動き出したディスティア
偵察艦隊がアルビーン救助に向かいますが・・・。
エドガー「何故連絡がとれんのだ!」
秘書「総統閣下、いま懸命に連絡を取っていますが、艦隊は恐らく・・」
お怒りなのはディスティア帝国総統エドガーだ。172センチ程の少し低い身長で、ちょび髭を生やし顔は蒼白で神経質な面持ち、普通なら相手にしたくないような男だ。見た目からしてチマチマ小さい事を気にするタイプに見える。フェデラリーに送った艦隊が消息を断ち20時間が経過、情報が全く入らず不満は募る一方だ。
「前回、尻尾を巻いて逃げ出した連中に捕まったのか」
「詳細が無いのでわかりません、現座、偵察艦隊を呼び戻し準備している所です」
「早くしろ、一刻も早く情報を入手するのだ」
「畏まりました、先に高速艇を向かわせます」
そして数時間後先発した高速艇は大破し飛び散った戦艦の装甲を発見、即座に帰還しフェデラリーに送った艦隊は殲滅された可能性が高いと報告。それを聞いたエドガーはなりふり構わず、総数50隻の艦隊を編成し討伐に向かう作戦を立てたが・・・。
「総統閣下、今出て行くのはダメです」
「何故だ、このまま負けたままでいいのか、仲間を見殺しにするのか!」
「こ、これを見てください」
秘書が差し出したのは燃料調達リストだ。既に今期分の燃料が残り少なく、大艦隊を動かすとなると国内に流通している燃料を使わないと賄えないのだ。接収すれば生活に支障をきたし、間違いなく国民不満が溜まり支持率が落ちるのは必至だ。
「クッソ、早く燃料を調達しないと」
ディスティア宇宙軍は150隻以上の大艦隊を編成していたが実は燃料調達の問題を抱えていたのだ。クーンは既に数百年前に生体エネルギーを実用化し戦艦を稼働、何ら問題は無かった。一方核融合主体のディスティアは燃料となる三重元素トリチウムが枯渇の危機を迎えていた。有り余る埋蔵量で生産自体も容易だが戦艦の消費エネルギーが物凄く全く追いついていないのだ。産業用、家庭用共に主な電源にも使用されているのも要因の一つだ。
「次世代生体エネルギー開発が進んでいます、数年で実用化できれば艦隊の燃料問題は一気に解決するのでここは我慢の時です」
「わかった、偵察艦隊だけは向かわせろ他の船の燃料を使っても良い。乗員の生存確認が最優先だ」
「畏まりました、それが最善だと思われます」
エドガーは今打てる最善手を打つことを決めた。そして偵察艦隊に総統閣下自ら命令を出す。
「ロレーナでは頼んだぞ、乗務員の生存確認が最優先だ!」
「畏まりました総統閣下!」
総統の命令で緊急出港した偵察艦隊。燃料不足から交戦は極力避けろとの内容だ。しかし乗組員の消息を掴んでこいと直接言われ艦長は悩んでいた・・。
ロレーナ「ねぇ、絶対交戦せずにあの星に入らなければならないのよね・・」
ロレーナはディスティア軍の女性士官の中でも可愛いと言われている女性だ。ショートカットの金髪、童顔、小顔、スタイルも良く制服がよく似合っていた。まぁ艦長ですからお年はそこそこですけど・・・。
副長「ええ、未確認の艦隊の所在が分からない以上、あの星で情報を取集しないといけませんね」
操舵手「かんちょ〜、出航準備かんりょ〜」
何故か艦橋内は女の子達で溢れている。まるでハイスクールなんちゃらの世界に入ったような錯覚を起こしてしまう。
「どうやって潜り込もうかしら・・」
偵察艦隊の艦船はステルス技術は一応持っているが、それは電波吸収を主体とした旧世代で船も旧式だ、要するに完全に姿を消せないのだ。悩むロレーナを見て士官の一人がある作戦を立てた。
「艦長、アステロイド帯の中を進み出来るだけ近づき、小型船で侵入する作戦はどうでしょうか」
「うーん、それは考えついたわよ。小型シャトルだと到着するまでの時間が問題だわ」
「ジャンプしてシャトルを排出、偵察艦はそのまま全力で逃走。コア再起動したらまたジャンプで逃げてはどうでしょうか」
「そんなの特攻作戦じゃないの、無謀な作戦許可できません!」
「帰りの時間を決めれば宜しいのでは、そうすれば戻ることは可能です」
「それにしても自殺行為だよ・・」
頭を抱える艦長ロレーナ、だがこのやり方が一番現実的だった。だがしかしクーン艦隊不在が前提条件だ!
