最後の悪足掻き
コラリーは逮捕、敏速に動きアルドを罷免したエリアス、全て順調に終わるとお思われたが・・。
一方、軍幹部が座る席では既に戦争に向けての算段を始めていたが、その表情は暗かった。
将校「戦力差はどのくらいなんだ」
参謀「報告によるとクーンの旗艦フォーレスト一隻の火力、防御力はラインスラスト全軍を持ってしても全く太刀打ちできないそうです」
「なんだと、そんなに強力なのか!」
「エリアス王子から情報を提供して貰いました、勿論アーネスト陛下からもたらされた情報も同じです」
タブレットにはエルフォードの性能一覧が並び、その画面を見た准将達は諦め顔だ。戦力自体同じだと思っていた将校達だったが、旗艦フォーレストの詳細を見て青ざめていた。
「もしかしてアーネスト陛下は既にマリアーノ陛下と親密な関係なのか・・」
「諜報部の衛星監視班よると早い段階でマリアーノ陛下が接触していたそうです」
「何だと!なぜその情報を知らせんのだ」
「その時は単なる付き人ですので左程重要ではないと」
マリアーノは帝国派の諜報部に行動を監視されていたようだった。衛星を使われたら流石のミーシャも気がつかない。
「うーん、王国派と敵対するとアーネスト陛下が敵に回ると言うことか」
「はい、エリアス王子自ら直接救援に向かう、このことはマリアーノ陛下との関係が良好と考えるのが必然、陸軍に送った映像を見る限り間違い無いでしょう、ここは王国側に賛成するのが宜しいかと」
参謀の王国側有利の一言を聞くなり参加している軍幹部は頷くしかなかった・・・。
「なぁ、今回賛成に回れば戦争は回避出来ると思うか?」
「デルタリア、クーンはラインスラストと良好な関係ですので、ここが引き際かと」
「そうだな」
軍部の総意としてはデルタリアと戦うことは得策ではないと判断するのであった。
秘書「准将、帝国派から緊急要請が入りました」
話し合いの最中、秘書が慌てて駆け込んでくる。
「早速来たよ、碌でもない頼みだろ」
「此方で声を出してお知らせするような案件ではありません」
秘書は小さなメモ用紙を見えないようにスッと渡し、将校達が順番にそれを読むと表情が険しくなるのだった。
ーー
3時間後・・・。
党代表者、政府代表者の議論が続き、身内である帝国党内からも厳しい批判が続出。淡々と議題が進み終わりを迎えようとしていた。
「議論は出尽くしました、只今より採決を行います」
議長の掛け声と共に起立採決を行うとほぼ全員が起立、そして弾劾決議は可決。アルドはそのまま収監され裁判を待つ身に変わり果てたのだった。
「それでは賛成多数、可決成立、よってアルド総統は本日より総統職を罷免、議員資格停止となりました」
アルドが罷免された事によって副総裁が仮の総統に選出され、一旦会議は閉会と思われたが、ここでエリアスがまさかの行動に出た。
「議長!全大臣閣僚に対し不信任決議を提出します!」
「なんだと!」
ザワザワっと一瞬議場がざわついたが、皆冷静に未来を想像していた。今回議会の様子は中継されリアルタイムで国民は知っている。そうなると帝国党に対し批判が向くのは必死。下手に同情が向く前に政権幹部を解任し国王派を閣僚として数人迎え批判を交わすのが得策だと考えていた。
「それではエリアス議員提案、全閣僚に対し不信任決議案の審議了解の採決を取りたいと思います。不満のある方は挙手を願います」
やはり手を挙げたのは現役閣僚とその関係者だけだった。多勢に無勢、総統罷免に引き続き審議開始されるのであった。
エリアス「それでは議案とし全閣僚に対し、今から述べる不祥事について質問します!」
エリアスは今まで集めていた真っ黒な疑惑の証拠を提示、もちろん帝国側は公然の秘密と知っていた案件ばかりだ。総統が力で揉み消した強制性交、裏金供与、公共事業の入札額漏洩、脱税など普通だったら逮捕されてもおかしく無い案件ばかりだった・・。
「それでは不信任決議に対し採決を行います」
2時間の討論を経て採決に移る事となった。もちろん一切反論する事が出来ず認めるしか無かった大臣達は真っ青な表情を浮かべ落胆し座っていた。もう自分には未来がないと理解しているようだった。
「不信任決議案に反対の諸君の起立を求めます」
