子供服に着替えさえて、期待を込めてあの街に向かって行くのだった。
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