作者は奴隷と出会った
「あの~、角兎依頼担当クーシュさんでしょうか?」
声が聞こえ、やっとで依頼が進められると顔を上げた先にはローブを深く被った、見るからに初心者だと言える少女だった。
「Cランク任務の角兎なら僕が担当だね、君がアリーシャさんかな?」
ちらりと視界の端に映る名前を口にした。
依頼を受けた際、ギルドカードを通じてパーティ内のメンバーの名前が視界の端に映るようになるのだ。
これは見えないように切り替えることもできる。
「は、はい。Eランクのアリーシャと申します」
ぺこりと頭を下げるアリーシャという少女。
クーシュは時間を確認すると依頼受付開始から既に1時間経過していた。
定時までに終わらせるにはそろそろ出かけないといけない時間だった。
「それじゃアリーシャ、時間もないことだし行くとしようか」
そう言うとクーシュは机に広がる紙をカバンに詰め込み、集会場から出ていくのだった。
依頼を締切ると、受けたパーティメンバーはクーシュとアリーシャの2人だけだった。
ーー・ーー・ーー・ーー
「まずアリーシャ、今回の依頼が何故Cランクなのか理解しているかい?」
アリーシャはクーシュが思った通り、冒険者初心者だった。
深く被っていたフードを取らせると可愛らしい幼げな顔つきに栗色の髪、頭の上にぴょこんと立つ狐耳。
首元に目をやると無骨なデザインの首輪があることから孤人種の奴隷なのだろうと読み取ることが出来た。
アリーシャは聞かれたことに対してふるふると首を横に振っていた。
「それじゃアリーシャ、僕が今日の講師になってあげよう。
まずランクが何故上がるのかからだ。」
本来、角兎はDランクの魔物である。
では何故依頼ではCランクなのだろうか。それは・・・。
「それは、ここに問題があるからなんだよ。よく覚えておくといい」
アリーシャを連れてきたこの場所は精霊樹の森と呼ばれる迷宮である。
この迷宮の第3階層で角兎が出現するのだ。
「ほら、あそこにゴブリンがいるのがわかるだろ?」
RPG等で醜い魔物として有名なゴブリンがそこにはいた。
手には平均男性の手ほどの太さの木の棒を持ち、獲物を探してさまよっているみたいだ
「まずはあれを倒して見せてくれ」
ビクッと体を震わせたが、覚悟を決めたのか短刀を片手にゴブリンの側まで近づいていく。
息を殺し、ゴブリンに気づかれまいとしているのだが、現実は無情だった。
「グギャギャ!」
アリーシャの潜む場所に鳴き声をあげる様子から、ゴブリンはアリーシャに気づいたみたいだった。
だが、今手を出しては成長の妨げになってしまうと考え、魔法をいつでも撃てるように待機する。
そしてアリーシャはと言うと、突然声をあげられたことによって足がすくみ、動くことが出来ないでいた。
そのままゴブリンは木の棒を振り上げ、アリーシャを殴りつけるのだった。
たいした力が無いことが救いなのだが、足がすくんでしまって動くことが出来ないアリーシャはただ殴られ続けるのだった。
もう限界だろうとクーシュは考え、待機していた魔法を撃つのだった。
「風刃抜刀」
カバンの中から投げたそれはカッターナイフだった。
それに収束する魔法は風属性だ。
「グギャ!」
それはゴブリンの首を容易く裂き纏う風邪によって身体中を切り刻んだ。
ここにいとも容易くゴブリンの命は散ったのだった。
カッターナイフは側の木に根元まで突き刺さっていた。
「さて、どう教育しようか」
目の前の蹲る少女に回復の魔術をかけ、少女の教育方法に頭を働かせるクーシュであったのだ。
追記します。
クーシュが今回使用した魔術の回復はこの世界では誰でも使用できるものであり、個人差はありますが使えないということはほとんどありません。
ですが、例外というものはあります。
それは・・・。
おっと、誰か来たようですのでこれくらいで失礼しましょう。
これからも不定期ですがよろしくお願いします。