議長が採決をとると案の定、甘い汁を吸っていたアルドの子飼いの大臣達が起立するが、周りから白い目で見られていた。
「どこまで欲の皮が厚いんだ」
「大臣の椅子にそんなにしがみ付きたいのか!」
「・・・」
今回の悪行に限らず色々悪さをしていたのだろう、仲間である筈の議員から冷たい目線で見られていた。
「反対少数、全大臣は罷免決定、一時的に大臣職は副大臣が行うこととする」
ここで一旦会議は中断、即座に大臣代理が指名され、翌日組閣本部が立ち上がり新大臣が選出されるのであった・・。
「本日の会議はこれまで、これにて散開」
長時間に及んだがエリアスの絶妙なタイミングで放った不信任案は無事可決されたのだった。
「うわぁ、コレ護衛じゃ無いですよね」
「まぁ、銃を構えてる方向がね、違うよね」
会議が終わりアーネスト達は議会棟の正面玄関を出ると、帝国派の依頼を受け軍部が差し向けたであろう武装した兵士12人ほどが遠巻きに銃を構え、ゆっくり近づいてくる。
「アーネスト陛下、裏手に移動して貰えますか」
隊長らしき人物が声を掛けてきたがどうも様子がおかしい。マシンガンを構えてはいたが、銃口は少し横にズレ、セーフティーは掛けっぱなし、極め付けは右人差し指がピンとまっすぐ伸びていた。撃つつもりは無いらしい。
「ここからは帰れないのかな」
「はい、申し訳ないのですが裏手に逃げた体で追跡を免れ、そのまま屋上に逃げ込みシャトルにお乗りお帰り下さい」
「んっ、君たちの独断じゃ無いよね」
「はい、一応捕まえる努力したと言い訳が欲しいのです」
この言葉で悟ったアーネストは逃げると思いきや意外な指示を出すのだった。
「わかった、ミーシャと少し遊んで逃げるとするか、その方が言い訳になるでしょ」
「ニャ!」
「怪我させないでね」
「ニャニャ!」
そう言い放つと同時にミーシャは有り得ないスピードで隊員達に接近、いきなり肉弾戦を開始、バシバシと拳がタクティカルベストに繰り出された。
「うわぁ、早い!」
「かかって来いニャ!」
パチリとウインクして中指を立てるミーシャだった・・・。
「じゃ隊長、ゲームを始めようか」
「はい、では」
アーネストは隊長が銃口を向けた瞬間バレルを掴み持ち上げクルリと左に倒しマシンガンを奪った。
「えっ、経験者?」
撃つつもりがないと言え、簡単にマシンガンを奪われた隊長は目が点になっていた。
「そうだよデルタリア特殊部隊、デルタフォースに所属していた」
「陛下、お手合わせ願います!」
隊長は気が変わったのか、軍人として血が沸き立つのか、バッと敬礼をするとファイティングポーズを決めアーネストと手合わせを始めた。
「久しぶりの手合わせだ、たのしめるかな」
アーネストは銃を地面に置き上着を脱ぎ、同じくファイティングポーズを決める。
「はい!まさか陛下との手合わせ直接戦えるとは、恐悦至極でございます!」
そして拳、足蹴りをバババっと繰り出しながら素早く動き回る2人の表情は楽しそうだ。
「アリャ、あの2人血が騒ぐのかしら」
クレアはその様子を余裕の表情で見て笑っていた。
「片付いたニャ!」
アーネストが肉弾戦を始めて5分ほど経過しただろうか、ミーシャが戻って来た。
「ウウウ・・」
立っていた筈の11人の兵士は皆、地面と仲良しになっていた。
「つ、強すぎる・・・」
まぁそれでもミーシャは軽い運動のつもりなのか、汗一つかいて無かった。
「クレア様、まだ遊びたいのでヒールをお願いするニャ!」
「あら、そうなの良いわよ」
「げっ!ヒールってもしかして・・」
「皆さーん、今から治癒魔法をかけますから〜、ミーシャと遊んでいただけますかー」
「ひゃー、勘弁してくれー」
寝っ転がっていた兵士は素早く立ち上がり、逃げ出そうとしていた。
「まだ動けるニャ〜」
「ぎゃー!」
既に逃げる方向にミーシャが仁王立ちしていたそうな・・。
「ヒール!」
「嗚呼、終わった・・」
ーー
翌日、王宮に呼ばれ昼食を共にするアーネストとクレア。
「エリアス王子、私がこれ以上滞在するのは得策では無いので一旦引き上げます」
「わかりました本当にありがとうアーネスト陛下。それとクレア様、貴女と出会った事に感謝します」
