アーリー宇宙探検を任される、そしてマーベリックを見かける件
久しぶりにマーベリック登場!
デルタ国の宮殿、アーノルドの私室に二人の姿があった。
アーノルド「アーリーの手腕には脱帽したよ」
アーリー「滅相も御座いません、アーネストが活躍すればクーンの評価も上がりますので」
「すまんな、私も行きたかった」
「陛下は不死ではないので、危険な事は私とアーネストにお任せください」
「アーリー、本当にありがとう。君さえ良ければ正式にデルタリア探検隊に加わってくれないか、勿論資金は出す」
アーリーはラインスラストとの和平条約締結報告を行う為デルタリアを訪れていた。そして陛下はその手際の良さを認め、クーン宇宙軍を正式に探検隊に加えて欲しいとお願いするのだった。まぁ、不死のクーン王族に任せたいのが実情なのだ。
「陛下、エルフォードと同系艦の強力な戦艦を建造して頂けませんか」
「ふむ、結構な費用が必要になるな」
「はい、ラインスラストは下調べが済んで問題ありませんでしたが、これから先は宇宙軍を増強し臨まれた方が宜しいかと」
アーリーはまだ出来たばかりのデルタリア宇宙軍は練度も数も足りて無く、そして有事の際太刀打ち出来ない可能性があると考えていた。クーン宇宙軍は丁度艦船の更新時期を迎え、絶賛建造中だ。それでも50隻を揃えるのがやっとなのだ。
「わかった、軍の再編を行い費用を捻出しよう」
デルタリアは統一国家に代わり全ての軍隊を再編したが、新たに宇宙軍が加わり人員配分、予算配分に苦慮していた。
「歩兵は必要ですが、もし艦隊が撃破された場合、静止軌道上から砲撃され壊滅的な打撃を受けます」
「未知なる敵と戦う準備をするということだな、クーンも増強するのだろ」
「はい、クーン軍も増強致しますが乗務員の訓練には限界があり、いきなり増やせないのが実情なのです」
「そうか、両国共同調して揃えなければならんな」
そしてデルタリア、クーン、二つの国が力を合わせ軍備を増強していくのであった。
「久しぶりに街に行こうかしら」
「アーリー様、偽装して下さい」
「そうね、あなたが大変だもんね」
「御意!」
アーリーは金髪からグレイに、顔は20代後半、普通のお姉さま風と軽めの偽装を掛け街に繰り出した。
「貴方も食べなさいよ」
街をひと回りした後レストランに入り、出来立てのあの丸いやつをジャガーに勧めるアーリー、しかしジト目で返してきた。
「私は狼ですが猫舌なのです」
「チッ、見てたのね!」
あの時、細かい動作が見える程近くにいなかったジャガーだが、熱くて慌てるアーリーの声は届いていたようだ。
「もう、熱いから美味しいのにね!ほら」
「あっち!」
ジャガーの口元にアレをくっつけ、更に押し込む悪戯アーリー。
「ねっ!美味しいよね!」
「ハグ!ホッ、ヒャー」
繁華街の入り口のオープンテラス席でそんな阿保な事をしながら2人で食事を楽しんでいたら、何やら見覚えのある男が通り過ぎていく。
「あら、アイツってマーベリックじゃん、カッコ悪」
議場で退出させられて以来、久しぶりにマーベリックの姿を見た。刑期を終え出所したとは聞いていたが、あの時の仕立てが良い服とは違い安物のパーカーにスエットを穿き、見た目もそのまま輩に豹変していた。
「ンッ、誰だ呼んだか」
アーリーの呟きが聞こえたのか振り返り周りを見渡すマーベリックの人相はそれはそれは酷かった。
「あら、貴方は上級貴族のマーベリック君ですよね」
「わわわ」
マーベリックの問いに答えるアーリーを見たジャガーは少し慌てていた。
「誰だお前、知らんな」
「まぁお忘れですよね、一度挨拶はしてましたが何の変哲も無い私なので覚えててませんよね」
アーリーは美人には見えない様に偽装していたのだ、現在のマーベリックが知りたくてわざと嘘というか恍けていた。
