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マーベリック狼狽える・・。

おバカさんは追い込まれます。

マーベリックはわざと大声で逮捕しろと騒ぎ、おまけに下級貴族は俺に従えと言い放ち、お話にならないので親父のテディに話を振った。


「テディー侯爵様、逮捕状を取り下げた方が良いと思いますが、どうしますか?」


「マーベリックが刺したと言っているが、アーネスト君、君は目撃したのか」


「ええ、マーベリック君が私を執拗に追いかけ、弾みでクレアさんを刺しました。出血多量が原因で一時意識がなくなりましたが、我が女王アーリーが精霊の力を使い蘇生させました」


「マーベリック、この発言を覆す証拠は持ち合わせているのか?」


「問題はそこじゃないだろ、病院でアーネストがクレアに何かしたんだ!」


「ふーん、クレア出てきてちょうだい!」


「はい、アーリー様!」


アーリーに呼ばれると扉が開きクレアが入って来た。それを見たマーベリックは狼狽え始めた・・。


「な!お前は病院で意識が無くなっている筈だぞ」


「私は元気ですよ。アーリー様に2度も助けてもらいました。何を動揺しているのですかマーベリックくん!」


「う、嘘だ、偽物に違いない」


クレアが逆に問い詰めるとマーベリックは更に狼狽え始めたが絶対に罪を認めようとしない、次に指示を出した医者は留置場の中だと言ってもまだシラを切り、アーリーが強制蘇生をしましょうかと脅すとビビリながら情けない声で父親のテディーに助けを乞う。


「オ、オヤジ助けてくよ」


「わかった、クレア嬢の件はお前が認めろアーリー女王が嘘をつくとは思えないし、その狼狽え方は自分が犯人だと言っているようだぞ」


「な、何でだよ」


テディーは冷静にやりとりを聞き、マーベリックが責任逃れの為に嘘を言い出した事と判断、しかしここで素直に認めるかと思いきやアーネストを睨む。


「アーリー女王、アーネスト男爵を王と認めることは出来ない」


テディーは下級貴族のアーネストがクーンの王になる事を拒否、だが婚姻の自由があるのではとアーリーが詰め寄るが頑として認めない様子だ。


「そうですか、貴方は爵位で人の価値が決まるというのですね」


「ああそうだ、男爵如きがクーンの王なんて認められるわけないだろ」


顔を真っ赤に喚くテディーを見て呆れたアーリーはアーノルドに声を掛けた。


「お待ち頂いて申し訳ありません、アーノルド陛下」


「いや、気になさるな。おもしろい余興だ」


「ありがたきお言葉」


アーノルドも何か思う事があるのだろう、少し難しい顔をして黙ってテディーとのやりとりを静観していた。


「テディー、私が”女王”ですので彼はクーン王国の”国王”ですわよデルタリアには庶民が貴族と婚姻を結ぶと爵位を貰える制度がございますわよね、それと同じですわ」


「・・・・・・」


理論的に法律を持ち出し言い返すアーリーに言い返せないのか、急に黙るテディーに対し更に畳み掛けた。


「テディー、貴方お覚悟はありますか?私は階級で人を差別することを大変嫌っております。そのような国と国交を結ぶ事に”強い不快感と不信感”を抱くには十分な理由です」


「そ、そこまでの問題なのか」


「ええ、350年待ち望んだ伴侶のアーネストに関しては一切の妥協は許しません!」


「ならば、アーネスト死ね!」


思いっきりドヤ顔で言い放つアーリーを見たテディーは、逃げ場がなくなりあきらめるかと思いきや、いきなり銃を取り出しアーネストに向けて発砲、パシュ!と軽い銃声が響き、赤い光線が胸に吸い込まれ黒い小さな穴が空いた。