「艦長、何故私たちが選ばれたのでしょうか」
「ああその事ね、偵察艦隊は燃料消費が少ないからよ、20万トン級の戦艦5隻で行くより半分以下で済むから、それだけエネルギー問題が逼迫してるのよ」
「わかりました・・はぁ休みが・・」
休暇を潰されたのか、少し不満そうな副長だった・・。
ーー
グスタフ「こ、これがクーン料理なのですか!」
テーブルの上にはクーンのシンプルな料理が並んでいた。肉を長時間煮込んだ煮物。野菜と魚の煮物、後はサラダだ。
ミランダ「すっごいシンプルですね」
「デルタリア料理に比べたらとてもシンプルだよ、素材の匂いや味をそのまま生かすから調味料も少なめだ。さぁ食べてみて」
グスタフとミランダは忙しくて何も口にしてなかったようだ。食堂の案内の最中、二人ともお腹が鳴り、それを聞いた料理長が賄い料理を出してくれたのだ。
「おお、薄味だけど旨味が強い肉だ」
「この野菜ホロホロと蕩けて美味しいわ、けど魚は独特な匂いね」
料理長「その魚は生なら匂いがいいんだが、塩漬けにすると特有の匂いが出るんだ。慣れると美味しく感じるはずだ」
「ん、うんそうね食べれない匂いじゃ無いわ、慣れれば美味しいかも」
「そっちの肉は食肉用に育てられた魔獣の肉だ。食べれば少しだけだが魔力が貯まる」
「なんと、魔獣って怪物なのか、だが魔力ってなんだ?何それ美味しいの?」
「ほれ、これだ」
料理長がその魔獣の写真を見せる。だがそれは毛の長く目つきの悪い牛にしか見えない。ツノが5本も生えているから凶暴には見える。
「まぁ、なんだ家畜っぽいな、顔は怖いけど」
「これは家畜と掛け合わせた奴だよ、本物の魔獣の方は知能が高いから食べないんだ」
「そ、そうなんだ・・」
魔獣を知らないグスタフはよく分からずに返事をしていた様だ。魔力の事もわかってないらしい。
「まさか、この魚も魔獣とかじゃ無いわよね」
「ああ、それはこれだ」
一口食べてビビるミランダに見せた写真は、髭が大量に生えたナマズのような黒く大きな魚だった。
「これって髭なの」
「いや、これはヒレが進化して水中で歩くんだよ」
次に水中の写真を見せてくれる。その魚は口の下からあごにかけて黒く細い髭のような物が大量に伸び歩いているようだった。
「ふーん、形は違うけど食べるものは似てるんだね、それにしても煮物ばっかね」
アーネスト「まぁそう言うな、焼物もあるが今は食事の時間じゃ無いから準備できないんだよ」
「そっか、食べてみたかったわ」
「お腹いっぱいになったかな、そろそろ地上に降ろすよ」
「もう見れるところはないんでしょ」
「ああ、戦闘指揮所には入れないからね、せいぜい砲塔の中くらいだ」
「おお、是非見せてくれないか」
「私は売店に行きたい!」
興味があるグスタフは目を輝かせながら砲塔に向かった。ミランダは武器には興味がないのかクレアと売店でお買い物をしていた。金はどうするのだろうか謎だった・・。
「陛下、降りるついでにフェデラリーに泊まってみないか、一流ホテルに案内するぜ」
「そちらが問題なければ構わないが」
「私も行きます!」
「マジ?」
興味が湧いたのかクレアも行きたいと言い出した・・・ここフェデラリーでは絶世の美女と呼ばれる彼女が泊まれば一波乱起きそうだ。
ーー
視察が終わり貴賓室で時間までお茶をしているころ、後部格納庫では地上に降りるため荷物を積み込んでいる乗組員から連絡が入った。
<陛下、荷物は後からお送りしましょうか>
「いや、派手な行動は避けたい、屋上に一回だけ降りてそれだけで済ませたい」
<畏まりました>
降りる回数は極力少なくしたい、そう指示を出した直後観測班から緊急連絡が入る。
