3 悪役令嬢とお父様
主人公と接触することも無く無事に夏休みになった。家に帰ってきた私は久しぶりにお父様と夕食をとっている。
「それで、学校の方はどうだ? 何か困った事はないか?」
本当に聞きたいことは別にあるだろうに.....。
「困ったことは別にありませんわ。寮の部屋も広いですし、食事もとても美味しいです」
「それは良かった。ところでクララはどうだ?」
やっと本題に入った。お父様は私の双子の妹であるクララのことが聞きたくて仕方がないのだ。生まれたばかりの時に手放してしまったのを後悔している。
「とても楽しそうですよ。最近は魔法も覚えたようです」
「そうか魔法を.....血筋からいって魔力は多いだろうからな」
私が教えてるんですけどね。でも仲良くしてることはしばらく内緒だ。仲が良いとわかったら今まで以上にうるさくなって鬱陶しいからねお父様は。
「どうだろう。避暑地にクララも誘ってみないか?」
お父様は私の機嫌をうかがうように提案してくる。
別にいじめているわけではないのに何故かお父様はいつも私に逆らえない。
「え? クララをですか?」
驚いたように聞き返しているが本当は計画通り。避暑地にはクララも一緒に行ってもらう予定だ。
「子爵家にはもう許可をもらってるんだ。クララにも避暑地で過ごしてもらえたらと思ってね」
そりゃあ多額の借金を返済してくれた人には逆らえませんよね。
「そうねえ。私もクララに話したい事があるからいいわよ」
「本当か! では早速ドレスを注文しなくては...」
まさか私から賛成されると思っていなかったのか、喜色満面の笑顔になって、ドレスを注文しようと立ち上がる。
「お父様、子爵家の令嬢があまり豪華な衣装を着ていると目立ちますわ。彼女には私のお古を着てもらいます」
「お前の衣装だって豪華だろう」
「新品でなければそんなに目立ちませんわ」
避暑地といっても社交がないわけではない。それどころか私たち子供にとっては、この避暑地での人間関係がとても大事なのだ。夏の火遊びは異世界でもあるという事だ。
イベントも盛りだくさんなのよね~。悪役令嬢の私はあちらこちらで引っ張りだこになりそうだ。