作者は奴隷法について語る
「これでよし
さて、話を始めようか」
まずはエレインから話始めるのだった。
「私がここに来たのはこれがあったからだよ。
クーシュに言われたというのもあるのだけど、これが最も起きな理由だよ」
エレインは自らの袖を捲りあげると、そこにはアリーシャと同じ無骨なデザインのモノがあった。
これは、奴隷に使う隷属の首輪の下位装備である隷属の腕輪と言う。
所謂、人に連なる種族を奴隷にて支配下に置くというためのものだ。
だが、誰でも奴隷を持つことが出来る訳では無いとだけ追記しておこう。
「隷属の・・・腕輪ですか?」
「そう、私も奴隷なの」
エレインは奴隷であった。
奴隷でありながらその身分から開放された身なのだ。
「エレインはいま奴隷ではないよ。
仮奴隷と呼ばれる、奴隷のなりそこないのようなものだ」
「クーシュ、その言い方ひどいよ」
「うーん、そうかな?」
「それに、私はクーシュになら買われていいって言ってるのに」
「はいはい、冗談はその辺にしようね」
隷属の腕輪をつけたものは仮奴隷と言い、その者には主がいない。
故に奴隷のなりそこないと言われるのだ。
奴隷になる前に奴隷商が壊滅もしくは契約がなされなかったものがこれに属するものとなる。
「さて、アリーシャ。君は奴隷であるはずだよね
では、何故ここに来た?」
奴隷法第6条。奴隷は主に逆らうことは赦されない。
「これはアリーシャ自身の意思で行ったことなの?」
奴隷法13条。奴隷は主の命令なくしても冒険者になることが可能である。
「アリーシャ、君は自身を買う勇気がある?」
奴隷法2条。ランクB以上の冒険者が保証人になっているのであれば自身の買われた時点の料金の3倍の価格で自分を買い戻すことができる。
「アリーシャ、君の主は法に背いていないかい?」
奴隷法1条。全20条の法を持って主は奴隷を縛ってはならない。
「クーシュ、奴隷法なんてもの覚えているの?」
奴隷法とは奴隷を守るための制度であり、それを破ったものは深く罰せられることになっている。
「もちろんそうだよ
なにをするにしても知っておかなくては対処が出来ない」
それに、ゴルドルフ•レバートリーには個人的な用事もある。
叩く材料が増えるのはいいことだ。
「そうだけど・・・あまり詰め込みすぎないようにね」
エレインは心配そうにクーシュを見つめていた。
アリーシャは困ったような顔を浮かべて答えるのだった。
「ゴルドルフ様は法に背いているわけではないのですが・・・」
どこか申し訳なさそうな顔を浮かべた彼女は告げる。
「法を欺く可能性があります」
奴隷である彼女が主を貶めるような発言は許されることではない。
だが、なんの抵抗もなく発言できている。
首輪が反応しないことがそれを証明しているようだった。
「法を欺くか・・・
|またくだらないことをする気か愚か者が《・・・・・・・・・・・・・・・・・・》」
「クーシュ?」
「クーシュさん?」
「ごめんごめん、ちょっと考え事してただけだよ
それじゃエレイン、彼のことを調べてもらおうか」
「はいは~い、もちろん報酬は払ってよね」
「今度ラズの実でケーキを作るよ。た~んとあまいやつ」
「うん、楽しみにしてるね」
「さて、このくらいで今日のところは終わりにしようか」
部屋中に貼り付けてある紙をとり、結界を解除する。
「今日話したことはゴルドルフに話さないでもらえると助かるかな」
アリーシャの頭を撫で、苦笑いを浮かべる。
「でも、アリーシャが拷問まがいのことをされるのであれば、
そのときは今度こそ守ってみせる」
「な・・ななな・・な」
「ふぇ・・!?」
怒りからか顔を染めたエレイン、恥ずかしさからか顔を赤くするアリーシャ
2者2様の反応に部屋の外からの視線は釘付けとなったのだった。