アーリーの過去とアーネスト。
アーリーの成り立ちをお話しする回。
一台のシャトルがアーネストの屋敷の前に止まった。そしてスライドドアが開くとアーネストは手を差し出し白いレースのグローブと重なる。
「ようこそ我がウェブスター家に」
「ありがとうアーネスト」
シャトル中からアーリーがエスコートされ降りてくるその出立は細身の純白のドレスを纏い凄く清楚だ。その立ち姿と美貌を目にした両親は予想と大きく違ったのか目を丸くして驚いている。
「お、お待ちしておりました、アーリー女王様、私が主人のディーンです、さあ中にお入りくださいこちらにどうぞ」
「こんにちは、クーン精霊女王アーリーです」
緊張し少しぎこちない挨拶を終え、婚姻の話を始めたがいきなりアーリーが”今回このようなご縁になる事を最初から望んでおりました”と言い放ち、両親は共に驚いていた。
「滅相も御座いません、この様な良縁もったいのう御座います」
「有難うございますディーンお父様、先程、陛下はアーネストを伯爵に格上げすると申しておりました」
「なな、なんと・・・伯爵」
「名誉の爵位だから領地はないけどね」
名誉とはいえ最上位の爵位にいきなり格上げの話を聞き驚くディーン。奥様のシルヴィアは衝撃的な発言を連発されポカンと固まったままだ。
「男爵のままですと格が釣り合わないからでしょう。爵位に関してはあまり好きでは無いのですが、デルタリアの方針に口を出すことは致しません」
「そうですか、それは助かります」
「それと、まだここだけの話ですがハリウェル家の令嬢クレアさんをご存知ですよね、彼女を側室として迎えます」
矢継ぎ早に重大発表が続きディーンは額に汗をかいていた、更に上位貴族の娘が側室として招かれると聞くと驚いたが、アーネストと仲が良かった事を知っていたのか緊張していた面持ちから柔らかな表情に変わりとても嬉しそうだった。
「そうですか、王族、貴族社会において恋愛は二の次ですから、それはとても良いことだと思います」
「ディーンお父様、シルヴィアお母様、不束者ですが今後ともよろしくお願いします」
「ア、アーリー女王様、滅相もございません、お早く頭を御上げ下さい」
両親に向かい軽く頭を下げると、そのまさかの行動に驚き2人は慌てて立ち上がり止めようとしたが構わず話を続けるアーリー。
「お母様、この屋敷の裏にある広大な森は昔から変わりませんね」
「はい、代々この森を守るのが家のしきたりでして、350年前から変わっていません」
「それは良い事ですね、これからも守って頂けたら嬉しいです」
頭を上げたアーリーは窓から見える森を懐かしそうに眺めながら話している。不思議に思った母親シルヴィアが質問すると、とんでもない答えが返ってくる。
「失礼ですがこの森の成り立ちをご存知なのですね」
「はい、遠い昔この森の中で良く食物を探していましたとても懐かしく感じます、私はこの森の近くに住んでいた農家の娘でした」
「そうでしたか、この家の初代ウィル男爵は、森を守っている間はウェブスター家を存続できると申していたそうです」
「ふふ、私との約束を守ってくれたのですね」
柔らかい笑みでとんでもない事を言い放ったアーリーに対し全員ドン引きだ!この時点でアーネストは”明日全て話すよ”の意味を理解したのだった。
「嗚呼、そういう事だったのか・・」
「えええ!しょ、初代と面識があるのですか」
「はい、アーネストとそっくりです」
「なんと・・・・」
「やっと、やっとこの時を経て結ばれました・・・・」
「アーリー。。。」
アーネストはアーリーが自分を欲する意味が何となく理解できたがまだ何となくだ、困惑の色は隠せてなかった。
「気にしないでアーネストいまの私はあなたが一番よ、あの方に面影がそっくりで初めて会った時に驚いてしまったの」
「。。。。。。」
「そう、遠い昔、淡い恋心を抱いていたあの方と・・・」
「・・・・・(混!」
何か常識では考えられない事をさらりと話し、アーネストの頭の中は絶賛混乱中だ。
「ねえ、気になるでしょ!アーネスト教えてあげる!」
「おい!」
「聞きたくないの?」
「そりゃ聞きたいさ」
「フフ、ちょっと待って、記憶を呼び起こすから」
悪戯っぽく笑うアーリーはそう言うと目を瞑り記憶を呼び戻しているのだろうか、10秒程経つとスッと目を開け、するすると語り出す。
「手付かずの広大な森を任されたのがウィルのお父さん、私の両親はこの森を切り開いた時に入った入植者なの・・」
アーリーが話す当時の様子はさも数年前に起こった出来事を話しているかの如くそれはそれは詳細だった。
当時のデルタ国はデルタリア共和国の中心都市として選ばれそれに伴い爆発的に人口が増加、手狭になり100キロ程離れた広大な森が広がる海岸線に首都を移転する事が決まった。その時、開発を任された1人の武官がアーネストの父親であるベイセル、彼は開拓で急激に減る森の惨状を目の当たりにし無闇に広げる事を止め逆に自然保護に乗り出すが、お金を産まない森のおかげで万年貧乏だった。
「周りの貴族からは馬鹿にされていたけど凄い決断をしたよね!」
森を開拓し作物を作り莫大な富を得た連中はいつしか貴族になりベイセルを笑っていた。しかし彼はそんな事は気にせず笑い、いつしかこの森が必要になると口癖の様に語っていたらしい。
「ねぇアーリー、ウィルとはいつ出会ったの?」