「嗚呼・・アーネスト・・・」


撃たれ蹌踉めくアーネストを支え、その際に呟くように”心配しないで死なないから”と言われたクレアは驚愕の表情を浮かべ無言になった。


「・・・・・」


そしてアーネストはゆっくり体制を立て直すと、テディーに向かい文句を言い放つ。


「すげー痛いな!全く、いきなり撃つなよ侯爵様」


「えっ、撃たれて死なないの・・・不死なの」


流石に周りの貴族たちがどよめき、普通に立っているアーネストの姿を見て驚いている。


「し、死んで無い・・・生き返ったのか」


「ああ、俺は死なないよアーリーと契りをむすんだからね」


「何、だと」


「反則よ・・」


「テディー、どう責任を取るつもりでしょうか?私の大事な伴侶に傷をつけた事は万死に値します」


「ヒッ!化け物!」


「アーノルド陛下、沙汰は任せます」


「はは、面白い余興だったよ。テディー、君はやりすぎだ爵位格下げを申しつける”男爵”からやり直せ」


「えっ!そ、そんな・・・」


「君は傲慢だ、神聖な議場で発砲するとは反省しなさい」


その言葉を聞きガックリ肩を落とすテディー侯爵。


「マーベリック、君は取調べの上処分する、キツい沙汰があるから首を洗って待ってろ、守衛、不適格者を退場させなさい」


「嫌だ、あいつさえいなければ!や、やめろー」


テディー侯爵は黙って退出、マーベリックは諦めが悪く、取り押さえられると手錠を掛けられ強制的に連れていかれた。


「さて、邪魔者は消えたな」


「はい、ありがとうございますアーノルド陛下」


「うむ、アーネスト君の身分はこのままデルタリアの貴族で良いかな」


「ええ、勿論ですが名誉貴族で宜しいでしょうか」


「わかった、お詫びとしては何だが彼の爵位は伯爵にするとしよう」


アーノルドはデルタリア貴族として自由に活動を出来るように配慮したのだ。もちろん繋がりを切らないためでもあったが・・。


「有難うございます」


「それでは、移動しようか」


「わかりました」


国王が一瞥すると、皆一斉に立ち上がり胸に手を当てアーリーと陛下はゆっくり退出していく。この後個別会談を行う予定だ。その場で別れたアーネストはクレアと共に控え室に戻った後、明日行われる折衝の内容を確認しそのまま自宅に送る事になった。


ーー


議場を後にしたアーノルドはアーリーを王宮の特別応接室に招く。この部屋は許された一部の人しか入れない特別な部屋だ。上位貴族でも早々に入ることはできない。


「中々良いお部屋ですわね」


「ここは限られた者しか入れない、特別な部屋なのです」


部屋の内部は銘木をふんだんに使用し、調度品は一見シンプルに見えるが、目を見張るような精密で美しい加工を施され、見る人が見ればそれ相当の作品だと分かる。


「お招き有難うございますアーノルド陛下」


「アーリー女王、貴女はなかなかの剛胆な方ですね」


「いやだすわ陛下、関係のないクレアさんが巻き込まれて可哀想になっただけです。私の影響で彼女が1番辛い思いをしましたの」


「ははは、そうでしたか。それではクーンは友好的に接して貰えるのでしょうか?」


「もちろんですこの機会を随分待ちましたの、フォーレストに行く準備は出来ましたでしょうか?」


「はい、来月出発します」


「そうですか、それなら私がエルシー女王宛に一筆添えるとしましょう」


「おお、それはありがたい」


「私は内政に関与は出来ませんが、クーンの配下には変わりありません。スムーズに事が運ぶ事は私も望んでおります」


「わかりました。ありがとうございます」


「いえ、わたしの責務ですので気になさらないで下さい」


「一つお聞きしますがアーネスト君の住処はクーンですよね、少し気が早いですがデルタリアの繋がりとして側室を送らせて頂いても宜しいでしょうか?」


「強き繋がりを求めると?」


「はい」


アーリーはこの話にクレアを指名、”格の違い”で苦慮していることを話すとアーノルドは快諾してくれる。


「それは不憫ですな、アーリー女王が宜しければその様に進めましょう」


「有難うございます」


「疑問なのですが、貴女は貴族を嫌ていますか?」


「ええ、自分の実力が認められた上での上位でしたら不満はございませんが、マーべリックの様に権力を盾に達振る舞うような人は忌み嫌います」


「そうですか・・・複雑な成り立ちが会ってのデルタリアなのですが私も頭を痛めております」


デルタリアは共和国だ。数百年前小さな国を合併し30の国にまとめ、その元代表者が現在は上級貴族に置き換わり管理している。下級、中級貴族は主に政務を担当し、議会に参加出来るのはその中で能力の高いもの達なのだ。


「この様な愚策が続く様でしたら、デルタリアは衰退すると思います。お困りごとがあるのでしたらいつでも相談してください」


「辛辣ですな」


「ええ、能力の無い者が上に立てば悲惨な未来になると憂いています。歴史は繰り返しまたいつか争い事が必ず起きます」


「厳しいお言葉です」


「いいえ陛下、対等の関係で未来を構築しましょう」


アーノルドの心中を察したアーリーは厳しい表情に変わり真剣に話に耳を傾け、対等だからこそ言い難いことをはっきりと喋った。


「分かりました、女王の言葉を胸に刻み前に進みたいと思います」


「私に出来る事が有れば何なりと申しつけてください。私はデルタリアも愛する女王ですので」


「有りがたきお言葉」


アーノルドとの会談は短い時間だったがお互い良い関係性を築けると確信するのには十分だった。


ーー


アーネストに送られ自宅に戻ったクレアは先に戻った父親のライオネルに早速呼ばれた。


「おお、クレア、アーネスト君は本当にクーンの王様になったのか?」


「ええ、アーリー女王と”契り”を結んだと本人から聞きました」


「なっ!本当なのか?すまんクレア、君の見立ての方が正しかったようだ、アーネスト君を実績の無い若者と判断したばかりに」


アーネストの事を詳しく調べず拒否した父親は素直に頭を下げるのだった。


「お父様、落胆しないで下さいませ、わたしアーネスト様の側室になります!」


落胆した原因がわかっているクレアは間髪入れずにアーネストの側室に既に決まっている事を告げると、ライオネルはひっくり返るくらいびっくりしていた。


「な、なんと、クレアはそれで良いのか?」


「ええ、アーリー女王には到底敵いませんがアーネストと過ごせれば私は幸せです」


「そうか・・・ありがとうクレア、よし!女王様には私が直訴しよう」


「既にアーリー女王は了承済みですわよ!」


「なんと、それは一本取られたな」


「ですが他の貴族を抑える様、陛下にお願いして下さい」


「わかった」


何とも行動的なアーリーに引っ張られ、クレアも負けじと話を進めるのであった・・・。

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