「陛下、アステロイド帯に不明艦が現れました。特徴からディスティア帝国の艦船と思われます」
「見つからないように細心の注意を払い、引き続き監視を頼む」
「了解」
その後詳細が追加された。5隻からなる艦隊が1番離れた所から侵入、途中一隻だけフェデラリー方面に向かっていた。
<ディスティア偵察部隊>
副長「艦長、高速艇の情報では敵は見当たらないと報告が上がっていましたが、確かに見当たりませんね」
ロレーナ「そうね、今回は交戦を避けたいよ、アルビーンは無事だといいな〜」
「そうですね、無事を祈りましょう」
ディスティア軍は1番遠いところからの侵入だ。この前、捕獲した戦艦はその逆側に浮遊する大きな岩塊にまとめられレーダー阻害幕で覆われていた。船の電源を入れるか、大きな機械を使わない限り発見されることはない、そもそも接近しない限り見つける事は不可能だろう。
<デルタリア・クーン、アーブラハム艦隊>
副長「技官、偵察部隊らしき艦船を感知したと知らせが入った。各員作業中断、全ての電源落とせ」
「了解!」
アーネスト達が本星に向かった後、アーブラハム軍と合同で拿捕した戦艦を調べていた。デルタリアとクーンはこれと言って欲しい技術が無く、興味を持てたのは仕組みが違う転送装置くらいだった。だがアーブラハムは主砲が強力なのか研究の用なのか砲台ごと外して持ち帰ろうとしていた。
アーブラハム技官「この船には欲しい技術は無いのですか?」
デルタリア技官「なくは無いが研究用かな、1番欲しいのは転送装置だ。そちらは砲台か・・」
「この船、フェデラリーに引き渡す事を躊躇しますよね」
「せめて探査船を作れる技術があれば渡してもいいのですが、このエンジン量産出来ませんよ」
「そうですね・・」
デルタリアとアーブラハムの2人の技官はフェデラーリーはまだ核融合炉を実用化していない事を知っていた。超伝導体製造や核融合技術など基礎工学がまだ追いついてないのだ。
「ラインスラストは核融合炉でしたっけ?」
「そうです、基礎工学がしっかりしていたので生体エネルギー技術を寄与しました」
「悩みますね」
「ええ、悩みます」
2人の技官は腕を組んでお互い悩んでいた。
ーー
「んっ?何を作業しているんだ?」
動きを知る為に送った小型ステルスシャトルから情報が上がってきた。それはアステロイド帯に停泊中の一隻のディスティア偵察艦の後部ハッチが開きシャトルが丸見えなのだ。大気圏突入用と思われるシールドをコックピットに装着していた。
「陛下、観測班から連絡がありました。あの船が後部ハッチを開けてシャトルに大気圏突入用と思われるシールドを取り付けています」
「と言うことはこの星に降り準備をしているのか」
「はい、状況からそう判断できます」
「なぜ後部ハッチを開けている?」
「何名か外に出て作業しています。長い梯子の様な・・あれは簡易カタパルトでしょうか、何かを組み立てています」
アーネストは即座に技術士官にその映像を見せ、作業内容を問うことにした。
「あー陛下、これカタパルトです。上陸する状況を考えるとジャンプアウト後、後方に射出して大気圏に弾かれないよう速度を上げるためだと思われます」
「このハッチの形状だと前方に射出出来ないのか」
「ええ、想像ですがハッチを開けたままジャンプするのでしょう」
「となるとステルス技術が無いのか」
「捕獲した戦艦数隻には装備されていましたが、もちろん全てではありません
でした、比較的新しい船にだけです」
「仕事中悪いね、ありがとう」
「はっ!もったいない言葉、失礼します」
アーネストは腕を組み少し思考を巡らすのだった。
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