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今まで静かに後ろに控え、話の行く末を聞いていたアーネストは即断を求めるアーリーを諌める為、大使との会話に割って入ってきた。
特使「失礼ですが貴方様は?」
アーネスト「申し遅れましたクーン精霊王国、国王アーネスト・ウェブスターです」
「はっ?国王?自ら?」
女王アーリーが全権を握り、後ろに控えていたアーネストを従者と思い勘違いしていた特使は国王と聞きひっくり返るほどびっくりしていた。
「アーリーは私より交渉に慣れていますので任せているのです。それと私も出向けば話が早く済みますので」
「わ、わかりました、おふたりがこの場にいるという事は信用に値しますので、今からサインいたします」
戦場に出向く女王アーリーと国王アーネストの積極的な行動を目の当たりにした特使は納得したのかサインを交わした。覚書を携え本星に戻ろうと離席した時、時の総統トマスに直接会いにいくとアーリーが突然言い出す。
「ねぇ特使、トマスと会いたいんですけど」
「ええ、アーネスト陛下様、アーリー女王様よろしいのでしょうか、帯同するとは連絡しておりまあせん」
「ああ、構わないよ、いきなり現れ友好的に接すれば度肝を抜くでしょ」
「ふふ、そうね楽しみね!」
「・・・」
笑みを浮かべる2人を見て引き攣る特使。普通は断固拒否するのが普通なのだが・・。
司令「だ、大丈夫なのでしょうか」
特使「大丈夫だ、問題ない!」
何か確信があるのか大丈夫だと言い切る特使、通常では考えられないのだが先程までビビっていた態度とは一転自信満々だった。
「そ、そうですか、特使がそう申されるのでしたら私は異論はありません」
「さっ、いこ!早くいこ!」
「こらこら」
ーー
二人を乗せたシャトルは総統府内のVIP駐機場に着陸し、特使を先頭に何故か3人しか降りて来なかった。そう、アーリーの姿はなかったのだ。艦長はここでお別れ二人はトマスが待つ客間に向かった。
トマス「おお、よく戻ってきた特使、大義であった」
そして何も問題なく総統府の客間に入る二人。周りの護衛は一瞬アーネストを見て首を傾げたが、堂々と入室する特使を見て問題ないと判断したのか、客人と思ったのか動きはしなかった。
特使「はい、いきなりですが和平条約の前段階の覚書を交わしてまいりました」
「そうかもう覚書を交わしてきたのか、敵意はないと言う事だな、ふむ良かった」
「はい、多少急かされましたが、終始友好的でした」
「ところで君の後ろに控えている見た事のない若者は誰だ?それ軍服か?」
アーネストはクーン宇宙軍の儀礼服を着ていた、もちろん剣や銃は携帯していない。
「初めましてトマス総統閣下、わたくしクーン精霊王国、国王アーネストと申します。今回条約締結前のご挨拶に参上した次第です」
「え゛?」
さも当たり前のように胸に手を当て、爽やかに挨拶するアーネストを見て固まったトマス。周りの護衛達も訳が分からずキョトンとしていた。
特使「閣下、これには深いわけがありまして・・」
「トマス総統閣下、もちろんサプライズです!ですがいきなりは驚きますよね」
「君、めちゃくちゃ若くない、本当に国王なの?」
20代前半に見えるアーネストの姿を改めて凝視して、呆気に取られていたトマスは妙に情けない声になった。
「ええ、若すぎますか?それならもっと若い女王も呼びましょうか?」
「はぁ、なぜこのように気楽に入れた、君は入れないはずだ」
「アーリー説明して」
「わかったわ!」
パサッ、認識阻害の幕を外すとアーリーが姿を現す。
「おお!」
「何だいきなり!」
「おっ、美人じゃね」
「そ、そうだな確かに美人だな」