今回の騒動の発端は確かに彼女だったが、エリアスは相変わらず違うベクトルで自分のコレクションを眺めるような優しい目でクレアを見ていた。
「うふふ王子、あなたは良い王になるでしょう。婚姻がが決まりましたら招待状を送ってください」
「は、はい、勿論です。クレア様は永遠の僕のお人形です!」
「ははは(汗」
執事「王子!そこは僕の永遠のパートナーとか言うんです!」
執事はまだクレアが側室だと知らなかったようだ・・。
「だってアーネスト陛下の側室だよ、無理だよ」
「ガーン(泣」
側室と知りガックリ肩を落とす執事だった・・。
「アーネスト陛下、なんとお礼を言って良いのやら、本当にありがとうございます」
マリアーノはアーネストに対し深々と頭を下げていた。
「マリアーノ陛下お顔をお上げください。私達はきっかけを作っただけに過ぎません。以前のように平和な国になることを望んでいます、ですから対等な立場で接してください」
「勿体ないお言葉、必ずや王国を再建いたします」
アーネストはアーブラハム王国の事を勉強し、元々平和な国だと理解していたので出た言葉だった・・・。
ーー
駐機場に移動すると一人の士官がアーネストの元に訪れてくる。
アイアス「アーネスト陛下、私たちは今回の事は一生忘れることはありません」
「いえ、何もしてません。時が重なり期が熟し私が少し押しただけに過ぎません」
「偉大なるクーン王、そう謙遜なさらなくても貴方の行いは立派でした」
「ありがとう、その言葉で十分です」
「お礼と言っては何ですが、私達が遭遇した未確認の艦隊についての情報を提供します」
その士官は以前やり合ったディスティアの情報を提供すると言い出した。
「それは助かります。その未確認の艦隊は友好的ですか」
「いえ、その逆なのです、ですからお早めにと思いまして」
「そうですか、敵性国家の可能性があると。わかりましたデルタリアに持ち帰り協議したいと思います」
その士官はデルタリアとクーンの戦力が、強大で且つ協力的と判断。また所属不明とされているディスティアに対抗できると思っていたのだ。
「それではこのメモリーを受け取って下さい」
一枚の小さなカードとリーダーを渡された。
「つかぬ事をお聴きしますが、アルド元総統は何処かに送られたのでしょうか?」
アーネストはアルド夫妻が裁判をうけること無く姿を消したことについて問いただした。
「陛下はどこまでご存知なのでしょうか?」
”暗黒星団”そうアーネストが言い放つと士官の顔が曇った。
「それは国王からお聞きになりましたか」
「そうです、そこに囚人の星が存在すると、ですか他国の事なので干渉するつもりはありません」
「アルドは死刑囚として秘密裏にその星に送られました。私達もその判断を行うのを苦慮しました」
「1番の理由は裁判ですよね」
「もう、全て分かっているのですね・・」
アルドは非道の限りを尽くし死刑は確実だった。しかし邪魔したのは裁判を受ける権利がある事だった。死刑執行当日でも公表されて無い事件を自供すると裁判を受ける権利が発生するのだ。審議中は元政治家なので専用の留置所に収監、快適に暮らせるということだ。
「あれでしょ、裁判を繰り返し自由はないが快適に暮らせいつまで経っても執行出来ず、結果そのままの状態が続くのでしょう」
「はい、その通りです。罪状が有に100はありますから」
「わかりました。それでは約束通り共同でアーブラハムの監視活動を行いましょう」
「言語解析のデーターはその時にお渡しします。すみません重要機密でコピーできませんでした」
「ありがとう、それではまた会おう」
「はい!隊長がまた手合わせをしたいそうです」
「あはは、ドローだったからね、機会があれば是非」
笑いながらアーネストはシャトルに乗り込んで行った。
「さて、指示を出した議員は捕まったか」
「はい、全員身柄を確保しました」
指示を出した重鎮の議員達2人は国家反逆罪の罪を問われ、後日、軍法会議で裁かれるのであった。玄関で待ち伏せしていた12名の部下は勿論お咎めなし、隊長も勿論処罰は無いが、アーネストと唯一直接対決をした軍人として語り継がれる事になるのだった。
宜しければブクマ評価お願いします。