「10歳位の時にウィルと森で出会ったの。たしかキノコを探していて鹿と間違って撃たれそうになったのよ、酷いよね、けどすぐ仲良くなって良く森で遊んでいたわ。まだ2人とも子供だったから恋心は無比だけどね」
「まあ、10歳だしね」
その出会いをくれた森は数年経つと逆に儲けを生むようになった。それは心が渇いた人の安息地とし利益を生み始め、生活が安定したと思った矢先に安堵する事なくウィルの父親ベイセルは過労の為死んでしまう。その時、ウィル19歳、アーリー15歳、2人は将来を誓う間柄に発展していたがここで思わぬ事が起きた、それはウィルが数ヶ月後成人する際、デルタリアに貢献したと感謝され”男爵”の称号を授かり生活は激変したのだった。
「その頃の二人は何と無く将来を夢見ていたの、けどね貴族になった彼には縁談が持ち込まれるようになったの彼はその事で悩んでいたわ、2人で逢う時はいつもその話ばかりしていたの」
「貴族だからね仕方ないよな・・」
「結局、ウィルは上級貴族達に押される形でとある貴族令嬢と婚姻を結んだの、私もウィルが貴族になった時点で諦めていたけどね・・・・」
「そうなんだ・・・」
「けどね、ウィルはそんな私を側室にするって言ってくれたんだよ」
「まぁ、仕方ないけど一緒に暮らせるよね」
「そうなのよ私も喜んだわ。けどね、嫁いでくる貴族令嬢が私の事を一目見て勝てないと思ったらしく側室を断固拒否されたの」
「そりゃ、その容姿じゃ本妻はヤキモチ焼くよね」
「でっしょー!けどね酷かったのよ!」
その嫁は側室として挨拶したアーリーを一目見た瞬間、鬼の形相に豹変し嫉妬心丸出しで屋敷から追い出したのだった。まぁ、その令嬢は可愛らしいのだが嫉妬心が強すぎたのだ。
「それは酷いな、それで」
「それでね、追い出されてね、諦めて落ち込んで森をプラプラしてた時、私の前にいきなり精霊女王が現れたの、いきなりよ!貴方は次期精霊女王になりますって言われたのよ」
「そうなのいきなり?それでどうしたの?」
「ウィルの傍にいても幸せになれないし、逢瀬しても即噂が立つし、だからね心機一転その話は受けたよ」
「気持ち分かるわ~」
「けど、私の両親は喜んでくれたわ、その方が幸せになれるってね」
「へっ?」
「あのね容姿が原因で側室を拒否されたことが知れ渡ると、他の貴族がその”美貌”を目当てに押しかけて来たの。けどね両親はそんな見た目だけの扱いを受けるくらいなら女王になりなさいって言われたわ、その時の言葉を今でもハッキリと覚えている」
<アーリー、貴女は飽きられたら捨てられるだけよ、馬鹿な貴族の為に人生を費やすより有意義な人生を送りなさい>
「なんか凄い両親だね」
「貴族の汚いところも知っているからよ!」
アーリーが貴族を嫌う理由は両親の影響もあったが側室話が決定的だった。それは言わずと知れた美貌と身体目当てで、20も離れたとある中年貴族は貧乏な農家より俺の相手をすれば贅沢できるなどと言い放ち欲望丸出しで1発で嫌いになったのだ。
「それで、すぐに女王になったの?」
「うん早かったよ、私が承諾して一年も経たずに前女王は冥府に旅立ったわ、その後クーンを統治するのが大変でなかなか里帰りできなかったの・・それでね」
アーリーの表情が変わり寂しそうにぽつりと語り出した。それは数年後、デルタリアに戻ったアーリーは家に誰もいない事を不審に思いウィルに連絡を取ると数週間前に輸送シャトルの事故で二人同時に亡くなったという悲報が知らされたのだ。
「それでね、最後にウィルに会ってお話をして約束したのよ、この森を守っている間は貴方の家の繁栄は続くって」
「ええ、どうやって?」
「あー、精霊に頼んだのよ、この森好きに使って良いから管理してって」
「なるほど、だからこの森は凶暴な魔獣が発生しないんだ、それでウィルは?」
「そうしたらね・・・彼は最後に泣きながら謝ってこう言われたの。<ごめんアーリー、君の事を本気で愛していた、けど幸せに出来なくてごめん>だから私は、”何時かあなたの子孫が私と結ばれるといいね”って答えたわ」
「泣ける話だね~」
「こら、貴方がその子孫でしょ!」
「そうですけどー(棒」
「ふふ、ウィルにそっくりね性格も!」
「けど、何で今まで探さなかったの?」
「うん、それはね、最初の100年位は簡単にクーンの宇宙船で入れたの、けど防衛技術が進んで入り難くなったの」
「それから、デルタリアがクーンを見つけるまで我慢したと」
「そうね、たまに魔法陣使ってヒントは与えに来ていたけどね、頻繁には無理なんだよね」
その後、アーリーは数十年単位で魔法陣を使いクーンと行き来していたらしいが、ウィルの子孫とは中々タイミングが合わず、頻繁に行き来したくてもエネルギーを貯めるのに苦労していたと話した。
「もしかして僕がクーンに来たのは偶然だったの?」
「ええそうよ、私は国交樹立した後に子孫を探しに行くつもりだったよの、けど初めて見た時はびっくりして動揺したよ」
「時を超えて引き合う仲か・・」
「素敵だね!」
「アーリー女王様にその様な辛い過去があったなんて・・・」
両親は壮絶な彼女の生き様を聞き目が潤んでいた。そう、アーリーに関する情報は一切無く、初めてウィルとの間柄を知ったからだ。
「あっ、全然気にしていませんから。今はアーネストと一緒に過ごせればそれだけで幸せです」
「わかりました。アーネストの事よろしくお願いします」
「はい、任されました!」
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