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灰領-GLAY ZONE-  作者: 朧 影千夜
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五章 沫雪

五章 沫雪

 …ふあー


結構寝たな。そんな感じがする。


 スマホを手に取り、画面を見ると11:30を示していた。寝たのが2時くらいだから…、9時間30分ほど寝ていたのか。


まあ少し寝過ぎた気もするが、そんなことはどうでもいい。


 「…んあ」

ふと、隣のベッドから声が聴こえた。


どうやら竜胆が起きたようだ。


 竜胆はこっちを向いて「もう起きてたのか」といった。


「俺もついさっき起きたばっかだ」と俺は返した。


最近色々ありすぎたせいか、こんなしょうもない会話でも楽しく思える。


「さあ、これからどうする?」


あ、そういえば…、竜胆に話さなければいけないことがあった。


「竜胆、もしかしたら神崎が生きているかも知れないぞ」


竜胆はキョトンとした。


「神崎が生きてる?何言ってんだよ。あの日、目の前で神崎の死体を見て通報したのは俺らじゃないか。」


俺は昨日考えたことを話した。


「そ、そんなことが…、本当にあるのか?」


「まだわからない。だけど、今はその可能性に賭けるしかない。」


竜胆は深く頷いて、「確かにそうだな」と言った。


俺たちは寝室を出て、玄関へ向かった。


「もういくの?」


霞さんがリビングから出てきた。


「うん、神族を探しに行くよ。」


「そっか、だったらまずこの住所に向かいなさい」


霞さんは、竜胆に紙を渡した。そこには、純紺市 Nー946と書かれていた。ここが純紺市 Rー911だから、まあまあ近いな。


「ここには、かつての人間の王 凪悟の子孫がいるわ。彼らなら何か知っているかも知れないわ。」


「わかった!ありがとう母さん!」


「ええ、あと、うちの周りには警察がウロウロいるから飛んでいきなさいよ。」


「うん!じゃあ、行ってくるよ!」


「気をつけてね。」


霞さんは微笑んでそう言った。


竜胆は手を振って、俺はお辞儀をして、そして玄関の扉を開け、外へ出た。


竜胆の家は敷居に囲まれているから、竜化しても誰にも見られない。


「リュウよ。我にチカラヲ」


竜胆はそう唱え、竜化した。俺は竜に乗り、竜胆と俺は空高く飛び上がり、Nー946へ向かった。


空からは街を一望できる。純紺市は意外と小さい。下には無数もの車が通っているのが見える。その車よりも断然速いスピードで竜は飛んでいる。こう見ると、マジで竜って速いんだな。


Nー946にはすぐついた。しばらくかかると思っていたが竜が予想以上に速かった。


その家の外観は、綺麗な西洋風だった。少しだけ嫉妬した。その家の表札には[NAGI]と書いていた。


俺はインターホンを押した。家の中から、「ピンポーン」という音が鳴り響いているのが聞こえる。


「誰ですかー?」


とインターホンから若い人の声が聞こえた。


「神智と竜胆という者です。聞きたいことがあって伺いました。」


今、俺たちは脱獄囚として追われている身だからあえて名字だけ言い、名前は言わなかった。


「神智さんと竜胆さんですか。お待ちしておりました。今開けますねー。」


お待ちしておりました?俺たちのことを知っているのか?


「ガチャ」と音が鳴った後、ドアが開いた。


出てきたのは…20代くらいの茶髪の青年だった。どこかで見たような気がするけど、気の所為かな。


「こんにちは、神智さんと竜胆さん。僕は凪凛太郎。かつて人間の王、凪悟の子孫です。とりあえず中へ。」


と言われたので、言われた通りお邪魔した。

内装は、とても清潔で高貴だった。恐らく几帳面なんだろう。ごみの1つも見つからない。


「ここがリビングです。ダイニングテーブルに座って少し話しましょう」


と言われ、俺たちは座った。


凛太郎さんは「兄弟を呼んできます。少し待っていて下さい。」と言った。


少しして、凛太郎さんそっくりの青年が2人来た。


「3人とも、とてもそっくりですね。」


「はい、実は僕達は3つ子なんです。この右のが凪涼平、左のが凪涼太といいます。」


うーん、やっぱりどこかで会った気がするけど気の所為だろう。


凪涼平さんは左眼に眼帯をしていて、凪涼太さんは右眼に眼帯をしていた。


「その2人の眼帯は…どうしたんですか?」


「あー、これは[神眼]を使った代償ですよ」


神眼?神眼は神族の王の血筋しか使えないはずじゃ…


「まあ神眼と言っても大雑把な居場所しかわからない劣化版擬似神眼ですけどね。僕たち、凪悟の子孫は、先代の記憶を視ることができる&3秒先の未来が見える&擬似神眼を使えるという特殊能力を持っているんです。擬似神眼は一回使ったら片目が見えなくなりますけどね」


いや、凪家強すぎるだろ。なんだそれ。もう人間じゃねえよ。


…待て。今、大雑把な位置ならわかると言ったか?神崎も探せるということか?


「あの…、俺たち今探してる人がいるんですけど、そいつも探せますかね?」


「探している人?誰ですか?」


「神崎咲という人です。」


「神崎さん!?神崎さんなら居場所わかりますよ!」


…え!?なんでわかるんだ?


