第1話
放課後は好きだ
特に、なんとも言えない開放感と、少しだけの寂しさが入り混じった校舎を一人で歩く時間が。
「今日はいつもと違うルートで歩いてみるか」
なんてことを考えながら俺は歩き始めた
魔法史の教諭いわく、魔法が一般的になっても形を残したものもあるらしい
その例がスポーツだ
それほど昔の人の生活に浸透していたのだろうか
多くの人は魔法を使うよりも、スポーツをしている時の方が生き生きとしている気がする
……まあどうでもいいが
そんなこんなで、第2校舎にやってきた
ここには実験室などが集まっており、頻繁に人が出入りすることはないようだ
ふと前をみると少し奥に白衣の男性が歩いている
そして物理実験室へと入っていった
…彼は魔法機械の教諭だ、物理学などという古代の学問に関わりはないはず
「行ってみるか…」
せっかくなので追いかけてみることにした
いまどき珍しいドアノブのついたドアだ
「きぃー…」 と、木製のドアを開ける音が響く
特別広いわけでもない、綺麗な教室だ
ただ、教諭の姿はない
奥にもう一つドアがある、同じくドアノブのついたタイプだ
ドアノブに手をかけ、まわ…らない
「ガチャ、ガチャッ」
数回繰り返すが、開きそうにない
「コンコン」
…ノックしてみるが、返事はない
彼はどこへ行ったのだろうか
ふいにとある噂が頭をよぎる
ーー物理実験室で人が消えるーー
「まさかね…帰るか」
そう呟き、振り返る
「ここで何をしているんだい?」
突然話しかけられ、心臓が止まりそうになる
見ると、俺が入ってきた入り口に魔法機械の教諭が立っている
「すいません、迷ってしまって」
なぜか、嘘をつくべきだと思った
色々聞きたいことはあったが、今はここにいるべきではないと直感が告げていた
彼の青い目が俺を見つめる
「そうか…ここにはもう来ない方がいい、埃っぽいし、危ないからね…」
そう言って彼が近づき、
俺の肩に手をおいたーーー
と思ったら、俺は保険室のベッドに横たわっていた…
「目が覚めた?」
女性が俺に声をかける、彼女はいわゆる保健室の先生だ
「魔法機械の先生はどこへ?」
俺が尋ねる
「もう帰ったんじゃないかな、君をつれてきた後すぐにどこかへ行かれたから」
間を空けずに返された
「そうですか…ありがとうございました」
「いいえ、お大事に」
そして俺は帰路についた
いろいろと疑問は残ったが、なによりも彼の
ーー危ないからねーー
という言葉が頭の中をぐるぐると回っていた
続く…