王子エリアス
エリアス王子登場。
趣旨説明を聞くことなく一人の若い議員がクレアをちょっと違う目で眺めていた・・。
エリアス「すごい美人な女の子だね!」
執事「王子、ま、まさか女に女性に興味が湧いたのでしょうか」
クレアの演説を聞いた後、雛壇横に座る彼女をジッと凝視しているのは国王派の若手議員の1人エリアスだ。身長は170センチほどで綺麗な長めの金髪を持ち、見た目はイケメン。そして彼の身分は第一王子なのだがロボットオタク+フィギュア人形が大好き、生身の女の子より人形を着せ替えして遊ぶのが趣味の超オタクだった・・。
「ほら、僕のコレクションのお人形みたいだよね彼女って!」
「嗚呼、ちがーう!方向性がちがーう!」
エリアスの趣味を知っている執事はクレアを人形にたとえ喜んでいる姿を見て呆れている。
「ああ、彼女がお嫁さんになってくれたら良いのに〜」
アーブラハムでも銀髪緑眼は珍しく、クレアはフィギュア人形がそのまま大きくなった様な印象を受けるのだ。彼女は小顔で可愛らしく、スリムな出立ちの白いドレス姿が清純に見えたらしく、エリアスにしては珍しく生身の人間に興味が湧いた様だ。
「ほ、本当ですか王子!嗚呼後継が、念願の王位継承がこれで・・嗚呼わたくしは嬉しい限りです!」
「うん、可愛らしいお人形だ!飾るには最高だね!」
「ちがーう!」
執事は王位継承問題が解決できたと喜んだが、思いっきり違う方向性を向いているエリアスだった。
ーー
議会での挨拶が終わり大臣、軍部など各方面の挨拶回りを行い気がつけば夕方になっていた。本格的な交渉を明日に控えアーネスト一行は用意された宿舎に向かった。
支配人「それではこれが鍵です。付き人の方、確かにお渡ししました」
アーネスト「ありがとう、それじゃ行こうか」
「早く一息ついたいのです!」
帝国側が用意したホテルに入った二人。今回、アーネストはクーン王の身分を伏せクレアの付き人兼護衛として紹介されていた。鍵を渡されエレベータに乗り込んだ3人は早速部屋で休もうと考えていた。
「ニャ!無人だニャ!お入りください」
ミーシャを先頭に銃を構え部屋に入り室内の安全確認をすませる。
「はぁ〜、疲れたよアーネスト」
「お疲れさん」
「ニャニャ!アーネスト様!」
今回護衛として連れてきたミーシャは部屋の中を詳しく見渡すと怪訝な顔をしていた。そして自分の目に指を指すと天井に向け、次に口元を差し指を左右に振る。そう盗聴器と隠しカメラが仕込んであったのだ。
「なるほど、ありがとうミーシャ」
「ニャニャ!」
流石に浴室だけには設置しておらず、一応プライベートを尊重したのだろうが、使節団にその様な事をするアーブラハムに不安を感じていた。ラインスラストを訪れた際はその様なことはなかったので尚更だ。
「テーブルには仕掛けられてないニャ、他にも反応がないニャ」
そして一休みをするとレストランに向かい食事を取ることにしたが、盗聴を避ける為個室は選択せず一般客と同じ普通の席に座った。
「クレア、もしかするとこの国は一筋縄では行かないかもしれない」
「はい、盗聴に盗撮ですか・・・久しぶりなのに残念です」
ちょっと俯く彼女は久しぶりにアーネストといっぱい楽しみたかったのだろう。このホテルに滞在中はお預けになり残念そうだった。食事が済みまだ膨れっ面のクレアを連れバーに入りグラスを傾けていると、バーテンダーがスッと小さな紙を無表情で差し出し、すぐに仕事に戻っていった。
<早朝、お迎えに伺いますアーネスト国王陛下様>
紙を捲ると何やらお誘いの言葉が綴られていた。それも既にアーネストが王と知っているらしい。クレアに見せると少し怪訝な表情に変わった。
「それ怪しくありませんか?」
「秘密裏に会いたいということは何か秘密があるのだろう。会わないと分からない事もあるし、俺の身分を既に知っている」
「ふん!お代わり!」
相変わらずクレアはご機嫌斜めだった・・。
ーー
執事「おはようございますアーネスト陛下、クレア様、主人がお待ちです。裏手に置いてあるシャトルにお乗りください」
「・・・」
まだ薄暗い早朝ロビーに降りると全身黒ずくめの執事風の男性が声を掛けてきた、それだけ伝えると無言でスッといなくなる。2人は言われたホテルの裏手に向かうと黒い大きなシャトルが止まっていた。近づくと音もなくスライドドアが開いた。
「失礼しますね」
中に入ると初老の男性が座っていた。ドアは閉まるがシャトルは動かずその男性が語り出す。ミーシャは勿論隠れて護衛をしている。
「初めましてアーブラハム王国、国王マリアーノ・ルーナと申します。クーン精霊王国国王アーネスト陛下、大変申し訳ありませんこの様な場所に呼び出しまして」
「おはようございますマリアーノ陛下・・」
アーネストとクレアも挨拶を済ませると、2人の事は密偵を送り込んだラインスラストから情報を得ていたと教えてくれた。
「ラインスラストの事は既に掌握していたのですね、アルド総統閣下はご存知なのでしょうか」
「いや、”彼の機関”とは連携してないので知らないはずだ」
「そうですか、本題に入りましょう」
もう、この一言のやり取りでこの国は不安定な状態だと気がつくアーネストだった。