周りの護衛が一瞬警戒心MAXで腰の銃に手が伸びるが、正装、武器は持って無くキリッとした綺麗な立ち姿のアーリーを見て皆それ以上は動かなかった。彼女はラインスラストでも美人に見えるらしい。一部の事務方の鼻の下が伸びていた・・。
「初めましてトマス、私がクーン精霊王国女王アーリー・メンディエタと申します、お見知りおきを」
アーネストと同じく当たり前のように涼しい顔で挨拶し、綺麗なカーテシーを堂々と決めたアーリー。
「はい?今なんと、女王?」
「ええそうですわ、直接総統閣下に会いにきましたのよ」
「護衛も無しに来たのか?」
「はい、私とアーネストをそもそも殺すことは不可能ですのですし、トマス総統、既にラインスラストは数ヶ月前に下調べを終えていましてよ」
ドヤ顔のアーリーは不敵な笑みを浮かべていた。
「え゛?なんと、そのようなことが出来るのか」
「勿論です市井の人々から総統の評判を聞き、素性を調べ問題ないと判断し此方に直接伺いましてよ、国民に好かれとても良い為政者ですね!」
全く遠慮する事なくハキハキと言い放つアーリーの言葉に感銘?衝撃を受けたのか、トマスはその規格外の態度が面白く感じたのか笑い始めた。
「ハハハ!これは恐れ入った、いや、すごいなアーリー、宜しくな」
アーリー達は既にこの国は問題ないと判断していた。誰に聞いてもトマスの悪評が出ないのだ。帝国に変わり数百年経つが独裁的な事はせず安定していた。
「はい、こちらこそ宜しく頼みます」
トマスは立ち上がりアーリーに近づき握手を交わし、続いてアーネストに握手を求めた。
「だが、なぜ入れた?特殊能力なのか」
「私の潜在能力です、魔法といったら分かりやすいですかね。特使には悪いですが少し操らせて頂きました」
「ああ、それはなんとなく分かるがなぜ普通に喋れる」
「この装置を使って喋っています」
アーネストは耳に装着してる小さな装置を見せた。
「これでわかるのか」
「はい」
アーリー達が普通に喋れるのは事前に言語を調べ、同時翻訳の装置を耳に装着しているからだ。喋れる場合は機械を通し、首の下にある薄い小型スピーカーから音声が流れるのだった。
「技術的にはそちらの方が進んでいるのだな」
「そのようですね」
「君らの行動力には脱帽するよ、今宵宴を行うのでゆっくりして行ってくれ」
「ありがとうございます」
この強行的な出逢いが逆に、一気に信頼を得る結果となり、ラインスラストとデルタリアは急速に親密になっていく。
「アーリー、今から妻を紹介しよう、私邸に参られよ」
「総統、だ、大丈夫なのですか」
あまりにも急速にことが進み、異世界人の二人に対し不安を覚える事務方の一人が、トマスに助言を出す。まぁ普通に考えればそう思うのだが、アーリーの首飾りを見た総統は確信を得ていた。
「アーリーの首飾りを見て分からないのか」
「とっ、申しますと?」
「アレは妻が欲しがっていたヌーベルトの新作ではないか、作者が気に入らないと売らない逸品だぞ」
「まさか、本人と会って買い求めたと」
「まっ、そう言うことだ。彼は気に食わない相手には売らないからな、例え私の妻としてでもだ」
「はぁ、確かにそうですが・・」
「あれは値段の折り合いが付かず買わなかったのだよ・・」
デルタリア艦隊が訪れる2週間前、市井の人々にトマスの評判を聞き、司令本部に潜入し将校にラインスラスト軍の考えと言うか、異星人に対しどの程度の考えを持っているのか意見を聞き全ての調査が終わったある日。
「アーネスト、ラインの宝石を見てみたいんだけど」
「ああ、それは構わないよ。けどどうして宝石?」
「ほら、芸術品と一緒だからさ、その国のレベルと言うか、宝石のデザインを通じてなんとなく文化の度合いがわかるのよ」
そして早速首都で一番大きな宝石店に向かったのだった。
