作者は依頼を終わらせるのであった
不完全な感じで続きますがご了承願います。
「あの、クーシュさん」
おずおずと顔をあげるアリーシャは、15匹目の角兎と相対していた。
もちろん、クーシュが狩ったものも含めて15匹である。
「どうしたんだアリーシャ」
クーシュはアリーシャの後ろで筆を進めていた。
草むらからは次の討伐対象の角兎が角を出していた。
アリーシャは緊張のために額から汗を流す。
「失礼かとは思えますが、クーシュさんは何をされているのでしょうか?」
「この作業のことかい?
たんなるメモのようなものだと思ってくれるといい」
「なぜ、今そのようなことを?」
「今だからこそだよ
そんなことよりほら、あっちを見てごらん」
クーシュの指さした方を見ると、角兎が足に力を貯めていようだった。
角兎の特徴といえば嗅覚はさほど良くないのだが聴覚に優れていることで有名である。
だが、クーシュはそれ故にアリーシャに声を出させた。
「うん、これでいいだろうね。
“告げる。我文言に刮目せよ。
告げる。我文言に揺れ動け
之は弱者が強者を討つ物語である。”」
今書いていた紙がアリーシャの周りに舞う。
「観測せよ。我が同胞達よ。
之が弱者の戦い方だ。」
希少スキル:執筆者
散布され、対象者の周りに舞うことで効果を発揮する。
この効果は多種多様であり、多くの場合は対象を味方にした状態付与だ。
「さて、感想を聞かせてくれないか同胞諸君」
アリーシャは紙のことなど気にする様子もなかった。
これがあったからこの場に来れたのだと理解しているからだ。
「クーシュさんありがとうございます!!
うりゃぁぁ」
アリーシャの武器は短刀であるためにスピード重視に状態を付与させている。
この状態であれば角兎にたいしてもいい動きが期待出来るというものだ。
「やりましたよクーシュさん」
全身に返り血を浴び、片手には胸を1突きで殺された角兎を持っていた。
「可愛い顔が台無しだよアリーシャ。清浄」
「あ、ありがとうございましゅ・・・はぅ…」
全身の血は綺麗になったのだが、噛んだことで顔を真っ赤に染めたアリーシャだった。
「さて、そろそろ依頼も終わらせて帰ることにしようか。
水弾」
魔法で5mmほどの大きさの水の弾を4発作り上げる。
そしてそれを草むらに放つとクーシュは歩いていく。
アリーシャはきょとんとした顔でただ見ていた。
「じゃ、行こうか」
クーシュが戻るとその手には胸のあたりに空洞の出来た角兎を抱えていた。
その後、カバンの中に角兎を入れていき、出口の方に歩いていった
ーー・ーー・ーー・ーー
それはアリーシャが起き上がってからのことだ。
「まずアリーシャ、何が足りなかったかわかるかな?」
ゴブリンに足がすくみ、何も出来ずに嬲られていた。
頭を働かせてみるのだが、いい考えが浮かび上がらないようだった。
「うん、わからないみたいだね。
それでいい」
「へ・・・?」
「初心者にあることだ。恥ずべきことではないよ」
そう、受付をしているとよくあることなのだが、初心者ほど情報を調べようとしない。
それどころか、相手との力量の差が測れないということもあるのだ。
それ故に、受付と共に依頼を受ける必要があるのだ。
「クーシュさん、私は何が足りなかったのでしょう?」
「簡単なことだよ」
自身のスキル、相手の特徴、自身のリーチそして、味方の能力が情報として必要だったのだが、それをひとつとしてわかったいたと言えない様子でありながらゴブリンを相手にしたのだった。
「たとえゴブリン、戦闘訓練なしでも倒すことが出来ると言っても何もわからなければこちらがやられるのは当たり前だ」
「はい・・・」
「さて、そういうわけでもあることだしお互いのことを知っておくに越したことはないだろう。
もしよかったらステータスを開示してくれないか?」
苦笑いを浮かべ、紙と机を用意するのだった。