ジャガーは護衛。
配下のジャガーが姿を表し護衛任務を再開しました。
父ディーンとの面会が終わり、議会棟の玄関に行くとラッセル達が待ち構えているのが見えた。
「よっ!王様」
「なんだラッセルその格好は!」
ラッセル達5人は黒の戦闘服に身を纏い、小型速射レーザー銃を肩に下げ、腰にはハンドガンも装着されていた。
「君たち3人の護衛だよ。陛下が指示してさっき議会の承認が下りた」
「アーリー様、お久しぶりでございます」
「この後もよろしくねジャガー」
ラッセルと同じ格好の1人がスッとアーリーの前に跪き挨拶を述べた。戦闘用のマスクを装着しサングラスを掛けていたがアーリーは正体を知っていたようだ。
「御意!」
「へっ?ジャガーなの」
「流石に配下は繋がっているから気配で分かるわよ」
「配下?」
「そうよ、私の配下の1人メレル・ジャガー、貴方も知っているでしょ私の専属護衛よ」
「なぜ今ここに?」
「ミーシャと別れるときに侍女も執事も連れて行かなーい、って言ったら、”承知しました”と言って笑っていたもん」
「はは、全てお見通しってわけか」
「よろしくねジャガー」
「アーネスト陛下、就任おめでとうございます。この度は王になられた事、大変うれしく思っております。わが命に代えてお守りする所存です」
「相変わらず堅いわね!」
「ありがとうジャガー」
「はっ!」
「ジャガー、知っていると思うけどクレアの警備を厳重にしなさい」
「承知しました」
「アーリー、何故私だけ?ああ、そうかそういう事か」
「まぁ、それについても後で詳しく説明するよ、アーネストこの後はどうする」
「一旦荷物を置きにホテルに戻って、それから食事に行くよ」
「そうか、あのなアーネスト、晩飯は ”ナイト・オブ・キング” にしないか?」
ラッセルから突然の提案を受けた、その店ナイト・オブ・キングは特別な店、場所は王宮内だ、アーリーとアーノルドの非公式会談を行うという事らしい。アーリーに説明をした後、一旦ホテルに戻り少し寛ぎ着替え秘密の場所に存在するお店、「ナイト・オブ・キング」に向かった。
「おお初めて見たわ、凄いなこの店・・・」
「名前からして王族専用でしょ」
入り口は客間と変わらない扉なのだが、一歩中に入ると横に伸びる廊下があり群青色の壁、フットライトと反射式のトップライトでとても雰囲気が良い。執事に案内され中に進む。
「数年前、警備上の理由でここを作ったのさ、働いているスタッフは王宮の一流料理人達だよ」
「そっか、クーンも真似して作ろうかしら」
「そうだね、往来が激しくなったら考えても良いんじゃない?」
この店は王宮の中を通ってしか入れない超VIP用の店だ。料理の質はデルタリアのトップクラスの料理人が作っている。ラッセル達は控室に、アーリー達は個室で待機していた。
「陛下入場」
3人は立ち上がり陛下を迎えると、会談の時とは違いフランクに話しかけてきた。
「あー、楽にして下さい、悪いね急に呼び出して」
「いえ、問題ありませんいつでもお呼びください」
「そう言ってくれると助かる、まぁ一杯飲んでからにしよう」
「はい」
挨拶もほどほど乾杯も終わり、前菜が運ばれ一口食べた所で陛下が口火を切る。
「今日はな、早急に相談したいことがあってな」
「アーノルド陛下、何なりと相談してください」
「アーリー女王に迷惑をかけた貴族の扱いについてだ。世襲は構わないのだがマーベリックの様な権力を履き違える者をどうにかしたいのだ」
アーノルドの相談はやはり上級貴族のことだ、議会で無礼を働いたテディとマーベリックの事を含めデルタリア全体の事だった。最初の会談でアーリーの忌憚無い意見を聞き解決の糸口を掴めると思ったのだろう。
「現在はどのような教育をしているのでしょうか陛下」
「それぞれの家に任せてある」
「それでは甘えが出て我儘に育ちませんか?」
「そうなのだ、家によってバラバラなのだよ、没落貴族も定期的に出てしまい安定しないのだ」
「なるほど、その地域特有の考えが根付いていると」
「勤勉な地域もあれば、放任主義の地域もあるのだ」
アーノルドは上級貴族の扱いに苦慮していた。貴族大学を設立をし実力本位のカリキュラムを取り入れたのだが成人までの2年間と在学期間が短く、思う様な成果が上がっていなかった。
「それはいけませんね、王国を中心とした競争社会に変えないと不平不満が募って内戦に発展します」
「クーンではどのように統治しているのだ」
そこでクーンの統治方法を参考にでき無いかと尋ねると、アーリーも同じ様な問題に直面しその時の解決策をアーノルドに教える事になった。
「基本獣人たちは力関係で決まりますが腕力だけが全てではないことを教え、それぞれの職業に応じたマイスター制度を採り入れ技術、人望、指導力など細かく採点し、序列を決めるのです。そうすることによって皆腕を磨こうと邁進するのです」
「ふむ、野蛮ではないのだな、そうか、それは良い手だな」
「ええ、確かにそうですがこの制度を定着させるのに相当苦労しました」
「アーリー女王、大学はやはり形骸化していると思うか」
デルタリアは大学が2年間しかない。それは20歳までに結婚するか婚約者を見つけると言う貴族の仕来りがあるからだ。
「はい、大幅に変更し7年制、22歳卒業に変えたほうが良きかと」