「実は…、僕は偶然その神崎さんが殺された事件を調べていまして…。その時、神崎さんが生きていることがわかったんです。先代の記憶を見た時に、少々気になることがありましてね…」


本当に神崎の居場所がわかるのか!?俺は竜胆と目を合わせた。


「よっしゃああああああああああああああああ」

「よっしゃああああああああああああああああ」


互いに喜び合った。


神崎が生きているという可能性が確実になった。それだけでもクソ嬉しいが、神崎の居場所がわかるという事実は、俺たちを果てなく喜ばせた。すぐにでもあいつに会いたい。


「すぐにでも神崎の居場所に向かいましょう!!!」


竜胆が言った。思うことは同じなようだ。


凛太郎さんは笑って言った。


「了解しました。車で移動しましょう!涼平と涼太はここで待っていてくれ」


「オッケー」


「りょうかーい」


ゆるい感じで2人は返した。なんかすげー仲良さそうだな。


俺たちは凪家を出て、凛太郎さんの車の後部座席に座った。凛太郎さんは運転席に座って、アクセルを踏んだ。


車で移動している途中、少し話をした。


「神崎は、どこにいるんですか?」


「神崎さんは純紺市 Aー777にいます。」


「Aー777?なんでそんなところに…」


「Aー777は、天境家です。」


天境…、どこかで聞いた名前だな。


「天境家といえば、夢幻輪廻を創った一家だな。」


竜胆が言った。そういえばそうだった。つい先日、霞さんから聞いたな。


「そうです。その一家に今匿われています。」


「なにか関係があるんですか?」


「まだ分かっていませんが、深い関係にあることは確かです。」


そうか…、まあたしかに天境家は神族の一家って言っていたしな。何かと縁があるのだろう。


…数十分後、A-777についた。


そこはアパートだった。神族が住んでいるというから、もっと屋敷みたいな家かと思っていた。


このアパートのどこの部屋だろうか。と思い、表札を見ながら歩いた。


まず、1番手前の部屋の表札を見た。


[AMAZAKAI]


そう書いていた。俺は、

「お、ここが天境家の部屋じゃないか?」

と、1番奥の部屋を見ている竜胆に言った。


竜胆は

「え?こっちにもAMAZAKAIって書いてるぞ」

と言った。


「二階の表札には全てAMAZAKAIと書いてあります。」

二階を見ていた凛太郎さんがそう言った。


 まさか…


俺は一階の全ての表札に目を通した。


…全ての部屋にAMAZAKAIと書いてあった。


「どうやら、このアパートの部屋は全て天境家のもののようですね。」


凛太郎さんは、階段を降りながらそう言った。


 一目見た時は、神族といえど貧乏なんだな…と心の中で蔑んだが、まさかこのアパートの部屋全てが天境家のものだとは…。


「神崎はどの部屋にいるんだろうなぁ」


竜胆がそう言ったとき、


「ガチャ」


と、竜胆の前のドアが開いた。


 そこから出てきたのは…小学生くらいの少女だった。


「ど、どなたでございましょうか?」


 その少女は緊張したように言った。凛太郎さんはその問いに返した。


「僕は凪という者です。」


 続けて俺と竜胆も挨拶した。


「俺は神智だ。」


「僕は竜胆といいます。」


 少女は少し驚いたような顔をした。


「神智様と竜胆様ですね。話は聞いております。お部屋へお入り下さい。そこの…凪様もどうぞ。」


話は聞いております?どういうことだ?まあとりあえず入るか。


「おじゃましまーす」と言って、俺達はその部屋に入った。


 玄関を抜けるとすぐにリビングがあった。そのリビングには、さっきの少女によく似た少女がいた。


「凛、例のお客様が来たよー」


さっきの少女がそう言った。このリビングにいる少女は凛ちゃんというのか。


「わかったわ、寧々。」


凛ちゃんはそう言った。この子は寧々ちゃんというのか。


「えっと、神智様と竜胆様ですね。私たちは天境凛と、天境寧々です。双子です。神崎様に会いたいのですよね?」


神崎!?確かに今そう言ったよな!?本当にいるのか???


「神崎は、本当にいるんですか!?」


「はい。現在、夢幻輪廻にて身を隠しております。」


夢幻輪廻に神崎が!?はやく夢幻輪廻に行かなければ。


「夢幻輪廻に今すぐ行くことはできますか!?」


「少々お待ち下さい。神智様と竜胆様だけ連れて行きます。凪さんには申し訳ありませんがここで待っていていただきます。」


 凛ちゃんと寧々ちゃんは互いに指を絡めあった。


「クウカンカイカ」

「クウカンカイカ」


2人がそう唱えた刹那、その場に稲妻が走った。


 気がつくと、そこは青く澄んだ純粋な別世界であった。


目の前に、見覚えのある女性が1人。


「神崎…?」


「久しぶり、白亜、那智。」


 その女性は微笑んでそう言った。


その女性は、神崎だった。


頬に、温かな水滴が伝った。


いつの間にか、俺は泣いていた。


   その涙は、雨のように降り注ぎ、


   雪のように溶け、熱だけ残して消えた。





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