「ねぇ見て、これ派手すぎない?品質の低い大きな石を使ってゴージャスに見せているだけよ」
そのネックレスは質の低い大きな石を中心に邪魔しないように小さな宝石達が取り囲んでいる品だった。
「ふむ、俺には派手さしか分からないが」
「そう、それよ、見た目重視で全体のデザインは全然洗練されてないわ」
「なんだど!」
いきなり宝石を見て寸評をするアーリーの前に一風変わった髪型と変な服装の男が仁王立ちしていた。
「あら、店員さんなの?これって一言で言うなら田舎くさいわね、もっと洗練された物はないのかしら、金の質も良くないし」
「お、お客様、この作品は、こちらのヌーベルト様の最新モデルでして・・」
その宝石の作者ヌーベルトは激おこ、それを感じたのか店員は慌てて説明していた。
「あなたが制作したの?ちょっとこれ酷くない?」
「お前に何がわかるのだ」
「だって質の悪い大きな人造ダイヤをメインて、プークスクス、無いわ〜」
大笑いのアーリーに馬鹿にされたヌーベルトは怒り心頭、店員はその様子を見て大慌てだ。
「お、お客様・・」
「お前に本物がわかるのか!」
「ええ、これ見てくれる?品があるでしょ」
アーリーが見せたのはアーネストがデルタ国の宝石店で送った品だった。
「こ、これは・・・高品質なプラチナを使用しているでは無いか!それもダイヤはこのサイズでフローレンスクラス・・何故だシンプルなのに存在感があるデザインを作れる!」
ヌーベルトは手に取ったネックレスを一目みるやルーペを使い品定め。そして製作台に置くと腕を組み眺め唸っていた。
「ふん、あなたの国はこの程度の美的感覚なのね、ガッカリしたわ」
「クッソ、この国は一つだ、アンタはどこの国の出身なんだ」
「だって説明してもわかんないでしょ、遠く離れた星から来た異星人よ」
「何だと!ふん、そんな事はどうでも良い、これを暫しお借りできるか」
ヌーベルトに異星人だと言い放つが、彼は全く気にしてなかった。そんな事より目の前の宝石の素晴らしさに感銘を受けそれを借りたいと言い出す。
「ふむ、それは困りますね。そのネックレスは近々使うつもりなのです」
「ちょっと待って!俺の感性を注ぎ込んだ一般には発表していない新作があるのだ、代わりにそれを身につけてくれないか!」
アタッシュケースから取り出したネックレスをアーリーに差し出した。
「まぁ、これなら悪くないわね、少し石の配置が気に入らないけど」
最初に手に取ったネックレスとは違い、本物のダイヤを使い、派手さを抑えた少し変わった作風だ。一目見れば彼の作品だと分かる特有の癖が前面に出ていた。
「そ、そうか、ちょっとの間これ借りるぞ」
「良いわよ、アーネスト2週間後くらいかな?」
「そうだね、余裕を見てそれくらいだと思う」
「じゅ、十分だ、双方の借用書にサインを頼む」
こうしてアーリーはヌーベルトの作品を借りることになったのだ。
ーー
ラインスラストに滞在して1ヶ月後・・・。
「それではまた会おう」
「総統閣下、次は是非ともクーンにお越しください」
「この頂いたジャンプ技術を使って是非とも行ってみたいな」
アーリーはジャンプ技術に関して製造方法や実験データなどを細かく教えるために長期間滞在したのだった。勿論エルフォード搭載の最新システムではない。
「装置を含めエンジンなどお送りしますので実証実験後、量産を始めてください」
「うむ、すぐにデルタリアに追いつくからな。ウラッツェンの事は頼んだぞ」
「はい承知しております、お互い切磋琢磨しましょう」
この出会いが受け継がれラインスラストはクーン、デルタリアと一度も敵対することなく、強固な同盟関係を築き共に発展していくのであった。
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