アーリーが語ったそれは、20歳で卒業する2年間の貴族大学ではなく高校を含む7年制に変え、入学した段階で爵位は全員同じとし、成績や実績に応じ上げ成績の悪い者は徹底的に補習を行い、卒業までに一定度のランクに達し無い場合は家督を継ぐ権利を与えないようにすると激変すると話した。
「ふむ、学校、学部内で競争させるのか」
「はい、荒治療ですが効果は絶大です。クーンも似たような制度に変え規律が生まれ適正者を後継ぎにする事で安定しました」
「だがデルタリアは基本長男が家を継ぐからな、家督を継げない場合はどうしたら良いと思う」
「家の格ではなく本人の能力に応じた婚姻を認めるようにするのです。出来の悪い上位貴族の子息の所には、格に関係なく能力の高い子女を”領主”に抜擢するのです」
「なんとそこまでやるのか、それはいきなりは無理だな」
「そうでしょうか?制度を作れば数年後、領主を目指す女子たちが必ず生まれます。例え領主になれなくても能力のある女性は活躍します」
「わかった、とても参考になる」
「陛下、前回の事件を上手に使って改革してみてはいかがでしょうか」
「そうだな、鉄は熱いうちに打った方が良いな、すまん、話が長くなった食事を進めよう」
「はい」
少しの間、世間話をしながら食事を進め、アーリーが陛下に設問をする。
「陛下、1つ問題を出しますね」
「何なりと受けて立つ!」
「とある製麺組合は同じ・・」
そう、マーベリックに出した同じ課題だ。
「陛下でしたら、どのように解決しますか?」
「うーん、出来の悪い生産者の給与を下げると貧困が生まれるよな」
「ええ、勿論です」
「ならば質の高い物は高く、低い物は従来の値段で販売し差額を調整し、腕の良い職人の給料を上げるのが一番良い選択かな」
「はいその通りです、適正な格差は逆に競争に発展します」
「もしかして、新しい学校を作るヒントか?」
「そうです、一律に教え成績の差で”区別”するのです」
「なるほど、落ちこぼれには厳しく、上位者にはそれなりの褒美を授ければ良いのか」
「はい、そこまで実施出来れば学生たちは嫌でも勉強します。貴族は富の象徴ではなく国を引っ張る象徴に変えていくのです」
「貴方に相談してよかった、本当にありがとう」
「いえ、共和国として再出発し社会不安が解消され、その安定的な地位に安堵し保守的になっていたのでしょう。成長するに従って国の形を変えていかなければ更なる発展は見込めません」
「そうだな、その通りだな」
「お役に立れば光栄です」
その後は世間話に終始、それなりの時間を共に過ごし陛下は席を立ち離席して行った。
「ふぇ、難しい話で緊張したね」
「アーリーでも緊張するんだ、貴族に関して相談できる相手は少ないからね陛下もすごく真剣だった」
「はぁ、それじゃ帰ろう」
「そうだね」
緊張した食事会も終わりホテルに戻ったアーネスト一向、ラッセルの護衛任務もここまでだ。
「それじゃ帰るよアーネスト、明日は朝から買い物だろ」
「ああ、そうだよそのつもりだ」
「明日は楽しみにしてろ」
「なんだ?」
「明日のお楽しみだ」
ラッセルは陛下から何か言われたのだろう、訳を話さず笑いながらその場を離れた。ジャガーはそのまま居残りアーリーの護衛任務だ。
「さあ!飲もうよ」
「アーリーさん毎日飲酒ですよ」
「えー、今日まで良いじゃん」
「はぁ~、ほんと好きね」
「だって、クーンは酒飲む位しか楽しみ無かったんだもん」
「私はお風呂を先に頂きます」
「うん、そうして、そうして!アーネストも入ってくれば?お風呂もう一つあるでしょ、わたしゃ飲んでるわ」
「そうするよ」
アーリーはアーネストにチュっと軽くキスをするとポフンとソファーに座り、早速飲み始めた。
ーー
「アーリー」
「・・・・」
そして数十分後、アーネストは先に上がりアーリーを探すがその姿はどこにも見えなかった。
「たぶんバーかな気を使ってくれたのか、ありがとう」
そしてアーネストの読み通り、ホテル最上階のバーで飲んでいたアーリー。
「お待たせしました、デルタスリングです」
シルエットが細いカクテルグラスにルビー色のカクテルがアーリーの前に置かれる。
「コク、うん、フルーティーで美味しいね」
「ありがとうございます」
アーリー女王に美味しいと言われ、少し頬が緩みお礼を述べたバーテンダー。
「あーあー、今から途中乱入しようかしら?流石に駄目よね・・クレアに一生言われそうだわ」
「お姉さん1人?一緒に飲まない」
アーリーは背後から声をかけられる、そいつはどう見てもナンパ目的のチャラ男だった。
「良いけど覚悟あるよね」
振り返り、声を掛けたチャラ男がアーリーの顔を見て即座に顔が引きつる。
「ア、アーリー女王様でしたか・・・それで覚悟とは?」
「はいアーリーですよ、あなた私が1人だと思いまして」
「へっ?ゾゾ」
”ゾクゾク”と背中に殺気を感じ、身震いするチャラ男。
「駄目だ、振り返ったら絶対怖いのがいる」
「フゴー、フゴー」
「何の鼻息なんだこれは」
「ふふふ、お話だけなら死なないわよ」
「い、いえ、いいえ、け、結構です!、イ゛イ゛ヤー!」
全身に恐怖を感じナンパ男はその場を逃げ出すが、目が真っ赤に血走った”狼”の顔が至近距離で一瞬見えた。
「ふん!意気地なしね、ジャガー、一緒にのも!」
「はい、仰せのままに」
「もう、あんた硬っ苦しいよ」
「はい」
酒豪アーリーに付き合う羽目になったジャガーは諦め顔だった・・・。
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