マリリンさん
「健康ランド」というのだろうか。
いくつもの浴場とサウナ、仮眠室、宴会場、カラオケ、そういったものが入っているレジャー施設だ。
これが、一番初めにした仕事、アルバイトである。
私の家は裕福か裕福じゃなかったのか分からないが
(おそらく普通?)
中学を卒業したら、自分の遊び代は自分で稼ぎなさい、という家だった。
私は早速、この健康施設の「浴場担当」のバイトをはじめた。
やる事は多く、お客さんにアロハ
(健康ランドのお約束・・・)を渡したり、だだっ広い浴場の清掃をしたり、サウナ室のマットを変えたり、鏡を磨いたり、シャンプーリンスの補充をしたり、排水溝の掃除をしたり。
いま思えばなぜ最初からこんなハードなアルバイトを選んだのか分からない。
華咲く私立女子高生が、デッキタワシと浴槽洗剤を握って汗まみれ。
ついでにサウナ室の掃除のおかげで他人の汗まみれ。
それでもけっこう楽しかったし、なによりも、
オバサン耐性はここでつけた。
(働いている人もお客さんもおばさんが多かったので)
そんな職場の中で、今でも鮮明に覚えている人がいる。
こういった職場の特性として夜の仕事をしているお客さんが多く、その中の常連さんの一人「マリリンさん」だ。
なぜ鮮明に覚えているかというとフロントの帳簿に絶対に「マリリン」、としか書かない。
そのうえ、どう見ても60は過ぎた方なのに常に綺麗な「ブロンドのロングヘアー」
一緒に働いていたオバサン網によると、とあるスナックのママさんだそうで。
私がマリリンさんを忘れないのはそれだけではなくて、そのどう見ても(失礼ながら)おばあさんであるのに「マリリン」「ブロンドのロングヘアー」に並んで、
乳首がまっピンク
だったことだ。
日本人的なベージュ、薄ピンクではなく、
例えようもないまっピンク...。
外国の血が入っているようにも見えなかったし肌の色だって普通の黄色人種的な色だ。
もう一つ失礼ついでにいうならば胸だって年相応にしぼんできていた。
浴場の仕事をしていたのだから人の裸など見慣れていた私でも、あればかりはかなりの衝撃を受けた。
何年経った今でも、いまだにどうやってあの色を保っていたのか。
自然な色であったのか、なにかしらの美容整形でもしていたのか。
謎は謎のままである。
ブロンドの髪にピンクの乳首のマリリンさん、
今もあのままなのだろうか...。