「ふん、俺はもう貴族じゃないんでね、なんか用があるのか?んっ薬が欲しいのか?」
軽く精神魔法で現状を喋らせたアーリー、マーベリックは落ちぶれ今は薬の売人だと判明した。
「薬はいらないわ、それよりマーベリック君は家を再建しないの?」
「フン、親父は破産したんだよ、絶対アーリーがやったんだ殺してやりたい」
「先物で損をしたんでしょ、自業自得じゃないですか~」
「なぜ知っている、秘密のはずだぞ」
「ウフフ、貴族から流れる噂ですよ」
「本当にお前誰だよ、名を名乗れ」
「メンディエタですよ」
「ふん、知らんな、用が無ければもう行くぞ」
「お手間を取らせて済みませんでした」
マーベリックは不機嫌そうに肩で風を切るように歩き出し50m程歩くと、ぴたりと止まり振り返った。どうやらメンディエタの名前を思い出したようだ。
「彼、気が付きましたね」
「支払いは済んでるわ、行きましょうねメレルちゃん」
「アーリー様、遊んでますよね」
「ええ、あの後真面目になって頑張っているかもしれないと思ったけど、やっぱ駄目だったか、救ってあげようかしら」
すぐさま店を出ると鬼の形相のマーベリックは全力で走ってきていた。
「殺す、アーリーお前だけは許さない」
大声をあげ、手にはナイフを握りしめ殺意全開でアーリーに近づき飛びかかろうとするが、その距離が一向に縮まらない。既に魔法を掛けられた本人は走っている感覚なのだが、ナイフを握り足踏みをし、罵声を上げながら何がしたいのか良く分からない状態だ。
「プップ、本当に相変わらずのおバカさんね・・あなた」
「なん、だと」
「親父さんの失敗も私のせい、貴方が落ちぶれたのも私のせい、自分の行動を振り返りなさいよ、あなた自身が生んだのよ、プップ、いい加減走るのやめたら?」
そう、その滑稽なエアジョギングはまだ続いていたが、アーリーに笑われ諦め、流石に足を止めた。
「はっ! 五月蠅い、ウルサイ、うるさい、お前がいなければこうはならなかった!」
憎悪全開のマーベリックはアーリーの言葉が耳に届いていないのか、現実逃避なのか喚き散らしていた。
「ウフフ、そうれはそうね、けど私と出会ったからメッキがはげ落ちただけよ、遅かれ早かれ落ちぶれるのよ」
「メッキだと、俺の人生はそんな安いもんじゃない!」
「直向に努力するアーネストを見て何も思わないの、貴方は寝る間を惜しんで努力したのかしら」
そう言われた事で一瞬自分の歩んできた今までをチョット振り返るとその言葉が胸に刺さる、そう彼は何も努力をせず親の威光を借りてきただけだった事に今更気が付いた。
「うっ・・努力だと」
「ハイナーさんは助けてくれたの?仲が良かったじゃないの」
「アイツは俺を裏切ったんだ!」
「貴方が上位貴族だからよ利用されていたのね、残念ねマーベリック」
ハイナーはマーベリックが刑務所に入所した当初は面会に来ていたが、テディー男爵が先物で破産し一般落ちした頃から急に疎遠になっていた。上位貴族に返り咲く可能性が無くなり、見切りを付けたようだ。
「くっそ俺を利用していただと」
「最底辺に落ちてまだ気が付かないのかしら、これからは努力して這い上がればいいだけよ」
「そうなのか、そんなに答えは単純なのか」
「そうね、精々頑張りなさい」
アーリーはマーベリックの凶暴性を精神魔法を操りながら少しずつ抑え、進むべき道のヒントを与えていた。
「わかった・・」
そう一言呟くとマーベリックはナイフを仕舞い静かに歩き出す。その表情は先程と違い少しだけ輝いていた・・・。
「アーリー様、何故助けたのでしょうか」
「んっ?放置しても碌なことにならないし、一度底辺まで落せば自分を客観的に見れるでしょ、これで駄目なら彼はそれまでって事よ」
「なるほど」
この後マーベリックは意外な道を選んだ。色々思考を巡らせ街を彷徨い、街角にあるとあるオフィスへと足をむけるのだった。