「この国は只今大変不安定になっておりまして、現在議会を仕切っているアルドは将来的に独裁者を目指し事を進めております。今回の和平交渉も不公平な要求を行う可能性があり、先にお耳に入れたく赴いた次第なのです」
「ああ、だからクレアを舐め回すように見ていたのか」
「ええ、気持ち悪い目で見られ、彼の思考を読みましたが私に対し強烈な独占欲が読み取れました」
「なんと、思考が読めるのですか」
「それはですね、私たちの特殊能力でして・・」
驚くマリアーノに魔力と魔法について説明をすると、なんとなく理解した様だ。
「それで何か強権を発動するかもしれないのですね」
「はい、十分に考えられます」
「陛下、この国の将来を憂いているのですね」
「私が情けないばかりにこの様な事になってしまいました」
そしてマリアーノは帝国に変わる経緯を詳しく教えてくれた。
「私達に何か出来る事はお有りでしょうか」
「流石にそこまでは考えておりません、私としては平和的にただ無事に済むことを望むだけです」
マリアーノは反抗する貴族達を抑えられなかった責任を感じ、苦労が表情に現れ、言葉から読み取れた、同時に思考を読み取るとそれも同じだった。忸怩たる思いなのだろう彼は信頼を置ける王だとアーネストは思うのであった。
ーー
「アーネスト、わたし誘拐でもされるのかしら」
シャトルから降り朝食を食べにホテルに戻った2人は今後の話をしていた。
「交渉材料に君自身を使うとは考えられないが、裏でプレッシャーを掛けて有効の証として適当な役職を与え側に置く、又は交渉が終わった段階で奪いにくるかだろうな」
「ふむふむ成る程です。専属特使として側に置くという事ですね」
「余裕だねクレア、不安はないの」
「そりゃ魔法使えますから!」
クレアは攻撃も出来るが精神支配と防御が得意だ、もしアルドが襲ってきても簡単に操れるのだ。
「明日から数日間は細かいことの折衝だから大丈夫だと思うけどね」
「もう!帰りの貴賓室ではいっぱい愛して貰いますからね!」
「ソレ確定ですか?」
「当たり前です!」
そして、やはり折衝は難航した。和平条約自体は問題なかったが通商問題に時間を取られる結果となり1週間ほど時間を費やしてしまう。
「明日は折衝を取り止め、休息日とします!」
丸々1週間ぶっ通しで行われた折衝で両者とも疲労の色が見て取れた。すかさずそれを感じたクレアは休息日を取ると言い出した。
事務方「そ、そうですね、一旦休憩をとったほうがよろしいですね」
「休憩ではなく明日は休息日と申しました、その間に内容を精査して頂けませんか、色々同時に折衝していますが意見がまとまらないまま次に進むのは効率が悪いです!」
流石に途中クレアがブチ切れ、休日と称しエルフォードの貴賓室に数時間篭り、アーネストは全身にキスマークをつけられる羽目になった・・。
「うん、明日からがんばりましょう!」
「俺的には休みたいよ・・眠い・・疲れた」
「もう!久しぶりだから、もっと愛してくれてもいいのよ」
「もう時間がないでしょ、帰りな、帰り」
「うふふ、言質取りました、キャ!」
クレアは多少満足したのだろうか、お肌ツヤツヤでとても満たされ清々しい表情だった・・・。
「若いと際限ないニャ!」
「恥ずい・・」
ミーシャに突っ込まれると顔が赤くなったクレアだった。
ーー
事務方「アーブラハムとしてはラインスラストとの通商問題が片付かないと和平条約を結べません」
「わかりました。ここ数日間協議しましたが当事者のラインスラスト側が不在ではこれ以上進めませんね」
和平条約は問題なく結ばれる予定だが、懸案の通商条約に関してはどちらかと言うとデルタリアより距離の近いラインスラストとの折衝がメインに変わってしまった。結局当事者を呼び3者協議を行い更に数日間足止めを食らう事になった。
「それではここにアーブラハム帝国とデルタリア国との和平条約終結を宣言します」
それでも何とかデルタリアとアーブラハムの2国間協議は終わり、ラインスラストとアーブラハムの個別折衝まで漕ぎ着け、今回、急遽編成した合同使節団は一旦引き上げ、日を改め個別折衝を行うと覚書を交わし無事終わった。3カ国が絡んだ事により3週間以上費やしてしまうのであった。
「クレア代理、よく短期間で纏めてくれた。御礼と言っては何だが今晩の晩餐会は盛大に行うつもりだ、もちろん王国派も招くので忌憚なく楽しんでくれないか」
「わかりました、喜んで参加させていただきます」
「それでは暫し休憩したまえ」
折衝中、ニュースで王国派と議会で揉め仲が悪い事を知ってはいたが、アルドはそれとこれは別と言わんばかりに国王派も呼ぶと言い出した。議会ではいがみ合っているが、客人に対しては別だという事らしい。それとも何か策があるのだろうか、気になり思考を読むとやはりクレアに対してドス黒い感情が読み取れるのだった。
「・・・(何かあるな・・国王派を呼ぶ理由が考えられないのだが」
「・・・(うひゃ!私狙われている!」
そう、折衝中は不気味な程静かだった。国王派を呼ぶという事は何か目を逸らす目的があるのではとアーネストは感じ、間違いなく晩餐会が終わった後に何か仕掛けて来ると思うのだった。
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