「いらっしゃいませ、入隊希望者でしょうか」
「嗚呼、そうだ。軍隊は実力主義だろ」
そう、彼はデルタリア軍の軍門を叩いたのだった。
ーー
マーベリックと別れたアーリーはデパートで手土産を物色、買い物が終わるとフォーレストに行くと言い出した・・・。
「御意!」
そして1時間後、城の客間でエルシーと喋っていた。
「エルシー、あなたの任期はもう数年後だっけ?」
「はい、そろそろ次の候補者を探し始めようかと思っているところです」
フォーレスト王国として一つの国に変わったが、エルシーは次の女王誕生までの代理としての姿勢を崩さなかった。
「貴女がそのまま初代女王になる方が好ましいけど、あれでしょ旦那さんを待たせてるからでしょ」
「はい!ダーリンを王にすると絶対他の族長から不満が続出しますし、早くラブラブしたいのです!」
エルシーの肩書きは女王だが実際には一部族の代表者なのだ。不満が出ないよう財力のある族長ら数十名が輪番で選出し回しているに過ぎなかった。だから次こそが正式な初代として選ばれる事を望んでいるのだ。
「あのね、デルタリアが宇宙探検を本格化するの、交代する前にクーンのシールド技術を寄与するから守りを固めて欲しいの」
「はぁ、族長会議で揉めそうですね」
一応、自衛隊のような治安維持部隊を保有していたが、軍備に関しての議題は毎回揉めていたのだった。そう、武器の更新、訓練所の予算など一々文句をつけ会議が長引くのだ。その事を考えると頭が痛いエルシーだった。
「せめて重要施設は防御能力を高めないと、攻撃されれば即座に滅びるわよ」
「わかりました、最後の一大プロジェクトとしてやり遂げます!」
気合を入れたエルシーは翌日緊急族長会議を行い議案を提出すると何故かすんなり可決してしまい拍子抜けをした。
族長A「ふむ、守りは重要だな」
族長B「ああ、武力は必要ないが説明を聞く限り強固にしたほうが良さそうだ」
争いを嫌うエルフの心情にドンピシャだったのだろう、防御装置設置は当たり前だと言わんばかりに、反対討論は無く満場一致。エルシーは最低でも1週間は必要と思っていたが午前中に終わり拍子抜け。貴賓室で見学していたアーリーは苦笑いしていた・・。
「アーリー様、拍子抜けしましたね」
「まぁ、よくよく考えてみれば軍事力とは言え防御の話だからね」
会議が終わり、客間でお茶をしている2人は今後の事を話していた。
「もう、気合を入れたんですけど!」
「そうそう、クーンの技官に聞いたら城のシールドを最新型にしてみたいって言われたの、次世代のシールドで強固なんだけどエナジーコアじゃないと動かないらしいのよ」
「大丈夫です、デルタリアの戦艦が増えると聞きエナジーボールの生産増強して余裕があります」
「よろしくね」
「今日はもうクーンにお戻りになりますか」
「そうね、側室のことは進展無いし戻ってやることが山積してるのよ」
「うふふ、宇宙探検隊の方がお忙しいのでは」
ただでさえ忙しいアーリーが宇宙探検隊に加わり、政務の一部をクレアに任せっきりだったが、女王決済案件が滞り急いで戻って判断しなければいけなかったのだ。
「もう!帰るわよ!」
「御意!」
今回、旗艦エルフォードではなく新型20万トン、ボスワース級に乗り、テストを兼ねてフォーレストに来ていた。
アーリー「この子は問題点は無いの?」
艦長「はっ!設計当初のエンジン出力がまだ出せずに苦慮しております」
「それって何が問題なの」
「組み上げ精度の問題だと思われます
「クーンに戻ったらウラッツェンと一緒に改善しなさい!」
「御意!」
そしてアーリーは急いでクーンに戻り残務整理に追われるのであった。
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